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夜明けの縁をさ迷う人々 の商品レビュー

3.5

81件のお客様レビュー

  1. 5つ

    11

  2. 4つ

    22

  3. 3つ

    36

  4. 2つ

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2009/10/04

短編9話。「曲芸と野球」3塁側のファールグラウンドに居る君。・「教授宅の留守番」留守宅に届き、溢れる物々に隠されたものは。・「イービーのかなわぬ望み」エレベーターボーイのお話。・「お探しの物件」家が借り手を選びます。・「涙売り」私の涙で、美しい音楽を奏でてください。・「パラソルチ...

短編9話。「曲芸と野球」3塁側のファールグラウンドに居る君。・「教授宅の留守番」留守宅に届き、溢れる物々に隠されたものは。・「イービーのかなわぬ望み」エレベーターボーイのお話。・「お探しの物件」家が借り手を選びます。・「涙売り」私の涙で、美しい音楽を奏でてください。・「パラソルチョコレート」自分の裏側にいる人。・「ラ・ヴェール嬢」老女の足の裏をマッサージするときに聞く話。・「銀山の狩猟小屋」サンバカツギは赤ちゃんの泣き声。・「再試合」甲子園、レフトスタンドで応援しています。・五感をフルに活かした物語。ザ・小川洋子という感じです。でも長編の方が好きかな?

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2009/10/07

小川洋子の短編集には、ラストでたいてい突き落とされる。これもその一つ。それはある種の快感を伴う。たいていの場合、想定外の結末を迎えるからであろう。なんてことない言葉も、小川洋子が盛り付けると大層色気付いたものになる。行間から漂ってくるのだ。背骨を指先で撫でられたような感覚と、たま...

小川洋子の短編集には、ラストでたいてい突き落とされる。これもその一つ。それはある種の快感を伴う。たいていの場合、想定外の結末を迎えるからであろう。なんてことない言葉も、小川洋子が盛り付けると大層色気付いたものになる。行間から漂ってくるのだ。背骨を指先で撫でられたような感覚と、たまらなく官能的な言葉を味わえる1冊です。個人的には、イービーのかなわぬ望み、涙売り、パラソルチョコレートが特にそそられました。ごちそうさまでした。

Posted byブクログ

2009/10/07

自分にとって小川洋子は決して嫌いな作家ではない。けれども単純に好きだとも言えないもどかしさもある。小川洋子を読書するということはどこか「戒め」という言葉の持つニュアンスを伴う行為であるような気がするのである。 小川洋子の文章を読んでしばしば感じるのは「異質」というコトである。...

自分にとって小川洋子は決して嫌いな作家ではない。けれども単純に好きだとも言えないもどかしさもある。小川洋子を読書するということはどこか「戒め」という言葉の持つニュアンスを伴う行為であるような気がするのである。 小川洋子の文章を読んでしばしば感じるのは「異質」というコトである。例えばそれは、ずばっと切り取られた肉片が血を滴らせたまま食卓の上に差し出されているような類の異質さである。それはひょっとしたら小川洋子の投げ込む性的なイコンのせいなのかといぶかしく思ったりもするのだが、自分にとってのその異質さの根源は文脈からの極端な逸脱によって生じるものなのかも知れない、と「夜明けの縁をさ迷う人々」を読んで考え直した。 決して小説に物語性を求める者ではないと自分自身は自覚しているつもりではあるけれど、恐らく、無意識に求めているものが一つあって、それは因果律ということなのだ。例えば保坂和志の小説(と彼が呼ぶもの)を読んで楽しんでいる対象は明らかにそれだし、川上弘美の文章を読んで感じる諧謔性はその因果律のずれなのだろうと思う。それに対して小川洋子の小説にあるのは、言ってみれば徹底した因果律の排除である。 人名や、時に性別を隠すかのように書き進めることが多いのは彼女の特徴の一つであると思うが、次々と差し出される周辺環境の変化に立ちくらみのような感覚に襲われることが時としてある。その変化は柔らかな文体とは裏腹に、力強い一つのイコンの投入とその余韻という組み合わせの繰り返しで生成される。まるで聖堂の鐘が四方八方から不意に鳴り出し続けるようなイメージである。 それを不意打ちと感じてしまう自分の感性にギリギリとする。そんなものはさらりとかわして読み進めるべきではないのかと思うのだ。それ故に、小川洋子を読書することはやはり自分にとって一つの戒めなのだと思うのである。

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2009/10/04

河原で草野球をする少年たちの片隅で毎日4段に椅子を重ねて練習をする曲芸士。彼女はしょっちゅう怪我をしては少年の父(整形外科の医者)のもとを訪れる。『曲芸と野球』 全9編の短編からなる本です。でも表題『夜明けの縁を〜』という題名の短編はない。あれ?と思っていたら・・これは全ての短...

