過疎地で快適に暮らす。 の商品レビュー
この本の勘所は「過疎地」と「田舎」は異なるという点だ。田舎が農業・漁業共同体に代表される人的ネットワークが存在するのに対して、過疎地とはかつての入植→産業衰退の結果、人的ネットワークがなくなってしまった(人が住まなくなった)場所のことであり、田舎には田畑はあるが自然がない(管理さ...
この本の勘所は「過疎地」と「田舎」は異なるという点だ。田舎が農業・漁業共同体に代表される人的ネットワークが存在するのに対して、過疎地とはかつての入植→産業衰退の結果、人的ネットワークがなくなってしまった(人が住まなくなった)場所のことであり、田舎には田畑はあるが自然がない(管理された“自然”)のに対して、過疎地は人の手が加わらないためにむき出しの自然の力が勢いを盛り返している荒蕪地のことだ。私も移住するにあたっていろいろ条件を考えたが、著者の「過疎地暮らし11戒」には首肯できる部分が多い。のんびり優雅に過ごすために過疎地に住むのだから、時間をもてあまして自然と格闘するのに必死になったり、行政に積極的に参加しすぎて自己目的化させてしまうのはたしかによくない。ただ、移住にまつわるこういう本を読んでいるとイヤミの一つも言いたくなるのは事実。過疎地生活でどんなに不便でも星空や暗闇を愛でていられるのも、研究者だからでしょうに、と。リタイア後の移住には向くが、新規に仕事を得ることは難しく、税金や公共料金は割高。通勤時間がかかるのは自己選択だが、救急病院への子供の搬送に時間がかかるのは自己選択か?お金をかけるのを惜しむなら移住なんて考えなさんな、ということでもある。
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