日月めぐる の商品レビュー
城を築く余裕すらない一万石の駿河国児島藩に仕える藩士や領民たちの物語。紙の原料になる三椏を植え農閑期には紙漉きに励む。長閑な風景ではあろうが貧しさが滲み出てくるようで読んでいる間、ずっと湿っぽい気分だった。 町から離れた所に大小の岩に遮られ激しく渦を巻く川の光景を一目見ようと、子...
城を築く余裕すらない一万石の駿河国児島藩に仕える藩士や領民たちの物語。紙の原料になる三椏を植え農閑期には紙漉きに励む。長閑な風景ではあろうが貧しさが滲み出てくるようで読んでいる間、ずっと湿っぽい気分だった。 町から離れた所に大小の岩に遮られ激しく渦を巻く川の光景を一目見ようと、子供達や好き合う男女や旅人たちが訪れる。摩訶不思議な光を発した紺碧の渦は吸い込まれそうな程きれいだ。 人生の渦に巻き込まれて、幸せを掴む者もいた。腹を切る者もいた。本当の愛がわかった女もいた。
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小島藩のことを調べていたらここを舞台にした物語があると知って借りてきた。 江戸時代の田舎の小藩の暮らしぶりが描かれていて心地よい。興津川にはほんとうに渦があるのか、確かめたくなった。
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駿河の小藩を舞台にした連作。少しずつ繋がって、男女の「その後」の様子がさりげなく書かれていたりするのが、読者としては嬉しいところ。 必ず登場するのが興津川の「渦」。急流が岩に阻まれて摩訶不思議な色の渦を巻く。人はその渦に己を重ね、それぞれの思いに至る。 貧しいながら、和紙の生...
駿河の小藩を舞台にした連作。少しずつ繋がって、男女の「その後」の様子がさりげなく書かれていたりするのが、読者としては嬉しいところ。 必ず登場するのが興津川の「渦」。急流が岩に阻まれて摩訶不思議な色の渦を巻く。人はその渦に己を重ね、それぞれの思いに至る。 貧しいながら、和紙の生産でそれなりの活気をもっていた藩が、明治維新の混乱で荒廃するのが哀しい。
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2005年11月から2007年11月まで「小説現代」に掲載された7話の単行本化。 幕末の1万石の小島藩(静岡県小島町)とその後の徳川家の移封を舞台として、半世紀に亘ってそこに生きた7組の人々の生き様や思いをオムニバス形式で描いている。 かつての同僚の不審死の真相を糾そうとする...
2005年11月から2007年11月まで「小説現代」に掲載された7話の単行本化。 幕末の1万石の小島藩(静岡県小島町)とその後の徳川家の移封を舞台として、半世紀に亘ってそこに生きた7組の人々の生き様や思いをオムニバス形式で描いている。 かつての同僚の不審死の真相を糾そうとする隠居間際の老武士、十年待ち続けた相手が突然現れて動揺する女、男前で女を騙し続けて来たが乗り込んだ家で居場所を見つけた男、言い交わした相手が隠密働きのために結婚できなかったという真相を知った人妻、父を捨てて出奔した母の相手を斬るために来たが紙漉きに勤しむ母から真相を語られる若者、憧れる鉄砲師範の噂話に動揺して師範を死に至らせた百姓の倅、維新で江戸を追われ静岡に入植する旗本の娘。 彼らは狭い小島藩領で、少しずつ繋がり、 時代を超えて、岩場の大きな渦という、人々が何事かを感じざるを得ないような自然の姿が、各話に登場し、物語を繋いでいく。
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江戸末期の駿河の小藩を舞台にした7つの短編集。 時代設定は江戸末期から幕末そして明治の動乱期と少しずつ動いている。 だけど、登場人物の心模様などは現代に生きる私たちと変わらず、 切ない部分・哀しい部分がさらりと描かれている。 ただ、これまでの作品に比べると、短編ということもあっ...
江戸末期の駿河の小藩を舞台にした7つの短編集。 時代設定は江戸末期から幕末そして明治の動乱期と少しずつ動いている。 だけど、登場人物の心模様などは現代に生きる私たちと変わらず、 切ない部分・哀しい部分がさらりと描かれている。 ただ、これまでの作品に比べると、短編ということもあってか、 今ひとつ読み応え感は乏しかったようにも思いました。 これまでの作品との相対評価で☆3つ。
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