河原で草野球をする少年たちの片隅で毎日4段に椅子を重ねて練習をする曲芸士。彼女はしょっちゅう怪我をしては少年の父(整形外科の医者)のもとを訪れる。『曲芸と野球』 全9編の短編からなる本です。でも表題『夜明けの縁を〜』という題名の短編はない。あれ?と思っていたら・・これは全ての短編に共通するテーマなのでした・・。どのお話も不気味で、え?これは『ミーナの行進』を書いた小川さん?と思わせる摩訶不思議な世界。その短い物語の中にさまざまな「教え」のようなものがちりばめられている。ちょっと怖くて孤独な人間の物語。私は『パラソルチョコレート』が好きでした。

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2010/04/28

小川洋子さん本来のブラックユーモア満載の一冊。短篇集で、ひとつひとつの作品がミステリアスである。「涙売り」には泣けたし「ラ・ヴェール嬢」はものすごく淫靡だ。闇の部分をばっさりと切り取り出す筆致が冴え渡っている。『・・・だって丸い部屋で眠るときの自分は、円の直径になるのよ。円は丸く...

小川洋子さん本来のブラックユーモア満載の一冊。短篇集で、ひとつひとつの作品がミステリアスである。「涙売り」には泣けたし「ラ・ヴェール嬢」はものすごく淫靡だ。闇の部分をばっさりと切り取り出す筆致が冴え渡っている。『・・・だって丸い部屋で眠るときの自分は、円の直径になるのよ。円は丸く閉じて、どこにも継ぎ目はないし、始まりも終わりもない。完全な形をしている。なのにその円周がいくらになるか測ろうとしても、答えは絶対に出てこない。・・・』わたしはあんなに売れた「博士の愛した数式」は異色作だと思っている。

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2009/10/04

帯に書いてあった<もし彼が零れ落ちそうになったら、私が受け止めてあげよう>というのと、小川洋子に惹かれて購入。しかし、内容は想像したものと違い、不思議な世界を描いた短編集。僕の中で小川洋子の作品は「博士の愛した数式」以後なので、心温まるほのぼのとした世界観を想像していただけに戸惑...

帯に書いてあった<もし彼が零れ落ちそうになったら、私が受け止めてあげよう>というのと、小川洋子に惹かれて購入。しかし、内容は想像したものと違い、不思議な世界を描いた短編集。僕の中で小川洋子の作品は「博士の愛した数式」以後なので、心温まるほのぼのとした世界観を想像していただけに戸惑う。

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2009/10/04

奇妙な短編集です。奇妙でちょっと残酷でちょっと気味悪い。私、この作家は新刊が出たら必ず買ってしまうくらい好きなのですが・・・渉くんはどうでしょうか。変な話ばっかりですが。同著者の「博士の愛した数式」とはぜんぜんちがった感じですが、これぞ小川、という作品です(千綿)

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2009/10/04

小川洋子さんの短編集。 最近は、とても暖かい話が多かったように思いますが、今回は不可思議で宵の口のような話集でした。 これぞ小川さん!!的な少しグロテスクでいて奇妙に甘い感じがする作品ばかりです。 教授宅の留守番とイービーのかなわぬ望みが特に好き。

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2009/10/04

どこまでも繊細で残酷で、淫靡。たゆたう時間にとじこめられたひとたち。想いが強すぎると、ああなってしまうのか。

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2009/10/04

短編集ですが、どれか1作を表題にしたわけではなく、すべてに共通するものとして付けられたらしいタイトルが秀逸でした。『ラ・ヴェール嬢』の静謐な淫靡さが好みです。後、『パラソルチョコレート』で、ふと自分の裏側にはどんな人がいるのだろう? と色々想像してしまいました(苦笑)

Posted byブクログ