台所のマリアさま の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
イギリスで、建築家の両親と3つ下の妹ジャネットと暮らすグレゴリー。小さな頃から母を助けるお手伝いさんと暮らして来たが、たびたび変わるため落ち着かない。それが、新しく来たマルタとは気が合い、懐いている。マルタは心に孤独を抱えている。グレゴリーもそうなのだ。そして、マルタが、自分の居場所であるこの台所には何かが足りない、と話した時、それをマルタに与えるのは自分しかいない、と思う。 そこからのグレゴリーの行動力や変化は両親やジャネットを驚かせ、グレゴリー自身もびっくりするほどだった。グレゴリーとジャネットの会話は、本当に楽しく、仲の良さが微笑ましい。 台所のマリアさまをもらったマルタの喜びはいかほどか、とこちらも嬉しくなる。素晴らしい作品で、何度でも読みたくなる。
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故郷を追われ、異国で孤独な生活を送るウクライナ人のマルタに、いい場所(心のよりどころ)として、台所のマリア様を手作りしてあげたいと思ったグレゴリー。 いつもは内向的で、めったに人と話さないのに、材料を手にいれるために様々なお店に出掛けて行く。高級宝飾店に行って全く場違いなのとお金...
故郷を追われ、異国で孤独な生活を送るウクライナ人のマルタに、いい場所(心のよりどころ)として、台所のマリア様を手作りしてあげたいと思ったグレゴリー。 いつもは内向的で、めったに人と話さないのに、材料を手にいれるために様々なお店に出掛けて行く。高級宝飾店に行って全く場違いなのとお金が全然足りないのとですごすごと引き上げたり、帽子屋さんで事情を説明して端切れをもらったり、お菓子屋さんで自分の腕時計をカタにお菓子を買おうとしたり(包み紙が必要なのだ)、とにかくマリア様を作ってあげたい一心で動くのだ。 そういう経験の中で、人に協力してもらうことを覚えていく…特に妹ジャネットは、いつもお兄ちゃんに邪険にされているのに構わずどこでもついていく。そして、お兄ちゃんにいろんなアイデアを出して事の成り行きは良い方へと進んでいく。ついにマリア様が出来上がって両親に見せる時「全部自分で考えたのよ。どんなに細かいところもよ」と誇らしげに言う。そして「あんたの絵のほうが、博物館にあるのよりずっといいと思うわ」とも。そして、今までだれも入れなかったグレゴリーの部屋にいつでも自由に出入りできるようになっている。 もちろん、マリア様を贈られたマルタの感激はすごかった。 人を喜ばせるために動くことで自分もまた喜びを受けとることができる。これを意図せずやれることがいいんだよね。
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心があたたかくなる話だった。思いやりからの行動はこんなにも力強い奇跡を呼ぶのか。知らない世界に飛びこんで、ハラハラドキドキ…。出来上がった聖母マリア様と、知らず知らずのうちに自分の殻を破って成長していた少年に、涙する。挿絵もとても素敵。とても良い本を読んだ。
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長くはない児童書の中に,失われた国への悲しみや祈り,大切な人への思いやりや兄弟家族の愛情,工夫して物を創り上げることなどたくさんの宝物のような感情が詰まっていて,絵の美しさとともにとても心にしみる物語だった.
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読み終わって、後書きを読んだ。著者は、植民地下のインド育ちと知った。そうか、インドの台所には、ヒンディーの神様の祭壇があるもんなー。 と、違うところにリンクしてしまう私。 古い本だけど、訴えかけるものがある。 幼少期に、人恋しいときに、そこにいてくれる存在が必要…。ガンガン共働き...
読み終わって、後書きを読んだ。著者は、植民地下のインド育ちと知った。そうか、インドの台所には、ヒンディーの神様の祭壇があるもんなー。 と、違うところにリンクしてしまう私。 古い本だけど、訴えかけるものがある。 幼少期に、人恋しいときに、そこにいてくれる存在が必要…。ガンガン共働きを推し進める日本は、どうなっていくのかしら。
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繊細な少年が、新しいお手伝いさんと出会い、親しみの気持ちから、頑なだった心に変化が起こり成長していく。設定や、経過が細かく表現されていて、一つ一つ丁寧に読みたくなる。心が温まる物語です。身近なものに感謝したいクリスマス時期にぴったり。協力してくれたお店の人とか、周りの大人も素敵な...
