回転木馬のデッド・ヒート の商品レビュー
現代の奇妙な空間――都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それらはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人……、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませ...
現代の奇妙な空間――都会。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それらはメリー・ゴーラウンド。人はメリー・ゴーラウンドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人……、さまざまな人間群像を描いたスケッチ・ブックの中に、あなたに似た人はいませんか。
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高校時代の同級生と飲んだ時に、読み返すと面白かったと薦められたので本棚から取り出して、おそらく20数年ぶりの再読。 作者も登場人物も30代で、読み返している僕が一気にその年齢を越えてしまったことに躊躇う。村上春樹は高田馬場のジャズ喫茶で『羊をめぐる冒険』を読み耽った20代の僕が向...
高校時代の同級生と飲んだ時に、読み返すと面白かったと薦められたので本棚から取り出して、おそらく20数年ぶりの再読。 作者も登場人物も30代で、読み返している僕が一気にその年齢を越えてしまったことに躊躇う。村上春樹は高田馬場のジャズ喫茶で『羊をめぐる冒険』を読み耽った20代の僕が向かい合う小説家なのだ。もうじき50になる物語の主人公にも脇役にもなれそうにない冴えない男が辛うじて80年代の風俗に懐かしさを感じながら、ページを捲るべき本ではないのかもしれない。 この中の『雨やどり』から引用すれば、自然発火のごとくセックスが生じなくなってしまった中年男ということになる。その点では、元編集者を買う中年男という脇役にはなれるのだろうか。いや、財布の中身が心許ないので、それさえも叶わないのだろう。
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昔一度読んで、内容を忘れたのでもう一度読み返した。ムラカミさんが観察者のように登場するのが、新鮮だった。全然古さを感じさせない、面白い話ばかり。
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再読。 1993年に発刊された文庫が手元にあるから、ちょうど20年ぶりに再読したことになる。 全編にわたって漂う、独特の「さみしさ」のようなものが、なんとも味わい深い短編集。
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再読、9編の短篇集。 冒頭にてご本人の創作された小説ではなく人から聞いたものであり、文章をスケッチする感覚に近い形で書いたとのこと。 『レーダーホーゼン』 全くの他人にお願いして、その半ズボン試着の様子を見ていることをきっかけに、離婚まで気持ちが一気にかけあがった理由なき決断。歳...
再読、9編の短篇集。 冒頭にてご本人の創作された小説ではなく人から聞いたものであり、文章をスケッチする感覚に近い形で書いたとのこと。 『レーダーホーゼン』 全くの他人にお願いして、その半ズボン試着の様子を見ていることをきっかけに、離婚まで気持ちが一気にかけあがった理由なき決断。歳を重ねて理解できるようになった気がする。 『タクシーに乗った男』 タクシーに乗った男の話ではなく、自分自身を整理するために断捨離した絵のタイトルがそれ。その絵のモデルと偶然異国ですれ違い、旅行者がするごく一般的な挨拶をしたことをきっかけに完全に心の整理がついた話。 など。
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購入者:宇都宮 村上春樹の短編小説です。レーダーホーゼンという1発目の物語が個人的には好きです。長い年月を経て生まれた奥さんのだんなに対する嫌悪感を淡々と綺麗に表現しています。普通ならドロドロした感じになりそうなのも村上春樹が書くと綺麗になるのかもしれません。 貸出:油谷 短編小説だったのでとても読みやすかったです。 久しぶりに村上春樹を読みましたがやっぱり好きだなーっというのが率直な感想です。私も宇都宮サンと一緒で最初のレーダーホーゼンが村上春樹の世界観がなんとなく出てて好きです。
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羽田への飛行機の中でさくっと読んだ。 どこにでもいるような人の中にあるどこにもないようなことを拾い出してきて、わかるように書く。そして、どれもインタビューに近い形の、聞き書きのようなスタイルなので、なんだか会話をしている二人の隣にいるような感じ。村上作品の原点が垣間見え、彼の創作...
羽田への飛行機の中でさくっと読んだ。 どこにでもいるような人の中にあるどこにもないようなことを拾い出してきて、わかるように書く。そして、どれもインタビューに近い形の、聞き書きのようなスタイルなので、なんだか会話をしている二人の隣にいるような感じ。村上作品の原点が垣間見え、彼の創作のエッセンスが詰まった一冊。
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どれも読んだことはあるが記憶がないことが続いていた村上本で、唯一内容に覚えのある一冊。とりわけ、人生の折り返しを意識した話は身につまされる。本当に他人から聞いた話で構成されているのか。そこの自分はどれくらい関わっているのか。自分の世界の小ささ、あるいは偏りを再認識する。
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学生時代(1988)に買って読んだ文庫本。 なんと定価280円(税なし)。 短編集で、その中の「プールサイド」という話が好きで何度か読み見なおしていた。 35歳を人生のターニング・ポイントとする話。 昨日、私もその歳になり、もう一度読みたくなって読んだという訳です。 人は確実に老いていく。さあ、残り半分がんばろう。(01.02.11)
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初出は1985年10月の単行本。「はじめに」によれば筆者はこの作品を「正確な意味での小説ではない」としている。他人から聞いた実話を文章化したというのだ。それを<スケッチ>と呼んでいる。しかし、これが方便であることは明らかだ。たとえ自分の実人生を書いたとしても、ストーリーのある文...
初出は1985年10月の単行本。「はじめに」によれば筆者はこの作品を「正確な意味での小説ではない」としている。他人から聞いた実話を文章化したというのだ。それを<スケッチ>と呼んでいる。しかし、これが方便であることは明らかだ。たとえ自分の実人生を書いたとしても、ストーリーのある文章にまとめた時点で小説であある。まして本書の短編小説群は完全な小説の形をとっており、内容も小説以外の何ものでもない。 筆者がかような前置きを置いたのは、描かれている人間模様を読者にリアルに感じさせるための仕掛けである。回転木馬は筆者に言わせれば人生のあり方そのものらしい。人は自分の人生を持っているが、それはメリー・ゴーランドを走る木馬そのもの。決まった経路を同じ速度で回り続けるだけ、決して装置の外に出ることはないのだ。それなのに人間はあたかも誰かと競争をしているかのように毎日を送る。これが書名の由来なのである。他人の人生を知ることは自分が生きられない別の人生を知ることだというのだ。そこにあるのは断絶である。これは筆者のその後の作品に一貫して流れる考え方のようだ。 小説は、筆者によれば<スケッチ>は8編あり、中では「プールサイド」に注目した。「プールサイド」は35を迎えた男が人生の折り返しを意識して生き方を変えていくとないようだが、話題となる男は自分の人生そのものを2つに切り離し、別の人生を送ろうとしているのだ。新たな人生をやり直そうとしているともいえる。しかし、実際には当然ながらそれは不可能だし、どんなにシェイプアップしても体も心も確実に老いてゆく。そして他人はそれを傍観者としてみるしかない。そしてそれは自分の話でもある。そういう話になっているのだ。 私は村上春樹はやはり短編作家なのではないかと思っている。まだ読み込めていないからもしれないが、氏のドライな作風は短編にこそ相応しいと思うのである。
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