そろそろ旅に の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
のちに十返舎一九の名で野次喜多が主役の「東海道中膝栗毛」を著する、駿府の同心の長男で見習い同心身分だった重田与七郎の若き日々半生を描く松井今朝子さんのフィクション作品、駿府を幼馴染の家来・太吉と大坂東町奉行の小田切土佐守頼り旅に出、奉行の部下・武士から娘を助け知り合った大阪の材木問屋の養子~浄瑠璃作家…流転の半生。序盤の大坂が舞台となる場面懐かしい地名がでてきて、楽しく読めた。
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面白かったが妙に長く感じた。読んでも読んでも終わらない感じ。この方の作品でそう感じたのは初めて。太吉の伏線には途中まで全く気付かなかった…。
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面白く読みました。主人公は十返舎一九。彼が、あれこれあれこれ経験した後、「東海道中膝栗毛」を書くまで、という筋立てになっていて、彼自身の人となりも生き生きと描かれていたのだけど、化政文化の文人たちが一九と関わる中で次々と生身の姿として描写されているのがよかったです。一九は元武士だ...
面白く読みました。主人公は十返舎一九。彼が、あれこれあれこれ経験した後、「東海道中膝栗毛」を書くまで、という筋立てになっていて、彼自身の人となりも生き生きと描かれていたのだけど、化政文化の文人たちが一九と関わる中で次々と生身の姿として描写されているのがよかったです。一九は元武士だというのは知っていたつもりですが、生家のある駿河から江戸、そして大阪、また江戸と住まいを転々とした、というあたりがとても面白かった。(だから文人たちも大阪、江戸と両方出てくるし)一九の、心がここに定まらない感じ、いつも旅の途中であるような心持ちがなるほどねぇ〜〜と思わせられたのは、さすが松井さん、というところなんでしょう。そんな性格から、戯作作者として大成するまでの過程もうんうん、そうだったのかもね、と。ただ・・・ネタばれです。最初から出てきていた、従者の太吉が実は彼の妄想だった、という仕掛けは、もうちょっと面白くできたのでは・・?? 途中から太吉が実在してないのは誰にでもわかるようになっていたのに、最後に種明かしみたいな書きぶりではちょっと興がそがれた気がしました。二つに揺れる気持ちを持つ時に出てきてアドバイスをしてくれる太吉、という扱いはよかったと思うし、また、なぜその妄想に捕らわれていたか、という彼の罪の意識もよく出来ていたと思うので、もうちょっと作り込んでほしかったかなぁ、と。
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何かから逃げるように 何かを追い求めるように 旅に出る 与七郎こと十返舎一九 太吉という友を犠牲にして 生き延びた苦悩からなのか かつての友 太吉は 今も自分の中に存在する それは、 かつての友でもあり もうひとりの自分の 心からの声でもある 友に語りかけ 自分の気持ちを...
何かから逃げるように 何かを追い求めるように 旅に出る 与七郎こと十返舎一九 太吉という友を犠牲にして 生き延びた苦悩からなのか かつての友 太吉は 今も自分の中に存在する それは、 かつての友でもあり もうひとりの自分の 心からの声でもある 友に語りかけ 自分の気持ちを探り 決断する そしてまた旅立つ 好奇心のおもくくままに、 心のこえのまま 時期が来れば また旅にでる そして その旅で 「東海道中膝栗毛」を書き上げる そんな、十返舎一九の半生を知ることが出来た
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有吉佐和子の『悪女について』で用いられたような、一人の人物を関係者の証言を用いて浮かび上がらせていく、という手法でもって、江戸時代の大遊郭、吉原の花魁を描いた『吉原手引草』(昨年の直木賞受賞作ですな)も面白かったけど、今作『そろそろ旅に』はそれ以上に痛快な歴史小説でした。 時は...