繊細な少年が、新しいお手伝いさんと出会い、親しみの気持ちから、頑なだった心に変化が起こり成長していく。設定や、経過が細かく表現されていて、一つ一つ丁寧に読みたくなる。心が温まる物語です。身近なものに感謝したいクリスマス時期にぴったり。協力してくれたお店の人とか、周りの大人も素敵な人、そうでない人がハッキリと書かれている所も良いです。 小学校4年生くらいから大人まで。
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両親は仕事で忙しく、構ってもらえないグレゴリーは9才にして周囲の人を拒み、部屋には誰も入れないといった閉鎖的な性格に。 ところが何人目かに来たお手伝いさん‐ウクライナ人のマルタ‐にだけは心を開きます。そして《正しい場所》がないと嘆くマルタのためにある贈り物をしたいと願います。贈り...
両親は仕事で忙しく、構ってもらえないグレゴリーは9才にして周囲の人を拒み、部屋には誰も入れないといった閉鎖的な性格に。 ところが何人目かに来たお手伝いさん‐ウクライナ人のマルタ‐にだけは心を開きます。そして《正しい場所》がないと嘆くマルタのためにある贈り物をしたいと願います。贈り物を探し、そして作っていくうちに、閉ざされたグレゴリーのこころが徐々に開いていく・・・・・・その過程に引き付けられました。 マルタの辛い過去にグレゴリーが心を寄せていくところもとてもいい。
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1976年初版。古い本ですが、内容は決して古びない良い本だと思います。一人の少年の心の内面が丁寧に描かれていて最後にはとても胸が熱くなりました。その子がいなくなっても誰にも気が付かれないような、ひっそり生きている子どもに焦点をあて、そんな子の中にもドラマがいっぱいあること、(特に...
1976年初版。古い本ですが、内容は決して古びない良い本だと思います。一人の少年の心の内面が丁寧に描かれていて最後にはとても胸が熱くなりました。その子がいなくなっても誰にも気が付かれないような、ひっそり生きている子どもに焦点をあて、そんな子の中にもドラマがいっぱいあること、(特に大人が)外から見るだけではわからないけれど、その子の中ではたくさんの悲しみや寂しさ、悔しさ、喜びが沸き起ということが書かれていてこれぞ児童文学と思いました。始まりはお手伝いのマルタが不幸そうにしていること。内向的な少年グレゴリーは孤独なマルタに同情し、何かしてあげたいと思い、マリア様を作ることにします。そのことを通じて今までにしたことのない経験を(自発的に)し、心が開かれ、成長していきます。私はグレゴリーがマリア様を作る過程がとても好きです。布がうまく合わなかったりした時のがっかり、ひらめいた時の一気に作業が進む集中力、出来上がっていく喜びと楽しさ、そして何か(船の絵)を手放す悲しみと決意。物を(人のために)作るときの心模様が手に取るように伝わってきました。お母さんが泣くところ、マルタが祖国の言葉で祈るところ、グレゴリーの手を紳士の手を握るように感謝の気持ちを込めて握るところ、どの場面も胸が熱くなる素晴らしい結末です。キャンディー屋さんも布屋さんも大人がそっと見守ってくれるところも素晴らしい。 表紙も活字の組み方も地味で、内容も派手な出来事のない本ですが、とても大切なことが詰まっている一冊です。もっと今の子に手に取りやすく版を変えてくれたらという願いを込めて星4つ。
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成績優秀で、周囲に壁を作る少年グレゴリーが 大切な人(家政婦マルタ)のため勇気を振り絞って 行動を起こし、彼女のためにイコンを作る話。 ―と言ってしまえば簡単ですが、 淡々と温かい物語で涙がこぼれます。
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