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脱出記 の商品レビュー

4.2

31件のお客様レビュー

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2024/10/10

ポーランド兵としてソ連の捕虜となり、熾烈な拷問→シベリア輸送→強制収容所、に辿り着くまでで、既にその凄まじさに圧倒される。脱出以降は、これがフィクションなら冒険記として没頭するところだが、ノンフィクションなのが恐ろしいところ。飲まず食わずで歩き続ける過酷さや、出会ったチベット人た...

ポーランド兵としてソ連の捕虜となり、熾烈な拷問→シベリア輸送→強制収容所、に辿り着くまでで、既にその凄まじさに圧倒される。脱出以降は、これがフィクションなら冒険記として没頭するところだが、ノンフィクションなのが恐ろしいところ。飲まず食わずで歩き続ける過酷さや、出会ったチベット人たちの懐の深さ、信じ合える仲間、初志貫徹の強い意志、、、いろんなことを感じながら、没頭して読んだ。そして8人それぞれが、自分にできることを真摯にやり続けた日々の姿に、感銘を受けた。冬のシベリア、ゴビ砂漠、ヒマラヤ越え、、、人間の生きる力の凄まじさ。

Posted byブクログ

2024/08/31
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シベリアの強制収容所から脱走する7人の男たちの1年6500kmにわたる脱出劇。主人公は、ヨーロッパの中で大国に翻弄され続けた歴史を持つポーランド陸軍騎兵隊中尉ラウイッツ。ソ連からスパイ容疑で逮捕され過酷な拷問にも無実を訴え続け耐えたが結局25年の労働収容所宣告を受ける。まず語られるのは、極寒期でのモスクワからシベリア鉄道を使った移動の悲惨さ、さらにバイカル湖から収容所までの死の行進、そこまでに体力のない人間や年配者等が脱落、収容所まで無事辿り着くも体調を崩しそのまま亡くなるケースもありこの行程で4千人の捕虜の約2割が亡くなっている。 驚きなのは、これだけ絶望的な状況下で精神的肉体的苦痛を受けてもなお、自由を得ようと奮起する主人公のガッツ。そして同じ様に脱走を志願する者を6人選び計画は進む。 結果的にこの人選は大成功で、和を乱したり愚痴ばかり言う者は一人もおらず、各自が自分にできる事を見つけてチームに貢献するというチームワークが脱走成功への鍵となったのは間違い無い。 途中、ひょんなことからポーランド人少女も合流して8名となる。若い彼女でさえチームの足手まといにならない様に明るく健気に頑張る姿がむさ苦しいチームにとっても一服の清涼剤となる。 そして、最終的には4人がインドまで辿り着き保護される。 この小説を読みながら感じたこと、1つは遺伝子レベルでのロシア人の残虐性と非道さである。(本書でのモンゴル人やチベット人の無償のおもてなしとの対照で余計際立つ)3年前のウクライナ侵攻もそうだが、太平洋戦争で降伏した日本にも中立条約を一方的に破棄し突然侵攻しておんな子供に乱暴狼藉、そして多くの日本人をシベリア抑留という戦争犯罪を犯しながらも国連では常任理事国の地位にいる理不尽さ。なぜか日本だけが未だに(主に火付け役は日本のマスコミだが)過去の戦争の非難を受け続けている。 そしてもう1つは、この小説の信憑性について。 ノンフィクションと謳いながら脱走した仲間の写真が一枚もない点が気になった。1942年に生還し、本書は口述筆記で1956年に出版された。その後、亡くなった仲間がいたとしても、筆者自ら彼らを探しコンタクトをとろうとした形跡がないこと、反対に仲間からも出版を聞きつけて連絡をとってこなかったという事実(あとがきで筆者は語っている)は不自然ではないか。生死を分かち合った戦友が、どうして?筆者は2004年88歳でなくなっているので真相は藪の中ですが、単なる私の杞憂であってほしいことを願います。 さて、解説は椎名誠氏ですが、事実誤認があるので指摘しておきます。 「本書の8人は灼熱の砂漠の次にヒマラヤ山中に入っていく」(P448) 実はこの前のゴビ砂漠で少女は亡くなっているのでヒマラヤ行きは7人が正解です。 さらに、筆者の本文でも間違いが。 「シベリアをあとにしてから初めて、この洞窟で、私たちは他の人の所持品に手を付けた」(P406) 豚小屋から豚を1匹盗んています。(P236) 既に何刷も重ねられている文庫本なのに、どうなっているのだろう。

Posted byブクログ

2024/07/25

第二次大戦中に言われなき罪でシベリアの収容所送りになった囚人たちの大脱走劇。囚人なのでろくな装備も持たずに冬のシベリアを南下し、灼熱のゴビ砂漠、ヒマラヤを縦断してインドまで。全体主義ソ連の恐ろしさと、”自由”の大切さが分かります。

