馬の瞳を見つめて の商品レビュー
ナイスネイチャの渡辺牧場に嫁がれた方による本。昨今の引退馬支援ブームの中で話題に上がることも多く、Amazon上でも値段が乱高下している。 読む前は、例によって引退馬支援のためのお涙本かと思っていたが、全く違っていた。サラブレッドを扱う牧場の、極めてリアルな生と死の経験談が続く。...
ナイスネイチャの渡辺牧場に嫁がれた方による本。昨今の引退馬支援ブームの中で話題に上がることも多く、Amazon上でも値段が乱高下している。 読む前は、例によって引退馬支援のためのお涙本かと思っていたが、全く違っていた。サラブレッドを扱う牧場の、極めてリアルな生と死の経験談が続く。 経済的な理由から健康な馬の命を絶つという、極めて厳しい場面も登場する。ご本人も「一方では、若く健康な子たちを先にあの世にい行かせ、もう一方では、年とった不健康な子を生き長らえさせる」ことへの矛盾に悩んでいる場面もある。 その意味で、渡辺さんの考え方は万人受けするものではなく(一部の獣医との確執もある)、読んでいてなにを思うかは人それぞれだと思う。 ただ、競馬の現実を知ることが出来る本として極めて重要な本だと思う。
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動物好きの女の子だった著者がサラブレッドの生産牧場へ嫁ぎ、馬とともに生活する。この本の紹介で書かれるように、競走馬の生死が大きなテーマとしてあるが、前半は牧歌的な話も多い。 2023年のダービーでは1頭の馬がレース中に急性心不全で死亡した。注目度が高いレースだったため、様々な意...
動物好きの女の子だった著者がサラブレッドの生産牧場へ嫁ぎ、馬とともに生活する。この本の紹介で書かれるように、競走馬の生死が大きなテーマとしてあるが、前半は牧歌的な話も多い。 2023年のダービーでは1頭の馬がレース中に急性心不全で死亡した。注目度が高いレースだったため、様々な意見があったが、競馬においてレース中の怪我や事故などは珍しいものではない。そして、レース外での死は珍しくないどころか、避けて通れないものである。 一年で生産される競走馬は約7000頭、そのうち無事にデビューできるのは4000〜5000頭ほどで、1勝でもできるのは約1300頭、先のダービーに出走できるのは18頭。 競馬に詳しくない人でもダービーは知ってると思うが、このレースが能力検定試験も兼ねていたことは知られていないかもしれない。実質的には現在もそうである。簡単にいえば、ダービー馬は種牡馬になれる。つまり手厚く生かせてもらえる。なぜなら種牡馬は金を生むからである。では、それ以外の馬は。 馬の面倒を見るには金がかかる。だいたいの場合、種牡馬や繁殖牝馬は自分の食い扶持を稼げるわけで、経済的に安定しやすい。先述した2023年のダービーにおける様々な意見は、全体的にセンチメンタリズムに支配され経済面への視線が欠けているものが多かったが、本書にもあるとおり、馬を生かすための最も高いハードルは金銭である。失敗したようだが、著者はマルチ商法にまで手を出したらしい。 「それでは競馬をなくしてしまえばいいのではないか」という極端な意見もある。実際、世界的に競馬は下火である。(その原因は動物愛護というよりコスト面の問題だが。) しかし、サラブレッドは野生動物ではない。競馬をなくすというのはサラブレッドという種の絶滅とほぼ同義である。悲しい死をなくすためには生まれなければいい、というのは反出生主義的というか、はっきりいえば本末転倒だと思う。やるにしても絶滅を回避するようなシステムを整えたあとの最終手段としての話であろう。 本書は、それより前の手段として、悲しい死をなくすために奮闘する話である。すべてが解決するわけではないが、すこしは解決する。最大の効果がでないからといって最善を尽くしているひとを、褒めることはあれ、責める筋合いは一片たりともない。
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生産牧場に嫁ぎ、動物や馬をこよなく愛する著者による、馬の現実問題の話。 非常にリアルに率直に、現実が語られています。 また、この著者の現実への立ち向かい方が、壮絶です。 馬のことを馬の気持ちになって考えるからこそ、この著者の現実との折り合い方は、こんなにも見事になるのだと思いまし...
生産牧場に嫁ぎ、動物や馬をこよなく愛する著者による、馬の現実問題の話。 非常にリアルに率直に、現実が語られています。 また、この著者の現実への立ち向かい方が、壮絶です。 馬のことを馬の気持ちになって考えるからこそ、この著者の現実との折り合い方は、こんなにも見事になるのだと思いました。
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意外と知られていない、引退した競走馬のその後。 競走馬の世界の厳しさ、安楽死に至らないサラブレッドの多さと一頭でも多くのサラブレッドに安らかな余生と死を迎えさせたいという作者の想いに心をうたれました。 乗馬クラブにいるサラブレッドを見る目もまた少し変わりました。
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気持ちはわかる。 でも、理解できない。 作者と同じ立場になったら、同じことを考えるかも知れない。馬の死をたくさん見たら、安らかに死んでもらいたいと思うかも知れない。 だが、安らかでも何でも死は死だ。 どのように死ぬのか? よりも、どのように生きるのか? を模索するほうに力を注い...
気持ちはわかる。 でも、理解できない。 作者と同じ立場になったら、同じことを考えるかも知れない。馬の死をたくさん見たら、安らかに死んでもらいたいと思うかも知れない。 だが、安らかでも何でも死は死だ。 どのように死ぬのか? よりも、どのように生きるのか? を模索するほうに力を注いで欲しかった。 もちろん、その努力もしているが、経営が傾いてからは、まるで死を与えるために馬を引き取っているかのようだ。 「他人の所有になれば(中略)死に方がどうであれ諦めるしかない。それくらいなら……」安楽死なのか? まるで、愛するあまりにボタンを掛け違えたような感じだ。 もしも、私がこの牧場出身の馬を持っていて、手放すことになったとする。 この本を読んでしまった以上は、申し訳ないけれど、牧場には戻せない。 二度と直ることのない脚部不安を抱えていたら、もう高齢でよぼよぼなら、戻すかも知れない。 でも、まだまだ乗馬として乗れるなら、別の人に譲る。自分が納得する信頼できる人を探し出すだろう。 1年後、安楽死させられるなら、10年後、と殺されたほうがいい。 その間に、万が一でも、老衰で死ぬまでかわいがってくれるご主人に巡り会うかもしれない。そのチャンスをつぶしたくない。 もちろん、自馬を持つなら最期まで面倒を見れたらと願うし、その最期は生産者ではなく天に決めてほしい。
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大型動物であるが故に、生産した命に対する責任をまっとうするということがいかに大変であるかを考えさせられます。著者の渡辺はるみさんは私たちの会で引き取っているナイスネイチャの生産者であり、また繋養先の奥様です。2003年馬事文化賞次点作品。最後までシービスケットと争いました。この本...
大型動物であるが故に、生産した命に対する責任をまっとうするということがいかに大変であるかを考えさせられます。著者の渡辺はるみさんは私たちの会で引き取っているナイスネイチャの生産者であり、また繋養先の奥様です。2003年馬事文化賞次点作品。最後までシービスケットと争いました。この本をきっかけに大きく世の中が動きました。
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