武蔵野夫人 の商品レビュー
最高に面白かったです…
最高に面白かったです。戦後が生んだ傑作ではないでしょうか。堅苦しいはなしと思いきや、実は不倫話です。今も昔も変わりませんね。
文庫OFF
心の動きをこうも的確に書くのかと、いくつも線を引いた。 恐怖に潜む執着、窮地に見せる経済観念、罪悪に裏付けられる快楽などは、普段は言葉にならず心の底に沈殿しているものである。 ルールはないにも関わらず、その一つから螺旋状に演繹されてゆく心理のやりとりは自然であり、残酷なものだと...
心の動きをこうも的確に書くのかと、いくつも線を引いた。 恐怖に潜む執着、窮地に見せる経済観念、罪悪に裏付けられる快楽などは、普段は言葉にならず心の底に沈殿しているものである。 ルールはないにも関わらず、その一つから螺旋状に演繹されてゆく心理のやりとりは自然であり、残酷なものだと気付かされた。 口に出してはいけないものがあり、裏を返せば口に出せるものには真実は現れないということだ。
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スタンダールやラディゲのオタクによる,恋愛心理の分析の教科書。話の筋は通俗の域を出ないが,さまざまな自然描写や独白により上品な仕上がりとなっている。あまりに観念的で分析的な読み方を強要されるのが難ではあるが。
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話の流れは好きだが、とにかく心理描写が読みづらいの一言。 この海外文学の手法を文学的に楽しめるか否かは分かれると思うが、まどろっこしさを感じてしまう人は一定数いそう。
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戦後の時代背景に書かれている物語だが、変わらず現代でもある展開。 結局、人とのかかわりはなにかのことでこ じれていってしまう。 それがいつの世もドラマや小説の種になる。 古い感じを乗り越えて、二組の夫婦を眺めてみて初めておもしろさがよりますと思う。
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(01) ハンパねえ,とも感嘆できそうな支離滅裂と,その分裂をパラノイア(*02)の様に論理的な心理描写で綴り,一歩一歩を綱渡りの様に慎重に繋げていく筆致には驚嘆もさせられる. パンパンの時代ともいうべき敗戦直後のパンクした世相の中で,2組の夫婦が1人の復員兵によって壊されていく...
(01) ハンパねえ,とも感嘆できそうな支離滅裂と,その分裂をパラノイア(*02)の様に論理的な心理描写で綴り,一歩一歩を綱渡りの様に慎重に繋げていく筆致には驚嘆もさせられる. パンパンの時代ともいうべき敗戦直後のパンクした世相の中で,2組の夫婦が1人の復員兵によって壊されていく,その舞台が焼野原となった帝都の心部ではなく,リアルな野原と畑と雑木林の武蔵野であるというところに本書の壊れ方の凄まじさがある. (02) 執拗な筆は,武蔵野の地誌に及ぶ.復員兵の眼を借りて,またその不倫相手の父の書籍を籍りて,盛るようなマニアックさで,地質,地形(*03),植生,動物相が記述され,心裡のレイヤに重ね合わせられる. ところが,野川や水への固執に代表されるこの変態は,本書に触れられているとおりビルマでのサバイバルな戦争体験,今風に言えば従軍を契機とするPTSD,またその飢えや乾きに由来するが,人跡としての道(道子)や水路,鉄路や航路についても「眺め」は及び,その離人的(*04)パースペクティブが結語の「怪物」に帰ってくるという理窟になっている. (03) 「はけ」に伴う身体の上昇と下降は,一章が与えられた蝶の飛翔とシンクロナイズされるが,これは「恋ヶ窪」や「狭山」の高いとも低いとも言い難い水源にも響く上下運動である. その中で丹沢山系の上に見出される富士山も本書における重要な象徴をなしている.復員兵にとって破壊作戦上のベースキャンプ,滅裂心理上のベンチマークに位置付けられた富士山であったが,終盤で「蟹」と対比されるのが,興味深い.この蟹はいったいどこからやって来た蟹であろうか.怪物,水,海,湖とも連関する蟹の象徴はどこから来たのか. 「はけ」が入り組みである谷戸に住まう夫婦は,あるいは巣穴に巣食う蟹とも目されるのかもしれない.もちろん地質的には飛躍があるが,富士山の潰れとしての,丘陵や野の問題として印象されるマークである. (04) これは著者らしい自虐の史観(私観)にも関わる問題である.
