あらしの前 新版 の商品レビュー
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ある日、戦争がやってきて。 オールト家の子どもたち、勉強は好きでないけど医者を目指すヤン、しっかり者のミープ、オルガンが上手なヤープ、家族思いのルト、好奇心旺盛なピーター・ピム、そして赤ちゃんのアンナ。国境を超えてきたヴェルナーはバイオリンが得意。前半は楽しい家族の暮らしが描かれる。しかしそこに忍び寄る戦争の影。とうとう飛行機が村を燃やし——。 都会アムステルダムにいるから戦争のニュースに敏感になるミープ。若者らしい目で世界平和を望み、募金活動を実行するヤープ。若い世代に考えすぎだとたしなめる父母たちを古い考えだと思ってしまったが、空襲の後のおかあさんのセリフで考え直した。大切なのは戦争だからといきなり行動を変えることではなく、常日頃から信じていることなのだ。良い人が恵まれるとは限らないけれど、自分たちは生き抜くのだ、と。
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【あらしの前、あらしのあと】 ドラ・ド・ヨング著、吉野源三郎訳、岩波書店、1951年、1952年 宮崎駿が紹介していた二冊。 1943年にアメリカで出版された「あらしの前」は、オランダの田舎町に住む幸せな家族の生活が豊かに描かれる明るい日常が、ある日突然に、ナチスドイツによる...
【あらしの前、あらしのあと】 ドラ・ド・ヨング著、吉野源三郎訳、岩波書店、1951年、1952年 宮崎駿が紹介していた二冊。 1943年にアメリカで出版された「あらしの前」は、オランダの田舎町に住む幸せな家族の生活が豊かに描かれる明るい日常が、ある日突然に、ナチスドイツによる侵攻が始まったところで終わる。 100年の間、戦争を経験してこなかったオランダの普通の人たちが、ナチスの宣戦布告なしのノルウェー侵攻を「対岸の火事」と見ていたり、永世中立を唱える自国の政府と軍隊を信じていたり、「まさか、ヒットラーもオランダを攻めてくることはないだろう」という希望的観測の基、日々を過ごしている。 それは、のどかで幸せで温かな生活を望む、人としての極めて当然な本能からくるのだと思う。 しかし、それでも、あぁ、こうやって戦争に市民は巻き込まれていくのだ、と感じざる得ない。 オランダ生まれで、ナチス侵攻前にアメリカに渡った著者の元には、「あらしの前」刊行後、子供達からたくさんの手紙が届いたという。 お話の主人公である「ファン・オールト家」のその後はどうなのか?無事なのか? 1947年に出版された「あらしのあと」は、あれから6年後の世界が描かれている。幸せな生活を営んでいた一家は戦争を経て、何を失って、何を得るのか。 70年前の日本だけではなく、世界中で今でも多くの地域でこの経験をしている人たちがいるのだと思い知る。 特に1冊目で、校長先生に叱られた勉強嫌いの次男ヤンが目標を定めて頑張る姿とその後など児童文学を読んで初めてグッときた。 文末に、「グリックの冒険(ガンバの冒険シリーズ)」「哲夫の夏休み」で有名な斎藤惇夫が「生きる指針となった物語」として解説を書いている。敗戦を新潟県長岡市で迎えた小5の惇夫少年にとって「大切な人生の1冊」となったことがかかれている。ここでも泣けた。 子供が読むだけではもったいない。 よいうより、戦争を始めることができる立場にいる大人が読まないといけない。 翻訳は、岩波少年文庫を創刊した吉野源三郎。 著書の「君たちはどう生きるか」の漫画版が昨年大ヒットし、宮崎駿が映画化すると発表している。「君たちは・・・」も昭和12年、盧溝橋事件が起きて日中戦争が始まった時に反戦の表現をギリギリにいれて刊行した本だ。 #優読書
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第二次世界大戦直前のオランダ。医者一家の家族愛。ナチスに侵攻されるオランダの様子。地続きなヨーロッパでは戦争ではこのような感じになるのか。児童書ではあるが感動する。
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再読 オランダの歴史を殆ど知らなかったので日本と比較しながら読みました。侵略される側の日常は実際事が起きるまではあんな感じなのでしょうね。 若いミープが一番現実を見通す力強いがある気がします。 後半になってドンドン息苦しくなるのはナチスの足跡が近づくからですよね。 読者がこの一家のその後が気になって、作者に手紙を書いた気持ちはよくわかります。
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佐々木俊尚さんのつぶやきでおススメされてたので読んでみた。 「あらしのあと」とセットで、戦争の前とあとの話。 3/11の震災前とあとを思い起こさせる。 久しぶりに外国の本を読んだけど、やっぱり日常会話とかが独特で読みづらいというか、そこが興味深くもあるけど。
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小満:[次第に満つ] ゆうらゆうらと揺れる 吊るされた肉の塊を眼前にして 僕の心は不安に満たされつつあった。 ウインチの先、滑車を介した がらがらとした太い鎖に繋がれた 大きな鉤。 その下から吊るされた肉。 近づく カタストロフ。 女の胸 心奥深くから湧き出ずるものが ...
小満:[次第に満つ] ゆうらゆうらと揺れる 吊るされた肉の塊を眼前にして 僕の心は不安に満たされつつあった。 ウインチの先、滑車を介した がらがらとした太い鎖に繋がれた 大きな鉤。 その下から吊るされた肉。 近づく カタストロフ。 女の胸 心奥深くから湧き出ずるものが その頂に集まり 硬く屹立する。 不安は、 気配を悟られることなく すでにこの肉塊をも 静かに汚しているかもしれない。 このつやつやと 美しい肉の肌に触れたら 指先から不安は僕の中に滑り込み すでに不安に満たされつつある僕は たちまちこの場を去らねばならぬやもしれぬ。 しかし、 この部屋の外には もう世界が無いかもしれないのだ。 ならばこの肉を 貪ることこそを 僕が成すべきか。
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戦争も、天災も、まさかという感じで襲ってくるところはちょっとにている。それまでの平和な暮らしが一転して、それぞれに緊張を強いられ、何を信じたらいいか迷いながらも待ったなしで決断して進まなければならない時間。読みながら、今ならではの想像の翼を広げられる。前編では、都会に出ている長女...
戦争も、天災も、まさかという感じで襲ってくるところはちょっとにている。それまでの平和な暮らしが一転して、それぞれに緊張を強いられ、何を信じたらいいか迷いながらも待ったなしで決断して進まなければならない時間。読みながら、今ならではの想像の翼を広げられる。前編では、都会に出ている長女はじめ若者がドイツへの不安を口にしても、田舎の大人たちが真に受けなかったり、ドイツがせめて来ることはない、万が一来ても備えは十分と楽観しているのが、ちょうど原発をめぐる状況にも重なり、考えさせられた。
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