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大相撲の経済学 の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2019/01/06

大相撲という特殊な世界を経済学の観点から理解することを試みようという一冊。 年寄株、部屋、番付、横綱審議委員会…等々、一般人にはなかなか理解しづらい相撲界の特殊な仕組みを経済学の概念を用いて読み解くとともに、そういった独特の仕組みの中で個々の力士や親方はどのような行動をとることに...

大相撲という特殊な世界を経済学の観点から理解することを試みようという一冊。 年寄株、部屋、番付、横綱審議委員会…等々、一般人にはなかなか理解しづらい相撲界の特殊な仕組みを経済学の概念を用いて読み解くとともに、そういった独特の仕組みの中で個々の力士や親方はどのような行動をとることに合理性があるのか、またそれゆえにどのような問題が起こり、どのような対応策が採られているのか、について論じられています。 もともとは2003年に単行本として発刊された本で、今回、朝青龍問題や時津風部屋問題などの直近の話題を捕捉した最終章を追加して新たに文庫化されたもの。 個人的に経済学の観点で様々なものを見てみるということが大好きで、しかも、なぜか幼稚園児の頃から相撲に興味を持ち、元理事長の北の湖が全盛期だった頃から相撲を見続けてきた者としては、非常に興味深く読むことができました。 年寄株についてなど、これまで通り一遍の知識しかなかった話題についても理解を深めることができたし、特に一代年寄にはその栄誉と裏腹にデメリットも少なくないということを知ることができたのはなかなか新鮮でした。 昨今様々な問題が噴出する相撲界に対して、その閉鎖性を批判する論調が高まりを見せています。 著者は相撲界という閉鎖社会が世の中の変化についていけずに綻びを見せ始めていることを認めた上で、大相撲が純粋な「スポーツ」ではなく古来の「伝統」を継承するという目的をもっていることを重視する立場をとっています。 すなわち、単にグローバル・スタンダードの観点で相撲界に批判を加えるだけでは、伝統の継承という相撲界の存在意義を無視することになってしまう、という意見です。 例えば八百長問題にしても、それをモラルの低下として単純に批判・断罪するだけでは解決に近づくことはない。 実際に八百長が行われているか否かとは切り離して、力士が八百長を行うことへのインセンティブは昔から存在しており、また、純粋な「スポーツ」ではない大相撲においては八百長が「伝統の継承」という組織目標の観点からは合理的となるケースもありうるという構造を理解する必要がある、といったことです(だからといって著者が八百長を肯定しているというわけではありません)。 相撲界のような特殊世界が、どこまで一般社会の常識を取り入れるか、どこまでその特殊性を維持するか、その線引きは非常に難しい問題ですが、マスコミの浅薄なバッシングに踊らされずに、変えるべきところは変え、変えるべきでないところは変えないという見極めを心がけながら眺めてみようという気になりました。 著者には、本書の他「お寺の経済学」「障害者の経済学」「オバサンの経済学」といった一連の著作もあるようなので機会があればぜひ読んでみたいと思います。

Posted byブクログ

2018/11/18

力士の給与体系、相撲部屋の収支、チケットの販売制度など相撲の仕組みそのものを丁寧に説き明かしてゆく良著。経済学の知識がなくても十分読める。 どの章をとっても読みごたえ十分なんだが、ワタシにいちばんヒットしたのは『第6章 いわゆる「八百長」について』と『第11章 角界の構造改革』。...

力士の給与体系、相撲部屋の収支、チケットの販売制度など相撲の仕組みそのものを丁寧に説き明かしてゆく良著。経済学の知識がなくても十分読める。 どの章をとっても読みごたえ十分なんだが、ワタシにいちばんヒットしたのは『第6章 いわゆる「八百長」について』と『第11章 角界の構造改革』。なぜならば、そこには「相撲」と「八百長」に関するワタシの考えとほぼ同じことが書かれていたから。 かつて、村松友視がプロレスを「他に比類なきジャンル」と称したが、ワタシは相撲もこれにあたると思っている。つまり、相撲はスポーツではない。スポーツでないのだから、そもそも「八百長」の有無について騒ぐのはほとんど意味がない。著者も「相撲はスポーツか?」という見出しをたてて論じている通り、相撲をスポーツと見立ててその競技性を高めていったらどうなるかということを考えると、相撲の本質が見えてくる。 「大相撲の強みは文化性であって競技性ではない。」と指摘し、相撲は「営利を求めるのではなく、相撲文化の継承を使命」とした「公益法人に徹すべきだ」という著者の提言は的を得ている。

Posted byブクログ

2012/10/14

八百長、年寄り制度、横審、茶屋制度といった相撲独特のシステムを経済学という切り口から考察 した本。一見不合理に見える伝統的システムでも、角界という閉ざされた特殊な世界で伝統を保っ ていくにはもっとも合理的だったりするという面白さを理解できる。制度を作るときにターゲット やゴールが...