有吉佐和子の『悪女について』で用いられたような、一人の人物を関係者の証言を用いて浮かび上がらせていく、という手法でもって、江戸時代の大遊郭、吉原の花魁を描いた『吉原手引草』(昨年の直木賞受賞作ですな)も面白かったけど、今作『そろそろ旅に』はそれ以上に痛快な歴史小説でした。 時は同じく江戸時代。主人公は、武士の子として生まれながら商家へ婿入りし、しかしろくすっぽ働かず、ばかりか、ひょいと(肉体的にも精神的にも)旅に出てしまう重田与七郎、後の十辺舎一九であります。「とは言ってもね、普通に中学高校で歴史を教わっていても、十辺舎一九ってそんなに大きく取り上げられないから、それほど馴染みある人物ではなかろうて」そんな風に思う方、まあ一寸お待ちなさい。よく知らない人物であればこそ、読んでいて与七郎のダメっぷりは滑稽です。そして、故郷から与七郎に随伴してきた太吉が、そんな与七郎をなじるのが、また、可笑しい。故郷の静岡から、大坂、果ては江戸へ。浄瑠璃作者として活路を見出しつつあった与七郎の旅の終わりは一体いつになるのやら。 酒見賢一の『ピュタゴラスの旅』という作品の中で、数学の祖とされる「ピュタゴラスは旅人であった」というくだりがあるけれども、あるいはこの十辺舎一九も本質が旅人だったのかもしれませんね。その放浪癖が後の代表作『東海道中膝栗毛』の弥次さん北さんにつながってくるわけですけども。ちなみに単なる歴史小説というわけでなく、ラストでは思わずおぉと言ってしまうような展開も。元々著者はミステリーものも書いていましたからね。そんな感じの急展開。
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あの十返舎一九を主人公にした話です。 松井さんらしく、今回も当時の大坂や江戸の文化や風俗について詳しく書かれていて勉強になります。 ただ、主人公の一九(与七郎)に魅力が感じられないのが残念。
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●『東海道中膝栗毛』で名高い十返舎一九の、若かりし日の物語。 駿河出身の侍、重田与七郎。彼が大坂奉行小田切土佐守に仕えるべく大坂に足を踏み入れたところから、話は始まる。 与七郎はその地で人形浄瑠璃を知って筆を執るようになり、また材木問屋の婿に見込まれ武士から商人へ身を移すのである...
●『東海道中膝栗毛』で名高い十返舎一九の、若かりし日の物語。 駿河出身の侍、重田与七郎。彼が大坂奉行小田切土佐守に仕えるべく大坂に足を踏み入れたところから、話は始まる。 与七郎はその地で人形浄瑠璃を知って筆を執るようになり、また材木問屋の婿に見込まれ武士から商人へ身を移すのであるが・・・。 ●「面倒なことからはすぐに逃げ出したい」性分の与七郎は、すぐに旅に出たくなるのが難点。他にも大きな問題があるのだが、それは物語の終盤明らかに。 この小説の魅力は、江戸の出版文化やそれに関わる版元蔦重や山東京伝と言った人物の描写。 そのへんの取材っぷりが、松井今朝子の本領発揮と言ったところでしょうかね。
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駿河の同心の家に跡取りとして生まれた与七郎が、他藩の与力を頼りに出た大阪で浄瑠璃に出会う。材木問屋の養子に入り浄瑠璃作家になるものの離縁となり、更に江戸へ出て質屋の養子に入って黄表紙本の作者・十返舎一九になる。しかしそこにも落ち着かず、また旅立って「東海道中膝栗毛」を描くまで。 ...
駿河の同心の家に跡取りとして生まれた与七郎が、他藩の与力を頼りに出た大阪で浄瑠璃に出会う。材木問屋の養子に入り浄瑠璃作家になるものの離縁となり、更に江戸へ出て質屋の養子に入って黄表紙本の作者・十返舎一九になる。しかしそこにも落ち着かず、また旅立って「東海道中膝栗毛」を描くまで。 幼馴染の家来として同行する太吉の表し方が面白い。 この人の作は、いつも最後の最後で「え〜!?」と裏切られるのが気持ちがいい。 2008.8.6
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蜂谷宗八からついに聞かせてもらえなかったあの蘭奢待は、長い旅路の果てにたどり着いた国で、たとえ十遍聞いても末枯(すが)れないという十返(とがえ)りの名香だった。一九はおこがましいのを承知の上で、自らの筆もまたそうありたいと願ったのである。 この世をば どりゃお暇(いとま)と線香の...
蜂谷宗八からついに聞かせてもらえなかったあの蘭奢待は、長い旅路の果てにたどり着いた国で、たとえ十遍聞いても末枯(すが)れないという十返(とがえ)りの名香だった。一九はおこがましいのを承知の上で、自らの筆もまたそうありたいと願ったのである。 この世をば どりゃお暇(いとま)と線香の 煙と共に灰さようなら
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十返舎一九が辞世に詠んだ「この世をば どりゃお暇と線香の 煙と共に灰さようなら」を知り、昨年亡くなった植木等さんを思い出された。
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