十八歳、海へ の商品レビュー
強い初期衝動を感じた。 中期の完成されたごってり文体を既に読んでいたので、勢いや感傷が入りすぎた本作はうまくハマらなかったかもしれない。。
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日比谷図書館で借りる。 最終ページに手書きで 「6/15ぼくも今18歳 世界をもっと拡げたい」 と書いてあった。 「愛のような」「隆男と美津子」もいいが、やはり「海へ」だろう。 俺と海、全てを無に還元する衝動が3月の雨の降る海、決して爽やかな風が吹き抜けるわけでは無い、どんより...
日比谷図書館で借りる。 最終ページに手書きで 「6/15ぼくも今18歳 世界をもっと拡げたい」 と書いてあった。 「愛のような」「隆男と美津子」もいいが、やはり「海へ」だろう。 俺と海、全てを無に還元する衝動が3月の雨の降る海、決して爽やかな風が吹き抜けるわけでは無い、どんより重たい鈍い海に溶け込んでしまう主人公。 思わず二度と読んだが、意味を捉えようとはせず言葉の抑揚を愉しむ読み方をしたらええんやと思った。やはり中上健次はジャズが似合う。
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秋幸三部作に見られるような神懸かった才能はまだ発出していない。しかし独特な文章表現や着眼点は天才の片鱗を感じさせる。「愛のような」で何処か既視感を覚え、そうだ、大江健三郎に似ているのだと思う。調べてみると少なからぬ影響を受けライバルと目されてもいたようだ。 『枯木灘』のときと比...
秋幸三部作に見られるような神懸かった才能はまだ発出していない。しかし独特な文章表現や着眼点は天才の片鱗を感じさせる。「愛のような」で何処か既視感を覚え、そうだ、大江健三郎に似ているのだと思う。調べてみると少なからぬ影響を受けライバルと目されてもいたようだ。 『枯木灘』のときと比べてプロットやレトリックの巧さは本作のほうが上かもしれない。但しさきの述べたように大江氏と類するところがあり、同土俵であれば文筆家としての軍配は大江氏に上がる。やはり中上健次の良さは「路地」でこそ生きると感じる。
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見城徹の自伝かなんかに、「中上さんと出会って、ああ僕は表現者にはなれないなあとを思った」みたいな一節があったと思います。それはとても印象的で、私の心に深く残っている。なんとなく、分かるなあ、と。多分そういうものなんだろうなあ。私もそういう風に感じるんだろうなあ、と思わせるような、...
見城徹の自伝かなんかに、「中上さんと出会って、ああ僕は表現者にはなれないなあとを思った」みたいな一節があったと思います。それはとても印象的で、私の心に深く残っている。なんとなく、分かるなあ、と。多分そういうものなんだろうなあ。私もそういう風に感じるんだろうなあ、と思わせるような、見城徹の表現だった気がする。中上健二がいかに表現者でいかに生きていたかっていう。これを読んで、いや、そうなんだよね、と改めて。世界はとても難しくて、若さはそれに耐えられなくて、なんというか、それは言葉にできません。できないから中上健二はこういうものを書いていたんだろう。体を内側からナイフで切り刻んでるみたいな小説だった。おとこのひとの書くものは結構こういうことが多い。つらいですよね、って言いかけた。
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60年代の若き男女の肖像。 都市や路地、ゲバなどのもろもろの情景。 特に雨に関する表現は秀逸、うなっちゃう。 でもあくまで文豪の若書き、かな。 主要作品を先に読むか、初期作品を先に読むか。 あなたが決めよ!
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中上健次が23歳までに書き上げた短編集。後半2作品が特に心に直接訴えかけられた。読んでる間、ごうごうと頭の中で音が鳴っているような錯覚に陥る。10代のうちにこの本に出会えてよかった。成人したらまた読み返したい。
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どれもすばらしい。やはり中上健次の初期短編群が僕は好きだ。津島佑子の解説にもあったが初期の中上作品には時代を見に引き受け、そこから多く表現している。大江の初期のものもそうだが僕の嗜好にあっているのだろう、こういうふうな態度や文体のようなものが心地よく感じる。個人的には「愛のような...
どれもすばらしい。やはり中上健次の初期短編群が僕は好きだ。津島佑子の解説にもあったが初期の中上作品には時代を見に引き受け、そこから多く表現している。大江の初期のものもそうだが僕の嗜好にあっているのだろう、こういうふうな態度や文体のようなものが心地よく感じる。個人的には「愛のような」が一等よかった。
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「白い朝、凍りついた世界はあの頃の幸福を知らない」 なんて引用で済むほどの小説じゃない。とんでもないパワーだ。 惹きこまれるけれど受けつけてはもらえない。
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まだまだ荒削りだし実験的に模索的に同人誌に寄稿していた若き日の中上健次の短篇集。 今後大きく主題化していくものの片鱗もこの頃から健在で、ディティールを美しく繊細に描こうという気概も伝わってくる。 ストーリーの素晴らしさだけが良書とよばれるものではないと改めて感じ、むしろ彼の執着を...
まだまだ荒削りだし実験的に模索的に同人誌に寄稿していた若き日の中上健次の短篇集。 今後大きく主題化していくものの片鱗もこの頃から健在で、ディティールを美しく繊細に描こうという気概も伝わってくる。 ストーリーの素晴らしさだけが良書とよばれるものではないと改めて感じ、むしろ彼の執着を唯美的に信じきってしまう快楽を伴った作品集。
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たまたま書斎、というか単に本が超詰まっている部屋というか、そこを少し片付けていたら、一群の本に出会いました。いわゆる外箱付きの本です。今ではめったにお目にかかりませんが、昔は割とあったようです。その中にこの本がありました。といって私が手にしたのは、紹介の文庫本ではなく、1979年...
たまたま書斎、というか単に本が超詰まっている部屋というか、そこを少し片付けていたら、一群の本に出会いました。いわゆる外箱付きの本です。今ではめったにお目にかかりませんが、昔は割とあったようです。その中にこの本がありました。といって私が手にしたのは、紹介の文庫本ではなく、1979年9月に6刷目が発行された単行本です。初版が1977年10月ですから、彼の31歳の時の8冊目の著作で、短編集です。30年前の本なのに、変な臭いもしないし汚れてもなくて、ほとんど新品同様のきれいさです。まるでつい最近出た本みたいに、ここにあります。あっ、そうだ、これは映画化されましたね。1979年に藤田敏八監督で、私の大好きな小林薫と、そして森下愛子と永島敏行とかが出演して、たしか森下愛子のオッパイも出てくる映画です。それはともかく、19歳から23歳の頃の、荒々しい剥き出しのエネルギッシュな初期・中上健次を、久しぶりに20何回目かの再読をし終わって思うことは、やはり従来巷に訳知り顔で囁かれているような、これはけっして大江健三郎の亜流などではなく、別の道に通じるもう一人の中上健次のような気がしてなりません。・・・・・
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