夢判断 の商品レビュー
奇妙な味を楽しめる傑…
奇妙な味を楽しめる傑作短編集。著者の短編集でも一二を争う傑作だと思う。
文庫OFF
ベター・ハーフ、自殺…
ベター・ハーフ、自殺クラブなど、著者の技が光るオススメ短編集です。
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阿刀田高著『夢判断(新潮文庫)』(新潮社) 1983.1発行 2020.5.11読了 相変わらずの切れ味の鋭さで読者を楽しませてくれる。解説で中島河太郎氏が、三橋一夫氏との比較で述べているとおり、本書で筆者が取り扱っているのは、「われわれの日常、身辺に起こり得る無気味なもの」...
阿刀田高著『夢判断(新潮文庫)』(新潮社) 1983.1発行 2020.5.11読了 相変わらずの切れ味の鋭さで読者を楽しませてくれる。解説で中島河太郎氏が、三橋一夫氏との比較で述べているとおり、本書で筆者が取り扱っているのは、「われわれの日常、身辺に起こり得る無気味なもの」(p343)である。片や三橋一夫氏の作品は、「在来の幻想小説より一歩抜きん出て、奇妙な世界との接触が現実的に捉えられている」が、「兎や鼠などと交流をもつ男や、姿見にはいりこんで別の人生を経験する青年が現われるなど」「作者と共に幻想世界に跳びこめないものは、戸惑って立ちどまってしまいがち」なものであった。阿刀田高の作品はよく「奇妙な味」と称せられるが、端的に言えば、中島河太郎氏が言うとおり「白昼の戦慄」を語る作家との表現が一番しっくりくる。 例えば「海が呼ぶ」などは謎解きに焦点を置いた作品と言えるが、「自殺クラブ」などは薄ら寒い恐怖を覚える。「演技」はやわらかい導入部分から始まるが、最後の答え合わせで全てがピラミッド状に構成されていたことが判明し、著者の老練な文章力・構成力がうかがわれる。 中でも私が一段面白く感じたのは「紅白梅の女」である。おそらくは、小林太市郎著「光琳と乾山」からヒントを得て膨らませた短編と思われるが、男女の恋の駆け引きの物語のように見せかけながら、最後に「紅白梅図屏風」をモチーフに、小林太市郎氏の解釈を忍ばせて、不思議な余韻をもたらしてくれる。この手の筋運びもさすが阿刀田高、素晴らしい手腕である。 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001603511
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
1977~1979年に発表された作品を14編収録した作品集。単行本は1980年刊行。 阿刀田高氏はショート・ショートの名手ですが、ショート・ショートというにはちょっと長めの短編集です。 それぞれの短編がとても良い出来で、間延びしたショート・ショートということには全くなっておらず、それぞれの作品が短編小説でなくては表現出来ない絶妙な内容になっています。 特に心に残ったのは、野球がモチーフの『柳の下のジンクス』、曰わく付き物件がモチーフの『干魚と漏電』、万馬券がモチーフの『勝ち馬情報』です。 以下は簡単に各作品の感想↓ あの人を殺して 千円札1枚が同封された「あの人を殺してください。」とだけ書かれた手紙が、毎週木曜日に届く、という不条理ミステリー。気の利いたオチがあるわけでもなく、不条理な結末を迎えますが、オチの利いた作品よりも深い印象を残してくれました。 柳の下のジンクス 代打要員として1軍ベンチ入りをしているプロ野球選手が、あるジンクスを信じ始めてから代打成功率7割になるという物語。ピンチ・ヒッターの興奮と、ジンクスが持つ神秘に、読んでいるこちら側も胸ときめきました。名作だと思います。 銀座の恋の物語 銀座のホステスと、客である係長クラスのサラリーマンとの、恋と金の駆け引きの物語。謎を残した結末が、妙にしんみりとした気分にさせられます。 蜜の匂い 結婚詐欺の物語。男と女どちらが上手か、と読者に想像させます。結局、謎めいたまま終わるブラックなオチが印象的です。 