北の夕鶴2/3の殺人 の商品レビュー
ミステリー好きの知人に勧められて読んだ。誰にも気付かれることなく出入りすることが不可能なアパートで起きた密室殺人事件の謎解きがメイン。義経の伝説などを絡めたミステリーで、一体これをどうやって解決するんだ…と気になり最後まで一気に読んだ。トリックには思わず木下大サーカスかよ!と突っ...
ミステリー好きの知人に勧められて読んだ。誰にも気付かれることなく出入りすることが不可能なアパートで起きた密室殺人事件の謎解きがメイン。義経の伝説などを絡めたミステリーで、一体これをどうやって解決するんだ…と気になり最後まで一気に読んだ。トリックには思わず木下大サーカスかよ!と突っ込みを入れてしまった。アクロバティックすぎだろ…。しかし解説によると、アクロバティックなトリックがこの人の特徴なので、そこを批判する奴はまだまだわかってないぜ、ということだ。すいません…。他の作品も読んでみたいと思います。
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自分的には島田作品の中でも5本の指に入るほど好きです。 加納通子への愛を、北海道の原野を駆けまわるハードボイルドばりの、熱をおびた文体が吉敷の心情をよく表していて、がんばれ!急いで!…と、読むたびにハラハラドキドキさせられます。 そして何といっても、御手洗シリーズを思わせる手の込...
自分的には島田作品の中でも5本の指に入るほど好きです。 加納通子への愛を、北海道の原野を駆けまわるハードボイルドばりの、熱をおびた文体が吉敷の心情をよく表していて、がんばれ!急いで!…と、読むたびにハラハラドキドキさせられます。 そして何といっても、御手洗シリーズを思わせる手の込んだ大がかりなトリック。 冒頭にマンションをふくめた見取り図が載ってるので、これはいかにも何かあると思ったらヤッパリで、まぁビックリですね。 よくよく考えてみればおそらくアングルやスピードや住人の目撃等から言って非-現実的なんでしょうけど、実際にできちゃうんじゃないかと思わせてしまう(笑)。 まさに島田荘司のアクロバティックな発想と描写力に感服する、そんな見事な作品ですね。 現代世界の物語の中に、鎧(よろい)武者という純和風テイストを登場させて恐怖感をあおる手法も効いている。 エンターテイメントとして、ホントよくできていると思います。
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吉敷刑事のものは、「社会派」のイメージがあるが初期の本作はそうではない。 「御手洗」もののような、奇抜なトリックものではある。 もっとも、本作で初登場となった加納通子のことを考えれば、一種の現代の社会を捉えているのかもしれない。
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初めて吉敷竹史シリーズを読んだ。島田作品は御手洗シリーズしか読んだことなかったので、こんなものも書いてるんだ~!と幅の広さにびっくり!大胆でアクロバティックなトリック、ハードボイルドな立ち回り、丁寧な感情のすれ違いの描写、いろんな意味で他に類を見ない作品。(『そんな無茶な』という...
初めて吉敷竹史シリーズを読んだ。島田作品は御手洗シリーズしか読んだことなかったので、こんなものも書いてるんだ~!と幅の広さにびっくり!大胆でアクロバティックなトリック、ハードボイルドな立ち回り、丁寧な感情のすれ違いの描写、いろんな意味で他に類を見ない作品。(『そんな無茶な』ということは置いといて!)
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ものすごく豪快なトリック。アクロバテイックともいえるようなトリックが大好きな人にはたまらないかも。でもなあ~、個人的にはけっこうムリがあるって言うか…トリック自体に無理があるというより、鎧の目撃がかなり偶然チックというか;; あ、でも見せるつもりじゃなかったのに見られちゃった、っ...