八百長、年寄り制度、横審、茶屋制度といった相撲独特のシステムを経済学という切り口から考察 した本。一見不合理に見える伝統的システムでも、角界という閉ざされた特殊な世界で伝統を保っ ていくにはもっとも合理的だったりするという面白さを理解できる。制度を作るときにターゲット やゴールが如何に重要か考えさせられる一冊。

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2011/03/01

何故八百長が起きるか、朝青竜は何故あんなにも協会に従わなかったのか、不祥事が起きるたびに改革をとなえながらもすすまない訳、本書を読んで全部スッキリした。 政治でもなんでもそうだけど、皆が問題点をわかっているのに改革できないのは、当事者がバカなんじゃなくて、できない理由があるんだよ...

何故八百長が起きるか、朝青竜は何故あんなにも協会に従わなかったのか、不祥事が起きるたびに改革をとなえながらもすすまない訳、本書を読んで全部スッキリした。 政治でもなんでもそうだけど、皆が問題点をわかっているのに改革できないのは、当事者がバカなんじゃなくて、できない理由があるんだよな。本書を読んであらためて思った。 今回の不祥事は相撲界のこれからのグランドデザインを描き直す良い機会。スポーツによってしまうのではなく、伝統芸能なんだとわりきってやった方が良いよ。

Posted byブクログ

2011/02/08

相撲は伝統文化・芸能であり、通常の興業スポーツとは違うのだ。 しきたりも、世の中を騒がしている八百長も秩序を乱さないための 仕組みなのだ 相撲愛にあふれながらも数式を用いて冷静に経済分析されており 暑苦しくもドライすぎることもないほどよい温度感の読み物である。

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2010/08/07

スタバグランデとは違って、相撲をビジネス目線で考察した本。つまり、相撲の本である。これからも相撲が残っていくための改革案が、愛情あふれたもので、微笑ましかったりしたよ。

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2010/06/30

相撲問題が巷で話題なので。お相撲さんのセカンドライフなどなかなかしることのない裏側をしれて面白かった

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2010/06/07

相撲の世界が一般社会にも通じる要素をきわめて多く 含んでいることを知るだろう。 実力主義のスポーツ界にありながら、大相撲の力士たちは 実に年功的な賃金体系に守られている。 相撲協会の定年六五歳終身雇用といえばこれほど 「日本的経営」らしい組織もないだろう。 年寄株の不足は日本の年...

相撲の世界が一般社会にも通じる要素をきわめて多く 含んでいることを知るだろう。 実力主義のスポーツ界にありながら、大相撲の力士たちは 実に年功的な賃金体系に守られている。 相撲協会の定年六五歳終身雇用といえばこれほど 「日本的経営」らしい組織もないだろう。 年寄株の不足は日本の年金制度の将来を暗示しているようだ。 いわゆる八百長はフェアネスをモットーとするスポーツの 世界ではご法度かもしれないが、会社の中では社員同士が 助け合っているではないか。 …大相撲の制度を経済学的視点から解き、 これらの制度が揺らいできている点を指摘。 不足する年寄株、転職に悩む力士など、 日本経済が抱える問題の縮図がそこにある。 相撲の世界は独特です。 力士は相撲協会という会社の中にいる社員という 位置づけで、ある程度の実力があれば給与がもらえます。 しかし、大関や横綱クラスでも年収は3000万ほど。 野球選手の年収に比べたらかなり少ないです。 相撲部屋の運営には後援会の存在が必須で、 その経営はかなり厳しいそうです。 営利が最大の目的ではないので、スポーツというより 文化という側面が強いです。 また、力士は勝敗によって番付され、それによって 給与が決まるので、八百長が行われやすいそうです。 たとえ負けても自分の位が変わらない勝負の時は 特にそうです。 お金を渡して「負けてくれ」と言う八百長なんて 本来はあってはならないですが、ビジネスの視点から 考えると、合理的とも言える手法です。 最近では外国人力士が増えてきているし、 彼らは大活躍しています。 そのうち日本の相撲は外国人力士に乗っ取られてしまう のではないか、という声もあります。 しかし、外国人力士の在籍数は制限されているし、 彼らは発展途上国出身が多いので 母国の経済成長が進むにつれ、収入の少ない相撲ではなく、 アメフトやサッカーにシフトしていく可能性が高いそうです。 今まで相撲界には関心がありませんでしたが、 読んでみるとなかなかおもしろかったです。

Posted byブクログ

2009/10/04

大相撲独特の制度・風習が、実はそれぞれ合理性を持ちうるのだということについて、経済学的見地から解説している本。 大相撲について豆知識を得ることが出来、さらに経済学的考察も面白いので、一石二鳥な感じ。 色々アップデートされているので、文庫版の方がお得。特に、朝青龍の一連の行動に関す...

大相撲独特の制度・風習が、実はそれぞれ合理性を持ちうるのだということについて、経済学的見地から解説している本。 大相撲について豆知識を得ることが出来、さらに経済学的考察も面白いので、一石二鳥な感じ。 色々アップデートされているので、文庫版の方がお得。特に、朝青龍の一連の行動に関する解説が非常にわかりやすくて良かった。 蛇足:「ヤバい経済学」でも八百長について触れられていたが、こっちの方が先に出ているのでパクリではない。っていうかこっちの方がだいぶ解説が詳しいし(解決策についても触れているので)。 新品でも買えるレベル。714円。

Posted byブクログ