プールサイド小景・静物 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
庄野潤三の小説に書かれている一文は、どれだけこちらがその一文について想像を膨らますか、背景を知っているかというのがすごく大切だと感じる。 作品にはそれを書いた作者がいる、というのをよく考えさせてくれる。庄野は詩人なのかもしれない、と思う。 昨年の10月に『静物』という本を読んだ。そこには、「相客」「五人の男」「イタリア風」「蟹」「静物」が収録されていた。 そのときは「五人の男」「イタリア風」がとくに面白く、「静物」がいちばんふわふわとしたまま終わった。 あれから一年弱経って今回この作品集を読んだのだが、「蟹」と「静物」、こんなに面白かったっけ?というふうに思った。あとはじめて読んだ「舞踏」の最後のシーンも好きだった。 小さい子どもがとても生き生きとして描かれている。庄野潤三の描くもののなかで、全作品を通じて好きなポイントだなと気づいた。
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1950年の「舞踏」から、54年の「プールサイド小景」を経て60年の「静物」まで計7編を収録。初期の2作が夫婦の危機や不安定さを詳細に描いているのに対し、後期の作品では日常がより静かに描かれるようになり、『夕べの雲』の世界に近づいていく。 私は「舞踏」が最も印象に残ったが、解説...
1950年の「舞踏」から、54年の「プールサイド小景」を経て60年の「静物」まで計7編を収録。初期の2作が夫婦の危機や不安定さを詳細に描いているのに対し、後期の作品では日常がより静かに描かれるようになり、『夕べの雲』の世界に近づいていく。 私は「舞踏」が最も印象に残ったが、解説によると、雑誌掲載時から大きな改稿がなされたとのこと。気になって調べたところ、下記の論文が詳細に論じていて、理解が深まった。 村手元樹(2016)「昭和二十年代における庄野潤三の文学修業:チェーホフ受容を軸に」『愛知県立大学大学院国際文化研究科論集(日本文化編)』7。 http://doi.org/10.15088/00002583
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高校受験の問題集で初めて出会ったのが「静物」という作品。ありふれた日常を描くことこそ、作家の感性や表現するセンスが現れるのではないかと思う。庄野潤三氏の作品は、表現がとても丁寧という印象を受ける。そして、読み終わった後は、なんとなく温かな気持ちに浸らせてくれるのである。「プールサ...
高校受験の問題集で初めて出会ったのが「静物」という作品。ありふれた日常を描くことこそ、作家の感性や表現するセンスが現れるのではないかと思う。庄野潤三氏の作品は、表現がとても丁寧という印象を受ける。そして、読み終わった後は、なんとなく温かな気持ちに浸らせてくれるのである。「プールサイド小景」も秀作である。
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主にサラリーマン家族の日常生活の何気ない幸せ、それを失う際の呆気なさを描く。どの話も完結するわけではなく、余韻を残して終える。かなりの推敲をして書き上げるゆえの技か。2019.9.4
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2013/02/24のエッセイ講座で 庄野 潤三の文章が素晴らしいとの紹介があったので、読んで見ることにした。 確かに文章には魅力がありつい読んでしまうが、暗い内容はいただけない。 それに、終わりが中途半端なのも、余韻が有り想像を膨らませられるのかもしれないが、 肩透かしな具合で...
2013/02/24のエッセイ講座で 庄野 潤三の文章が素晴らしいとの紹介があったので、読んで見ることにした。 確かに文章には魅力がありつい読んでしまうが、暗い内容はいただけない。 それに、終わりが中途半端なのも、余韻が有り想像を膨らませられるのかもしれないが、 肩透かしな具合で、好きになれなかった。 冒頭の2作を読んで、終わり。 2013/02/24 予約 3/3 借りる。3/4 読み始める。3/10 途中でやめる。 内容と目次は 内容 : 突然解雇されて子供とプールで遊ぶ夫とそれを見つめる妻 ――ささやかな幸福の脆さを描く芥川賞受賞作「プールサイド小景」等7編。 著者 : (1921-2009)1921(大正10)年、大阪府生れ。 九州帝大を2年で終え、海軍に入る。戦後、教職を経て朝日放送に勤め、小説を書き始める。1954(昭和29)年、「プールサイド小景」で芥川賞受賞。 平穏な日常の危うさを描き、「第三の新人」の一人として活躍する。 1960年の「静物」で新潮社文学賞、1965年の「夕べの雲」で読売文学賞、1972年の「明夫と良二」で赤い鳥文学賞、毎日出版文化賞を受賞。
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何気ない会話。 なんでもない風景。 時々ふいに暗転。 50年以上前に描かれた掌編が、こんなに瑞々しい。 滋味豊か。
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1955年の芥川賞受賞作品です。 日常あるあるな情景を淡々と描きながらも、誰もが持っている人生の陰影をさりげなく配置し、語ることよりも語らないことで作品の深みを出すという名人芸です。 家に巣を作ったミノムシの話(「静物」)などはもはや童話の世界です。
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陳腐な表現ですが、『プールサイド小景』があまりに現在的過ぎる。作家という人種は見透かす能力に優れてるんでしょうな、給与所得生活などしていなくても現実を抉り出せる訳ですから。 その一方で、他作で戦争の現実感も感じさせ、読んでいる自分が何処にいるのか、いつの時代の作家の小説を読んでい...