ものすごく豪快なトリック。アクロバテイックともいえるようなトリックが大好きな人にはたまらないかも。でもなあ~、個人的にはけっこうムリがあるって言うか…トリック自体に無理があるというより、鎧の目撃がかなり偶然チックというか;; あ、でも見せるつもりじゃなかったのに見られちゃった、っていうパターンだからありかな。 これ読んだの、学生のころだったからそんなでもなかったけど、今読んだら、熱に浮かされながら推理をする吉敷刑事にメロりそうな気がする(笑)
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
本格推理小説。 マンションの2号棟と3号棟の、それぞれ5階で目撃された女性2人が、1号棟の5階の部屋で死体となって発見された。1号棟の出入口に住み込んでいる管理人は、2人の女性は絶対に通らなかったと主張する。しかし、1号棟の出入口はそこひとつだけだった……。 〔★5つで満点。☆は1/2点〕 トラベル度 ★★★☆ 奇想天外度 ★★★★☆ サスペンス度 ★★★★ 固ゆで度 ★★★☆ 恋愛度 ★★★☆ 伝奇的怪奇度 ★★★ 猟奇趣味度 ★ 現実感 ★ 文章の巧みさ ★★★ 満足感 ★★★★☆ 「トラベル・ミステリ度」は3.5点。 土地の歴史など旅情感を煽る描写は少ない。初めての人が読んだら間違いなく度肝を抜かれるトリック。ただし、他の作品でも使われていたトリックのため、「奇想天外度」は、0.5点マイナス。今回は再読で、記憶に残っていたため、「サスペンス度」は低かった。だが、初めて読んだときは結構緊迫感があり、盛り上がった。「ハードボイルド度」が高い。北方ハードボイルド作品を思い出した。犯人の闇討ちに遭い、満身創痍となった主人公・吉敷竹史が、倒れても倒れても立ち上がり、意識が遠のきそうになっても気力を奮い立たせる姿に、ハードボイルド小説が描くところの「男の何か」を感じさせた。ただし、主人公の心理をその行動を描くことによって読者に伝える手法ではなく、ストレートに感情表現させるところが多い。ハードボイルドタッチと言った方がいいかもしれない。 本書では、吉敷が5年前に別れた妻・通子と再会する。当然「恋愛度」は高まった。離婚の原因にもなった、通子の過去も明らかにされる。それも含めて通子のすべてを受け入れようとする吉敷の感情が迸る。読んでいてちょっと恥ずかしくもあったが、吉敷が吹っ切れたところで清々しくもあった。 源義経の北行伝説が事件になぞらえて語られる。鎧武者も現れる。しかし、恐怖感も怪奇感も薄かった。女性読者なら怖いか? 伝奇的怪奇度は3点。 島田さんは「猟奇趣味度」の高い作家だが、異常趣味やグロテスクな犯罪はない。 「現実感」に関しては、文芸評論家・権田萬治さんに、解説で先手を打たれている。 「この作品のトリックを現実的でないと批判する人がいるが、それは先刻作者が承知していることで、無意味な批判なのである」 作者が承知している通り、この作品のトリックは現実的ではない。「文章の巧みさ」は、いまひとつ。巧いとは言えないと思う。「満足感」は、本格ミステリ好きならきっと高いはず。そうじゃない方には最低の評価をされるかも。少なくとも、純文学方向寄りな方は読んではいけない。大人な方に勧めることも気が引ける。 この作品は2時間もののテレビドラマで見たことがある。この映像化は失敗だったと思う。ちなみに、吉敷竹史を鹿賀丈史、加納通子を余貴美子が演じていた。配役もピンと来なかった。
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一世を風靡した島田荘司氏も、知らない人が増えてきたかもしれない。 しかし、若い世代には、綾辻行人氏や有栖川有栖氏の師匠であると言えば、読みたくなりません? 『御手洗潔』が探偵を務めるシリーズと『吉敷竹史』が刑事のシリーズが主なのだが、とにかく、超絶不可能犯罪を書かせたら、島田氏...
一世を風靡した島田荘司氏も、知らない人が増えてきたかもしれない。 しかし、若い世代には、綾辻行人氏や有栖川有栖氏の師匠であると言えば、読みたくなりません? 『御手洗潔』が探偵を務めるシリーズと『吉敷竹史』が刑事のシリーズが主なのだが、とにかく、超絶不可能犯罪を書かせたら、島田氏の右に出るものはない。 そして、『吉敷竹史』シリーズには、人間ドラマが深く絡んで、ミステリーには珍しい感動がある。 『北の夕鶴2/3の殺人』も、妻を思う刑事の生き方に対する美学が、胸を打つ。 もちろん、怪談めいた不可能犯罪にも驚愕。 お勧めの一冊である。
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刑事・吉敷竹史モノ。殺人犯として追われる別れた妻・加納通子の容疑を晴らすため、吉敷がボロボロになりながら奮闘する。島田作品では御手洗潔とこの吉敷竹史が2大シリーズ。奇想天外なトリックにエキセントリックな名探偵を配した御手洗シリーズに対し、吉敷シリーズは社会派の刑事物。私は、ミステ...