Posted byブクログ

2023/12/24
  • ネタバレ

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「面白い」と言ってしまっていいのだろうか。 書評を書くにあたり、そう自問せざるを得なかった。 第二次世界大戦中、ソ連からスパイ疑惑をかけられて当局に拘束され、尋問と拷問の末に有罪が確定、シベリアの強制労働書送りにされた著者。400ページ超の本書のうち、最初の100ページちょっとはこの拘束から尋問、モスクワから極東ヤクーツクまでの移送の様子に費やされる。強制収容所に辿り着くまでのここまでですら、あまりにも苛烈な環境とソ連兵の仕打ちに怖気が止まらない。 この本のメインテーマである「脱出」は、まだ始まってもいない。実際に脱出するまでにはさらに80ページ以上の積み重ねがあり、余談のない準備があり、周到な計画がある。収容所のソ連人も一様ではなく、ごく一部ながら著者に味方してくれる人もいて、地獄に仏とはまさにこのこと、と読みながら感動させられる。 そしていよいよ脱出。著者は収容所内で綿密に計画を立てて準備を進め、同志を募って脱出する。ここからがこの本の真骨頂。サブタイトル通り、著者と仲間たちは「シベリアからインドまで」、文字通りに歩いて逃げ続けるのである。冬のシベリアの過酷さは言わずもがな、食事や水にも常に事欠き、衣類や靴も自作しながら進み続け、極めつけはゴビ砂漠の縦断である。 北欧や東欧の出身の著者と同志たちにとって、ただでさえ砂漠の暑さは体験したことのない地獄。しかも、著者たちは水もほとんど携行せず、砂漠用の装備や衣類もないままで突入するのである。著者も書いていた気がするが、「砂漠のことを知っていたら絶対にやらない」ようなことを敢行しており、生還できたからこそ良かったものの、一歩間違えれば即全滅という、まさに間一髪のところでたまたま、命を拾うことができたというだけなのだ、ということが分かる。 著者と同志たちには、途中で同じようにソ連から逃げてきたある人物が加わる。その人物を含めて一行は7人になるのだが、その全員が無事にインドまで辿り着けたわけではない。また、インドまで逃げることができたメンバーがその後、数十年にわたって友情を育み続けた、というわけでもない。 このあたりがまさに「現実世界ならでは」であり、作り話ではない真実なのだな、というリアリティを実感させられる。 冒頭に書いた通り、「面白い」という表現は適切ではないかもしれないが、読んでよかったと思える本のうちの一冊。そして、ロシア(ソビエト)のやっていることは第二次世界大戦のころから2023年の今に至るまで、本質的にはほぼ変わっていないんだな、ということも分かり、こういう性質の国がキャスティングボードの一角を担っている以上、国連が機能不全になるのも不思議ではない、と暗澹たる気持ちにもさせられる。

Posted byブクログ

2023/02/14

枕元にはいつも人形が四体座り込んでいる。 リラックマとがまくん&かえるくん、そして、イエティ。 ずいぶん前からいるのでさして気にも留めていなかったのに、昨晩、床に入って本書後半部に取り掛かるまえに俄かにイエティが気にかかった。白い体毛に覆われ、三頭身ほどにデフォルメされた青顔の巨...

枕元にはいつも人形が四体座り込んでいる。 リラックマとがまくん&かえるくん、そして、イエティ。 ずいぶん前からいるのでさして気にも留めていなかったのに、昨晩、床に入って本書後半部に取り掛かるまえに俄かにイエティが気にかかった。白い体毛に覆われ、三頭身ほどにデフォルメされた青顔の巨人。どこを見ているとも掴みがたい彼の目をしばし憑かれたように注視したのち、栞を開いた。読み進めると自ずと分かるが、ラウイッツの「逃走」の途上にはイエティ二人組が登場する。未確認生物として人心を惹きつけてやまない巨人が、とくに何もしてこないことでむしろ奇妙にリアリティを帯びて、物語に屹立している。ふと枕元の人形を見やると、それが口元に浮かべている謎めいた表情に神秘を感じ、しばし私の鼓動が速まった。 このように本書『脱出記』はイエティの描写を含んだことでトンデモなフィクションと見做される向きもあるようだが、伝説を調査しにきた英国記者ダウニングによってラウイッツの壮絶な体験の全体像が引き出され、広く世に伝えられたことを考えれば、そう論難するには当たらない気がする。 脱獄から幾多の困難を経て、インドに辿り着くまでのどのシーンについてもラウイッツの記憶が鮮明かつ詳細なのには舌を巻いた。脱走経路、交わした会話、食べたもの、手にしたもの、寄った宿や出会った人の様子、天候、病変、身振り、ジョーク。 「逃走」の記録というには描写があまりにも豊饒だ。どことなく懐かしさを覚えながらしばらく読み進めたのち、そうかゴールデンカムイ、と閃いた。闇鍋を謳ったあの大長編マンガに匹敵する満足感が終始みなぎっていた。どの場面も脱獄者たちの存亡にとって切実なものだから、発せられるジョークもそこここにある発見も、単体で独立してはいない。人格や感覚が危険なほど研ぎ澄まされていた彼らの五感には、周囲の膨大な情報量がそのまま雪崩れ込み、貪欲に消化され、記憶されたのだろう。人類学のフィールドノートとして捉えても傑出している。 ページを読み進めながら、無意識のうちに教訓を引き出そうとしている自分に気づく。が、読後のいま本書の記述を振り返っても、そう容易く単純化して明晰な言語に落とし込むことを容認してもらえないように思われる。シベリアからインドへ。その道行きに呆気に取られ、唖然とすることだけが、唯一開けた道なのかも。 それでも、諸言語や身体言語、幾世代も受け継がれてきた知恵や技法を知っておくと、のちのち身を助けるとは言えそうである。「無駄なことでも触れよう」と一段下げて扱うのではなく、敬意を込めて謙虚に。 本書は、偶然ブクログで見かけてからずっと読みたかったが果たせずにいた。 「脱出記」よりも副題の「シベリアからインドまで歩いた男たち」に目を奪われ、トンデモなコメディ要素を嗅ぎ取って楽しみにしていた。「いやー、ビッグな男になりたくてシベリアからちょっくらインドまで歩くことにしたんだ!」みたいな、トーマス・トウェイツっぽい砕けた筆致なのかと考えていたから、筆者ラウイッツの祖国ポーランドの経た受難を厳粛に語る「はじめに」を読みはじめて数分、大いに裏切られて仰天した。感情のギャップはすぐには埋まらなかったが、目次に続くページ見開きに大写しされたユーラシア大陸地図と、脱獄者の辿った道筋のスケールとにたいする驚嘆を原動力に読了できた。 本書の残した巨大な感慨は、黙して語らぬイエティのごとく、私の胸中に永く屹立することだろう。