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
多くの方のレビューのように、これが実験的か、斬新なのかを判断する力は私には無い。あるいは下敷きのなる作風に関する知識も無い。ただ、独特だなと感じた点は、地の文と台詞との矛盾だ。本作では台詞ではなく、地の文で登場人物の感情を描写している。勿論、紋切り型になって仕舞い勝ちな地の文での感情描写だけなら大したことはないが、これに反し矛盾する台詞を多く挿入することで、読み手の混乱を誘うのは面白い。一方、乾いた情景描写、それぞれの感情が他者に伝わっておらず、互いの話が噛合わず、思い込みを持ちながら物語は進む。 ディスコミ、あるいは、それぞれの感情を言葉にしないので、みんな相互に心の内を誤解しながら展開していくのもなかなか。という点はともかく、概略「一生愛し合う誓いができれば、世間の掟(道徳?)が改まって、私達を責めないで一緒になれる。…十年待てば…。」と言う道子に殆ど絶望した勉。なのに彼に「抱いて」と迫り、長い接吻を交わす2人。ところが「もう秋山(夫)が帰る頃なの。もうこれで帰って。あなたと秋山が一緒にいるところを見たくない…」という件がある。何じゃこりゃ、男を馬鹿にしているのか、と思わず叫んでしまった…。 一見無垢に見える女のコケティッシュな言動にはどうしようもない怒りを覚えるが、これこそ著者の狙いなら、思うツボにはまったのかも…。
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大岡昇平の作品は実はこれが初めてだったが、意外や意外、すらすら読めた。 昼ドラのようだが、そうではない。 登場人物達の距離感が好きだなぁと思った のは覚えているが、細部を大分忘れてしまった。 再読しよう。
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やっぱり私には大岡昇平はわからない 文章は好き 夫、人妻、そして復員したばかりの不良学生の織り成す「昼ドラ」は、共感とか同情とかいう想いを抱かせるのには程遠い(私にとっては) 皆がみんな自分本位に行動していると思った あと、「誓いは神の前でするものだ」という言い...
やっぱり私には大岡昇平はわからない 文章は好き 夫、人妻、そして復員したばかりの不良学生の織り成す「昼ドラ」は、共感とか同情とかいう想いを抱かせるのには程遠い(私にとっては) 皆がみんな自分本位に行動していると思った あと、「誓いは神の前でするものだ」という言い回しが、「野火」の教会のシーンとリンクするものを感じさせた(考えすぎかもしれない) 戦前と戦後について考えながら読もうと思ったけれど、私はまだまだそういう分析的な視線では小説を読むことができないようです 授業について行けるかなー……
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フランス心理小説の手法をつかった「恋愛」小説。登場人物たちの状況と感情の揺れを冷静に描写する。現実では他人の心や感情は表面や信頼できない言葉の端々から推測するしかないが小説では残酷で皮肉に満ちた表現ができる。活字でしか表現できない世界は人間の内面かと再認識。そして武蔵野の自然はご...
フランス心理小説の手法をつかった「恋愛」小説。登場人物たちの状況と感情の揺れを冷静に描写する。現実では他人の心や感情は表面や信頼できない言葉の端々から推測するしかないが小説では残酷で皮肉に満ちた表現ができる。活字でしか表現できない世界は人間の内面かと再認識。そして武蔵野の自然はごく短い生をもつ人間とその愚かさを突き放すように無関心で美しい。話が終わっても残された登場人物のことを考えると慄然とする。
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