刑事・吉敷竹史モノ。殺人犯として追われる別れた妻・加納通子の容疑を晴らすため、吉敷がボロボロになりながら奮闘する。島田作品では御手洗潔とこの吉敷竹史が2大シリーズ。奇想天外なトリックにエキセントリックな名探偵を配した御手洗シリーズに対し、吉敷シリーズは社会派の刑事物。私は、ミステリは「謎はすべて解けた!」みたいなスカッ感を楽しみたいので、社会派ミステリはあまり好きじゃない。だからこの吉敷シリーズは手に取るつもりがなかったんですね。でも、この「北の夕鶴」から「羽衣伝説の記憶」「飛鳥のガラスの靴」「涙流れるままに」とあともう1作(ネタバレになるので題名は伏せます)が、吉敷と通子の愛がテーマになったシリーズ中シリーズだと聞いたので、これを時系列で追ってみることにしました。この「北の夕鶴」は笑っちゃうような壮大なトリックが御手洗的で面白かったです。「あり得ないって」と突っ込んじゃいました。
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吉敷刑事シリーズ。吉敷の別れた妻、通子が殺人事件の容疑者に。通子の無実を確信する吉敷は満身創痍の状態で事件の謎を解く。物語の根底には元夫婦の愛があり、そして今回の吉敷は肉体的にもボロボロで、苦しいほど追い詰められ臨場感たっぷりでした。
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島田荘司の作品をはじめて読んだ作品が、この作品であるということと、この作品を読んだことで、島田作品にはまっていくきっかけになったということで、大好きな作品です。 正直なところ、よくあるトラベルミステリだろう、くらいに思っていたのですが、予想は見事に裏切られて、プロローグの部分から...
島田荘司の作品をはじめて読んだ作品が、この作品であるということと、この作品を読んだことで、島田作品にはまっていくきっかけになったということで、大好きな作品です。 正直なところ、よくあるトラベルミステリだろう、くらいに思っていたのですが、予想は見事に裏切られて、プロローグの部分から、物語に一気に引き込まれてしまい、こんなにおもしろいミステリがあったのか、と思いながらページを繰りました。 一言でいえば、度肝を抜く破天荒なトリックがすごい。 こんなことよく思いつくなあ、というような荒業です。しかし、それと同時に、底辺に流れるのが、愛の物語でもあるということ。 私自身としては、トリックよりも、後者の部分に感動しました。 主人公は、捜査一課の吉敷竹史(よしきたけし)。 島田作品の特徴は、作品が単体でできあがっているのではなく、作品と作品の間に繋がりのあるものが多いということ。ですから、シリーズキャラクターの事件年表をかなり正確に作ることが出来るということです。そして、シリーズを通して読むと、シリーズキャラクターの人生が浮きぼりにされてきます。 島田作品の、ひとつの重要なシリーズが、『異邦の騎士』などに登場する、名探偵御手洗潔(みたらいきよし)のシリーズ。 そして御手洗シリーズと双璧をなすのが、この吉敷竹史シリーズ。『北の夕鶴〜』は、シリーズ3作目にあたります。 この作品は、前2作品では、ほとんど語られなかった、吉敷竹史の過去が語られます。 吉敷には、離婚した妻がいたこと。そしてその元妻である、加納通子(かのうみちこ)から、電話があったことから、物語は始まります。そしてその通子の声にただならぬ気配を感じた、吉敷は、彼女を追って北海道へ向かいますが…。 吉敷竹史の人間性があますところなく描かれて、そして加納通子との愛の物語ともなっていて、吉敷シリーズ初期の傑作であり、欠かすことのできない重要な作品に位置づけられます。 そして、後のシリーズを読めば、吉敷と加納通子との2人の愛の行方は、作品の底流を流れて、時に水面に顔を出しては、また沈んでまた浮き上がり、というように、途切れない水の流れのように、一編の大河小説のように、続いていることがわかり、2人の行方も気になるところです。 また、『北の夕鶴〜』で解決されたかに見えた、事件の根は、まだまだ深いものがあり、真の解決を見るのは、加納通子が自分自身の過去と対峙しなくてはならなかった、『涙流れるままに』(光文社文庫)という作品まで、待たなくてはなりませんでした。 もし、本作品を読んで、二人の行方に興味をもたれた方は、『羽衣伝説の記憶』 『飛鳥のガラスの靴』 『涙流れるままに』(すべて光文社文庫)と、後もう一作品は、ネタバレになる恐れがあるので、言えませんが、ある作品(御手洗シリーズの一作品)を読むことをおすすめします。 そして、さらに最近作では、吉敷シリーズと御手洗シリーズとの融合も、示唆される展開を見せており、作者の構想力のすごさをうかがわせます。 まだまだ、両シリーズは、目が離せそうにありません。
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