陳腐な表現ですが、『プールサイド小景』があまりに現在的過ぎる。作家という人種は見透かす能力に優れてるんでしょうな、給与所得生活などしていなくても現実を抉り出せる訳ですから。 その一方で、他作で戦争の現実感も感じさせ、読んでいる自分が何処にいるのか、いつの時代の作家の小説を読んでいるのか分からなくなる短編集でありまする。
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今年の私の読書テーマは「第三の新人」。 小島信夫は何年か前に読みましたが、今年は安岡章太郎、丸谷才一、吉行淳之介と読み継いできました。 これら4氏に比べると、やや影が薄いのが庄野潤三ではないでしょうか。 文学に興味のない人でも、安岡や吉行の名前くらいは知っているでしょう。 ただ、...
今年の私の読書テーマは「第三の新人」。 小島信夫は何年か前に読みましたが、今年は安岡章太郎、丸谷才一、吉行淳之介と読み継いできました。 これら4氏に比べると、やや影が薄いのが庄野潤三ではないでしょうか。 文学に興味のない人でも、安岡や吉行の名前くらいは知っているでしょう。 ただ、庄野となると、どうか。 でもねー。 実に良かったです。 家族の生活というものは、危ういバランスの上に辛うじて成り立っているものなのだと再認識しました。 妻と子のいる男なら、誰でも共感を覚えるのではないでしょうか。 まず、感心したのは、芥川賞受賞作の「プールサイド小景」。 会社の金を使い込んでクビになった男の話です。 男には妻と小学生の息子がいます。 妻は明日からの生活を考え、呆然とします。 それでも、いつもの日常と変わらず、夕飯の支度をします。 それを「何故だろう?」と考える妻の疑問は、とてもリアリティーがあります。 一見、幸せそうに見える家庭にも、人には言えない様々な事情がある。 そんなことを感じました。 もっとも会社の金を使い込むというのは極端ですが。 それから、何と言っても「静物」です。 夫婦と1女2男の家族の平凡と言えば平凡な話。 寓話的なエピソードが並べられる、何とも不思議な作品です。 正直に言って、私は初め戸惑いました。 こういう構成の作品は、特に日本人作家には珍しいからです。 自分の少ない読書体験からは、ブローティガンの「アメリカの鱒釣り」に近いかも、と思いました。 1つ1つのエピソードは、釣りをした話や親戚からクルミをもらった話など、確かに他愛無い。 ただ、途中でやや趣の異なる挿話(たとえば階下で女の泣き声がした話など)があり、作品全体に不穏な影を落としています。 いや、何とも独特の読後感。 「舞踊」も良かった。 第三の新人には、小市民的とかスケールが小さいとか揶揄する向きがあります(今はさすがにないか)が、どっこい奥が深いのです。
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「プールサイド小景」のみ読了。 昭和29年発表の作品。1954年。 専業主婦の妻がいて、小学生の息子が二人いて、会社では課長代理の地位にいた男性が、会社の金を、給料半年分ほどの額使い込んだことがばれて、クビになる。 何か壮大な悪事を企んでいたとか、やむにやまれぬ大金が必要な事情が...
「プールサイド小景」のみ読了。 昭和29年発表の作品。1954年。 専業主婦の妻がいて、小学生の息子が二人いて、会社では課長代理の地位にいた男性が、会社の金を、給料半年分ほどの額使い込んだことがばれて、クビになる。 何か壮大な悪事を企んでいたとか、やむにやまれぬ大金が必要な事情があったとか、会社に恨みがあったとか、そういうことではない。 現代なら簡単に「ストレス」という言葉で言い表すようなものが、彼の心を浸食して、こういう結果を生み出したのかもしれない。 私はそう捉えたが、「ストレス」という言葉は作中使われない。この時代そんな言葉は一般的じゃなかったのかもしれない。だからその名前のないものを作者が描くのだが、それが巧みで、読んでいてゾクッとした。 (夏休み明けの憂鬱な通勤時間に読んだから、特にそこが心に響いたのかもしれない。大いにありうる。)
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