ベター・ハーフ ※ネタバレ※ 最後の一行で全てがひっくり返される叙述トリックが見事な一編。完全にだまされました。歌野晶午氏の代表的作品と同じ叙述トリックですが、こちらのほうがだいぶ早いです。 殺意 妻の浮気を疑い、浮気相手に殺意を抱く男の物語。オチは、ちょっと強引などんでん返し。 海が呼ぶ 怪談+ミステリー。ここまで正統派なスリラーは、阿刀田高作品としては珍しいのではないでしょうか。 凶事 阿刀田高作品らしいブラック・ユーモア感がある一編。ただ、阿刀田高作品によくある夫婦関係ではなく、姉妹の関係にしたのは、ちょっと珍しいかもしれません。 自殺クラブ これも銀座のクラブが舞台ですが、男と女の物語ではなく、自殺がテーマの物語。ブラックというより、ダークで陰鬱な一編です。 紅白梅の女 男女の関係を描いた情緒ある一編。ブラックな笑いもないという阿刀田高作品には珍しい雰囲気。 演技 俳優を目指す学生が、殺されるフリをしてくれないか、という変わったアルバイトを依頼されるサスペンスフルな一編。恐ろしいラストが印象的です。 夢判断 予知夢を描いた一編。ずっと恐ろしさで押し通していたのに、最後の最後でブラック・ユーモア。悪いオチではないですが、ちょっと拍子抜けしました。 干魚と漏電 こんなタイトルですが、曰わく付き物件に引っ越してきた老女が、電気料金に対する違和感から、曰わくの元凶にたどり着く、という怪談風味のミステリーになっています。タイトルと冒頭のエピソードから、なんとなくオチが予想はされますが、期待を裏切らないオチだとも言えます。これも名作ではないでしょうか。 勝ち馬情報 競馬で大きな勝ちが続いている老婆がいる、という情報を手に入れたフリーの雑誌記者の物語。このオチは全く予想出来ず。予想の斜め上を行くブラックなオチで、それまではブラックな雰囲気が無いのに、ラスト2ページで急にイヤーな気分にさせられるのが、実に上手いと言える作品です。これも名作ではないでしょうか。
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気の効いたショート。ユーモア、エロス、都市怪談といった大人のスパイス入り。 実は『干魚と漏電』を小学校3年の時に担任の先生から口述で聞き、実に16年後に始めて本物を読んだのだが、ほぼ丸切り記憶と合っていた。プロットがシンプルかつ鮮明だという証拠だろう。 大体オチが見えるか、全く謎...
気の効いたショート。ユーモア、エロス、都市怪談といった大人のスパイス入り。 実は『干魚と漏電』を小学校3年の時に担任の先生から口述で聞き、実に16年後に始めて本物を読んだのだが、ほぼ丸切り記憶と合っていた。プロットがシンプルかつ鮮明だという証拠だろう。 大体オチが見えるか、全く謎なオチになるのが難点だが、『蜜の匂い』『ベター・ハーフ』『殺意』『干魚と漏電』は特に楽しめた。
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不思議で怖い短編で、ひやっとしつつ軽めに読めますが、 何より時代臭が強くて、そこが気になりました。 人間の心理が密に書いてあるから面白い反面、 当時といまとのちょっとした感覚の違いも目だつのかな? お話も面白いけど、そんな、なつかし感覚が昭和好きな自分にはツボでした。
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ブラックユーモアに所属していいと思うんですがどうなんでしょ?東野さんのは苦笑が尽きないって感じだけど、この人のは淡々と読むという。代表作は…えーと、思い込みが激しい人って大変ですね?(!)
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中学校のフリマで拾ってきた本なのですが、意外に面白かった。短編集で読みやすい。多分これで不思議テイストにハマっていったんだ。
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