黒いカーテン の商品レビュー
1941年発表。Blackの名を冠した初期の作品の一つ。過去三年分の記憶を失った男タウンゼントが、失った時間を取り戻すため奔走するお話。身に覚えのない所持品を持ち、見たこともない男に追われ、聞いたこともない名で呼ばれる、究極の孤独と不安を抱えながらたどり着く事件の真実とは。読者の...
1941年発表。Blackの名を冠した初期の作品の一つ。過去三年分の記憶を失った男タウンゼントが、失った時間を取り戻すため奔走するお話。身に覚えのない所持品を持ち、見たこともない男に追われ、聞いたこともない名で呼ばれる、究極の孤独と不安を抱えながらたどり着く事件の真実とは。読者の想像を掻き立て煙に巻くようなラストがやや消化不良だが、孤独と不安を描く名手ウールリッチの手腕は本物。完全な悲劇で終わらせることなく、救いが用意されている点も好み。
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短いけれども濃厚。 そんな作品がこの作品。 何の前触れもなく「未知の存在」 におわれる恐怖よ。 そしてだんだんと失われた期間の 記憶が戻っていきますが それはある種の別の自分が体験した 悲劇でもありました。 この背景に隠された事実は凶悪。 危うくタウンゼントも魔の手に落ちかけましたが ある救世主により助かるのです。 まあ、一部もやるのは気にしないでおこう。 そこは突っ込んではいけない。
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道を歩いていて上から落下物に当たって、家に帰るとどうも様子がおかしい。引っ越しているというのだ。引っ越し先に行くと妻はいた。引っ越して3年半にもなるといい、あなたは突然いなくなったのだと。その3年半の記憶が無い。おまけに誰かにつけられている。どうやら俺は犯罪を犯したようなのだ。と...
道を歩いていて上から落下物に当たって、家に帰るとどうも様子がおかしい。引っ越しているというのだ。引っ越し先に行くと妻はいた。引っ越して3年半にもなるといい、あなたは突然いなくなったのだと。その3年半の記憶が無い。おまけに誰かにつけられている。どうやら俺は犯罪を犯したようなのだ。というわけで、3年半の間の自分を探り、真実を突き止める。 ウールリッチの唐突な物語の究極形かも。空白の3年半に至るのも、戻るのも唐突でSF的な感じすらする。それを超えるのは、妻への、3年半の間の相手への、愛。 訳者の宇野利泰氏は1909年生まれ。生きていたら113歳です。おまけに住所まで記載されているのには驚く。1960年にはこうだったのか。 1941年発表 1960.2.19初版 1987.6.5第30版 図書館
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落ちてきた漆喰壁を頭に受けたタウンゼントはその日、いつものように家に帰宅するが、管理人の驚きの表情が待っていた。 管理人曰くは、もう3年も前に引越したのだという。 不思議な気持ちで引越し先を訪れた彼を待ちうけていたのは妻の驚くべき言葉だった。実は彼は3年前に妻の下から失踪していたというのだ。 半信半疑のうち、元の生活に戻り、勤務先に復帰したが、彼の帰りを付き纏う謎の影の存在を知る。あまつさえ銃口すら向ける謎の男はやがて彼の塒をつきとめ、襲撃する。 執拗な追撃から辛くも逃げ切った彼は妻を実家に帰し、見知らぬ過去と対峙する決意を固めるのであった。 どうだろう、この導入部!アイリッシュならではのサスペンス溢れる設定ではなかろうか。 今回は叙情性よりもスピード感を重視した構成で、アイリッシュ特有の短編を連ねたような追撃劇、殺人劇は成りを潜め、謎の究明に着実に一歩一歩前進していく。だから200ページ足らずの長編にしては話の起伏は濃いのだ。 冒頭に掲げた梗概は60ページ足らずの部分でしかない。現在の作家ならば、これだけで800ページ上下巻作品の上巻のラストまでに達するだろう。今回はこの展開の早さのおかげでページを繰る手がもどかしいほどだった。 裏に隠れた事件についてはアイリッシュらしからぬトリックの施されたもので、ちょっと驚いた。 しかし縺れた糸を1本1本振り解いていくような筆致はサスペンスの王様の面目躍如といったところで緊張感が持続してよかった。 が、しかし、しかしである! 冒頭に掲げたタウンゼントの失われた3年間が発生する契機となった原因が何ら語られないまま物語は閉じられるのである。 何ゆえ、彼がダニエル・ニアリングと名乗って旧家の召使となっていたのか―というより、彼の正体はタウンゼントなのかニアリングなのか―、記憶消失の原因は何だったのか、これらが全く整理されないままなのだ。 これは物語としては片手落ちだろう。最後の1ページにこの真相が語られると期待していただけに、不満が残ってしまうのだ。
