蹴り損の棘もうけ 新装復刊 の商品レビュー
『神曲』煉獄編に登場する、天国の門が開くのをただ何をするでもなく待ち続ける怠け者ベラックヮの名を持つ男(解説によれば彼の性・ショアは人類最初のオナニスト・オナンの母から取られている)を中心に添えたベケット最初期の短編集。後の主要なテーマとなる「語ることそのものへの問い」はまだ見ら...
『神曲』煉獄編に登場する、天国の門が開くのをただ何をするでもなく待ち続ける怠け者ベラックヮの名を持つ男(解説によれば彼の性・ショアは人類最初のオナニスト・オナンの母から取られている)を中心に添えたベケット最初期の短編集。後の主要なテーマとなる「語ることそのものへの問い」はまだ見られず、本作では諧謔的引用や言葉遊び、性の悲哀といったものが師ジョイス直系の「いかにして語りうるか」な問いとして語られる。晦渋な表現が目につくものの、ベケットの作品が以後どのように簡素化され、切り詰められていくかを考えると灌漑深い。
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