Posted byブクログ

2022/05/17
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ソ連に捕まったポーランド人の脱出記。すさまじい体験だ。 著者は2004年に亡くなったそうだ。ベルリンの壁が崩れて、共産圏が崩壊するのを見ることができてよかったなぁと思う。 後書きを読んで感心。この体験を語る講演会の収益はポーランドの孤児のために使っているそうだ。立派な人だなぁ。

Posted byブクログ

2021/10/27
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ドイツ人とロシア人、捕まるとしたら、どちらがよかったか? キャンプ設営の仕事に関して、たまに激しい言い合いが起きると、たいてい巨漢のコレメノスが始末をつけた。コレメノスは、決して誰とも争わず、すっと歩き去っていって、なんなりと必要なことをすませてきた。コレメノスは、常に自分の割り当て以上の仕事をこなしていた。疲れ知らずで、寛大で、どこからどこまで見事な紳士だった。 解説(椎名誠より) 漂流記と脱出記はおもしろい。どちらも事実であるし(たまにフィクションもあるがロビンソンクルーソーと十五少年漂流記以外はたいてい面白くない)生還している人が書いているケースが多いので、途中でハラハラしても最後は「よかったよかった」のカタルシスがある。 たとえば江戸時代の頃に日本人が外国に漂流して生還すると、鎖国の時代に外国を見てしまったということで過酷な取り調べがあったり幽閉されたりと、命を得ても結果的に不幸な顛末になる、ということが多かったからである。 その点、脱出記ものはそれが欠ける、ということはすなわち自由が約束されている、ということである。すさまじい脱出記を体験していても、その立場上、誰にも語れない、ということもたくさんあるような気がする。つまり、そういう体験記を書いてしまうと命が危ない、というようなケースである。

Posted byブクログ

2020/12/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

すごい話だった。 クマが森林で木を傾け、弦楽器のように音楽を奏でるところを目撃した箇所が印象にのこった。

Posted byブクログ

2020/08/30

もう尋常ではない厳しい旅だったのかとは思うんだけど、ちょっとやりすぎ感というか、マジで?ってなってくる面もある。でも深く考えずに楽しむ手もある。 まずシベリアからゴビ砂漠、そしてヒマラヤ越え。もう何がなんだか分からないよ。ヒマラヤとか、フル装備でも凍傷で腕を失ったとか、そんな話を...

もう尋常ではない厳しい旅だったのかとは思うんだけど、ちょっとやりすぎ感というか、マジで?ってなってくる面もある。でも深く考えずに楽しむ手もある。 まずシベリアからゴビ砂漠、そしてヒマラヤ越え。もう何がなんだか分からないよ。ヒマラヤとか、フル装備でも凍傷で腕を失ったとか、そんな話を読んだこともあるけど、ほぼ道具無し、食料もほとんどなく、ページ数もほとんど割かれず、そしてイエティにまで遭遇して、グイグイ突き進む。 とまぁ何だか疑ってる感が出てしまった。 でも蛇を狩ったり、何しろ羊やらなんやら飯を食うことは何より大事っちゅうことは分かった。その生活感あふれる勢い故に、やっぱマジなんかなーって感じやね。 と、この飽食の時代に生きる日本人が言ってみる。

Posted byブクログ

2016/03/11

本「脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち」驚愕の実話。第二次大戦中シベリアでの捕虜の決死の逃亡劇。 http://youyou-bookmovie.blog.so-net.ne.jp/2016-03-10

Posted byブクログ