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2017年東京創元社の復刊フェア対象作品。長編とはいえ、分量は少なめで、とにかくテンポよく進むのであっという間に読めます。その疾走感を楽しむ作品でしょうか。良かったです。
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復刻版で読み終わり。 スピーディでテンポの良いサスペンスドラマを観ているような感じだった。最後まではらはらしながらもどこかで安心しながら楽しく読めた。ただ、記憶の無いあいだ、ルスやご隠居さまとどんなふうに過ごしてたのかもう少し見たかったなぁ。
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アイリッシュ1941年の作品。極めてモダンなスリラーであり、濃密なサスペンスを堪能できる。 会社帰りに崩れ落ちてきた瓦礫を身体に受け、意識不明の状態から回復した男。名は、フランク・タウンゼント。ようやく家へと帰り着くが、今朝、男を見送ったはずの妻の姿は無く、管理人に尋ねると随分...
アイリッシュ1941年の作品。極めてモダンなスリラーであり、濃密なサスペンスを堪能できる。 会社帰りに崩れ落ちてきた瓦礫を身体に受け、意識不明の状態から回復した男。名は、フランク・タウンゼント。ようやく家へと帰り着くが、今朝、男を見送ったはずの妻の姿は無く、管理人に尋ねると随分前に引っ越したという。男は住所を聞き、妻に会いに行く。出迎えた女は朝の様子とはすっかり変わり、老けていた。そして、脅えた妻から「あなたは3年前に失踪した」と、告げられる。 この謎に満ちた導入部から物語は一気に加速し、不可解な状況は更に深まっていく。 会社に復帰したタウンゼントは、街角で拳銃を持った鋭い目付きの男にいきなり追いかけられ、命からがら逃げだす。失われた3年の記憶。一切は黒いカーテンに遮られているかのようだった。タウンゼントは、自分が何者であったのかを探るために、意識不明となった現場へと向かう。失くした記憶を知る謎の女との出会い。さらに明らかとなったのは、自分は殺人者として警察に追われる身であるという悪夢のような事実だった。重苦しい不安と焦燥感を抱えたまま、タウンゼントは己自身が「加害者」となる殺人事件を追い始める……。 短い小説だが、それだけに無駄なく引き締まっている。アイリッシュならではの男女のロマンスも絡めつつ、絶望的な状況下でさえ希望を捨てない孤独な男の生き方を乾いた筆致で描き切る秀作だ。幕切れも哀感に満ちている。
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小学校に置いてあった(あかね書房版:少年少女世界推理文学全集)の1冊。タイトルは『恐怖の黒いカーテン』。主人公が記憶を失った場面で始まる物語は、自分探しの興味から、自分が殺人犯ではないかという恐怖、そして協力者との謎解きと、百数十ページで欲張ってます。この本で叙情派の虜になりまし...
小学校に置いてあった(あかね書房版:少年少女世界推理文学全集)の1冊。タイトルは『恐怖の黒いカーテン』。主人公が記憶を失った場面で始まる物語は、自分探しの興味から、自分が殺人犯ではないかという恐怖、そして協力者との謎解きと、百数十ページで欲張ってます。この本で叙情派の虜になりました(推定10歳)。アイリッシュは文章のリズムと甘さが良いんです。
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