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異邦の記憶 の商品レビュー

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2013/08/24

文学から政治までを社会言語学的に分析する。特に「私」と「私たち」という言葉を中心に、国籍の定まらない者、差別を受けてきた者の視点から、「国家」という存在がどれだけ脆弱であるかを示している。 文学論においては、小説における「私」の身体的感覚を中心に見てゆき、アイデンティティに対する...

文学から政治までを社会言語学的に分析する。特に「私」と「私たち」という言葉を中心に、国籍の定まらない者、差別を受けてきた者の視点から、「国家」という存在がどれだけ脆弱であるかを示している。 文学論においては、小説における「私」の身体的感覚を中心に見てゆき、アイデンティティに対する答えを実体ではなく流れであり動きであると位置づけた。そして政治論において、植民地とナショナリズムの思想から、「私たち」とは他者の排除によって成立するものであり、その意味で流動的で脆弱であると結論づけている。 前作『「国語」という思想』を読んだうえで読めばより理解が深まったかもしれない。言葉遣いが非常に繊細なのが個人的には好き。Ⅰ文学者たちの終わりなき彷徨、Ⅱ人間にとって自由は「重荷」か?Ⅲ越境という思想を辿りなおす の3つに分かれていたが、特にⅠが興味深い。記憶の一番奥底に秘められている感覚は匂いの感覚であるかもしれない。という一文を読み、次はプルーストを読破することを決意。。この一文に関しては、知覚のレベルにおいてさえ人類普遍のものとはいえない社会的パターンがあるのだから、思考と行動のレベルにおいてはなおのことであり、それを共有している集団が民族ではないだろうかという話に続く。

Posted byブクログ