桶屋の挑戦 の商品レビュー
この本に出る「桶(おけ)」とは、おもに大桶と呼ばれる、日本酒や味噌、醤油を仕込んだり、あるいは貯蔵しておくための、木でつくられた文字通り大きな桶を指します。だけどほとんどの人は、そんな木桶を実際に見たことがないはず。私もそう。酒造の現場では、木桶はほぼ100%ホーロータンクに取っ...
この本に出る「桶(おけ)」とは、おもに大桶と呼ばれる、日本酒や味噌、醤油を仕込んだり、あるいは貯蔵しておくための、木でつくられた文字通り大きな桶を指します。だけどほとんどの人は、そんな木桶を実際に見たことがないはず。私もそう。酒造の現場では、木桶はほぼ100%ホーロータンクに取って代わられています。 ホーロータンクは微生物の制御がしやすく、洗いやすく、そして中身が漏れることがほとんどありません。この点だけで見ると、圧倒的に木桶は不利です。しかし、少しずつですが、木の桶でお酒をつくってみよう、という動きが復活し始めました。 セーラさんはアメリカ生まれの女性で、長野県小布施の小さな酒蔵をとても気に入りました。小布施は四季の風景が美しく、人々の生活にも風習として美しいものがたくさんあります。彼女は酒造に関してはいわば素人でしたが、すぐに気づきました。自然と歴史と見事に調和し、どんな町よりも魅力的な小布施で、その魅力の象徴ともいえるこの酒蔵に“木桶”があれば最高なのに、と。 製造過程を厳重に管理した結果、おいしいお酒を少ないリスクでの製造が可能になりました。しかし木桶には、職人などが代々培ってきた技術と、いかにうまく貯蔵するかという戦いの成果が一杯詰まっていたのです。つまり、現在では桶づくりや桶での酒づくりは切れかけの糸のようであっても、人間が長い時間をかけて築いてきた“文化”であり、自然と闘い、調和を勝ち取った人類の叡智がエッセンスとして詰まっているのです。 -そうすれば、桶屋は文化の伝達者ともいえる…簡単にその灯を消していいのか?… この本では、セーラさんのほかいろんな酒蔵の人たち、そして桶屋さん自身でそれに気づきはじめた人たちが、まるで木桶の側板のように互いにくっつき、まるい輪となっていくのが書かれています。 便利さより大事なもの…たしかに今の時代、木桶にこだわるのは大変です。でも、経済や効率優先のなかで、木桶がもつ「よさ」がわかる感性を、私も持ちたいです。そのため、桶屋さんが“挑戦”し続けてくれることに感謝します。 (2009/2/15)
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一般人には最早なじみのない桶について、その衰退と新たなる成長を描いている。真面目に取材して真面目に書かれており、拙い点はあるが個人的には良書扱いにしたい。 絶滅に等しい産業を担う方々と、日本酒における桶を使った製造の復古に関わった方々の話がメイン。そして日本の山林における木材の話...
一般人には最早なじみのない桶について、その衰退と新たなる成長を描いている。真面目に取材して真面目に書かれており、拙い点はあるが個人的には良書扱いにしたい。 絶滅に等しい産業を担う方々と、日本酒における桶を使った製造の復古に関わった方々の話がメイン。そして日本の山林における木材の話など、桶に関連する話が続く。 桶とステンレスタンクの仕込みの違いで日本酒を表現することは出来ないなれど、伝統とかテロワールとか、日本の地方にはもっと地元のよさを表現する手段がたくさんあると思う。それにあらためて気付かせてくれた本。
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桶屋と言うと「風が吹けば桶屋がもうかる」という諺を思い出す。桶って最近はあまり目にしなくなったけれど、今の時代にも桶屋はちゃんといる。本書は、数少なくなってきた桶職人に弟子入りした職人見習いの話から始まる。目指したきっかけは、道具がカッコよく見えたから・・・。しかし、桶屋になりた...
桶屋と言うと「風が吹けば桶屋がもうかる」という諺を思い出す。桶って最近はあまり目にしなくなったけれど、今の時代にも桶屋はちゃんといる。本書は、数少なくなってきた桶職人に弟子入りした職人見習いの話から始まる。目指したきっかけは、道具がカッコよく見えたから・・・。しかし、桶屋になりたいと目指したとたん、次々と不思議な縁がつながっていく。その様子は、まさに諺どうり。桶の良さを広めようとする人々の活動記録ともいえる一冊。
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