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ミヒャエル・コールハースの運命 の商品レビュー

3.8

5件のお客様レビュー

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2020/04/29

「ドイツ短編小説の最高傑作」とカバーにも書かれているように、とんでもなく面白い。旧仮名遣いにもかかわらず感情移入して読めるのは訳がよかったからだろうか。 コールハースの解釈によると、国の使命は国民の権利を護ること、それをしてくれない国には用はない。そして、個々人にとって最も大切な...

「ドイツ短編小説の最高傑作」とカバーにも書かれているように、とんでもなく面白い。旧仮名遣いにもかかわらず感情移入して読めるのは訳がよかったからだろうか。 コールハースの解釈によると、国の使命は国民の権利を護ること、それをしてくれない国には用はない。そして、個々人にとって最も大切なのも自分の権利を護ること。コールハースが回復しなければならなかったのは2頭の黒馬ではなくて権利を護るという崇高な人間の使命だったのだろう。だから、そのために全てのもの、家屋敷や自分の命すら犠牲になってもやむなしという結論に達する他はない。 これは復讐劇でもなければ正義感の話でもないのだ。

Posted byブクログ

2017/12/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読後の乾燥・印象が、ほぼ全て”あとがき”に含まれていたけれど、一応箇条書きにしてみます。 ・無茶苦茶に正義感が強い主人公。その割には理論的で慎重。その後の激変ぶりを強調する為か、正当化する為か?  ・作者自身の投影という面が強いとのことで、少し納得。 ・終始 ”脚本を読んでいる”ような感じ。著者の小説の中では最も客観的に描かれた作品との事なので、なるほどと。 ・それでも、登場人物たちの情感・煩悶などが伝わって来るのはさすが。 ・私憤から正義に転嫁し、暴虐の限りを尽くしておきながら、いつの間にか民衆から贖罪を免れるよう願われている。 ・そのタイミングで占い師?が魔術的な力を発揮、みごと主人公の望みを果すに至る。作者の願望・幻想?で作品化されている? ・主人公の絞首刑のシーンが1行に収まっている。ここまで来ると潔い。返ってあれこれと想像させられる。 ・旧仮名遣い、旧漢字で、改行無し、びっしり文字が詰め込まれているので、読書中に割込みが入ると ”どこまで読んだんだっけ?” で結構困る。しおり、役立たず。 ・文章を読むこと自体に結構神経を使ってしまうが、意外と小説的に面白かった。 ・普段は使っていない脳みそも使った感じ。ある意味新鮮な時間を過ごせたので、星1つプラス。

Posted byブクログ

2014/08/24

読んでいるとコールハースに感情移入したくなるはずが、なぜか入り込めなかった。 作者の常に冷静な視点からの描写ゆえか? 単に自分に合わなかっただけかもしれないけど。 端正な表現と旧字体がマッチしてて、すごく好感度は高いのだが…。

Posted byブクログ

2012/12/24

博労のコールハースが貴族から受けた不当な仕打ちに対して、正義感から復讐の鬼と化し、裁きを受けるまでの記録。 群盗を引き連れ、貴族の引き渡しを求めて町々を襲撃する前半と、訴訟・政治に巻き込まれコールハース本人より周囲の諸侯・貴族が混迷の渦中に巻き込まれていく後半部分とに大きく分か...

博労のコールハースが貴族から受けた不当な仕打ちに対して、正義感から復讐の鬼と化し、裁きを受けるまでの記録。 群盗を引き連れ、貴族の引き渡しを求めて町々を襲撃する前半と、訴訟・政治に巻き込まれコールハース本人より周囲の諸侯・貴族が混迷の渦中に巻き込まれていく後半部分とに大きく分かれる。 コールハースは全くの正気で、キリスト教的倫理ではなく己の信念を貫いて復讐を貫徹する。 郊外の博労が、ちょいと群盗を引き連れただけで、国の軍隊を撃退したり、町々を恐慌のどん底に陥れることができるのは、逆にこの時代の牧歌的な雰囲気が漂ってきて、何とも面白い。 後半は己のごくごく初期の要望を実現するための訴訟が主軸のはずが問題が飛び火して、当初の復讐を果たすだけでなくいつの間にやら選帝侯に対する復讐劇にすり替わってしまうのが何だか妙な展開。 物語の展開が二転三転して面白く読めることは間違いないのだが、そのあたりの流れの不自然さもあり★4つとする。

Posted byブクログ

2009/10/28

正義/悪行・慈愛/残虐性が、妥協点もなく一人の人物に並んで置かれている時、矛盾した人間像とかいってもいいのでしょうけど、それ以外に人間を描写する方法はないような気もします。や、わかんないけど。 岩波の旧字體好きの方にはおすすめです。

Posted byブクログ