夜明けの縁をさ迷う人々 の商品レビュー
こういう本を書くから、小川洋子さんは魅力的なんだと思う。奇麗で高潔な文章で、人間の人間らしい部分を暴いている。それは時に傲慢だったり醜悪だったり、滑稽だったり美徳だったりするけれど、この矛盾さを孕んでいるのが人間だなと思ってしまう。そしてそれを一切の容赦なく記せる、鬼才だと思いま...
こういう本を書くから、小川洋子さんは魅力的なんだと思う。奇麗で高潔な文章で、人間の人間らしい部分を暴いている。それは時に傲慢だったり醜悪だったり、滑稽だったり美徳だったりするけれど、この矛盾さを孕んでいるのが人間だなと思ってしまう。そしてそれを一切の容赦なく記せる、鬼才だと思いますね。
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淡々とした口振りが作中で起きる不思議なことを不思議と思わせない短編集。離れているようで近い感覚を感じる。読みやすいが軽くはない。
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10年04月。 私とあなたの間の見えない何か。越えていくあなたと追えないこちらがわの私。そんな感じ。 繊細な小川女史の表現が浮き彫りにしていく、『さ迷う人々』・揺らぐ『縁』。 裏側ではどんな人が生きているのか…あたしも会いたいような怖いような。 ぞわぞわするけど好きです、小川作品...
10年04月。 私とあなたの間の見えない何か。越えていくあなたと追えないこちらがわの私。そんな感じ。 繊細な小川女史の表現が浮き彫りにしていく、『さ迷う人々』・揺らぐ『縁』。 裏側ではどんな人が生きているのか…あたしも会いたいような怖いような。 ぞわぞわするけど好きです、小川作品。
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(2008.06.13読了) 2006年から2007年に書かれた短編9編が収められています。 「曲芸と野球」「教授宅の留守番」「イービーのかなわぬ望み」「お探しの物件」「涙売り」「パラソルチョコレート」「ラ・ヴェール嬢」「銀山の狩猟小屋」「再試合」です。 本の題名と同じ題名の短編...
(2008.06.13読了) 2006年から2007年に書かれた短編9編が収められています。 「曲芸と野球」「教授宅の留守番」「イービーのかなわぬ望み」「お探しの物件」「涙売り」「パラソルチョコレート」「ラ・ヴェール嬢」「銀山の狩猟小屋」「再試合」です。 本の題名と同じ題名の短編はありません。各短編の扉には、磯良一さんの絵が添えられています。 ●曲芸と野球 「僕が流し打ちの腕を上げたのは、三塁側ファールグランドで、いつも逆立ちの練習をしていた曲芸師のおかげだった。」(7頁) 僕と曲芸師の交流のお話です。 ●教授宅の留守番 国立大学の食堂の賄い婦をしているD子さんの物語です。 D子さんの住んでいたアパートが火事になり、住むところに困っていたのだが、在外研究のためパリに出発する教授が留守宅を無料で提供してくれた。 同じ大学で用務係をしている私が、D子さんの見舞いのために訪ねスパゲッティーをご馳走になった。 お暇しようとしていたとき、電話が鳴り、教授の書いた本が賞を受賞したことが伝えられた。それから5分も経たないうちに、次々と呼び鈴が鳴り、祝電、お祝いの花、ケーキなどが届けられ、足の踏み場もない状態になってくる。それでもまだ次々と届けられる。 ケーキを食べているときにD子さんが「とっても柔らかくて気持ちいい。教授の睾丸みたい」と言った、辺りから話が怪しくなってくる。 ●イービーのかなわぬ望み イービーはエレベーターボーイだった。(52頁) 生涯をエレベーターの中で暮らそうとした人の話です。 ●再試合 私の通う高校の野球部が県大会を勝ち抜き、全国高校野球選手権大会へ出場することになった。76年ぶりの快挙だった。 前評判を覆して私の高校は勝ち進んだ。決勝戦は、一対一で引き分け再試合になる。 再試合も0対0で引き分け、次の試合も次の試合も、また次の試合も、0対0で決着がつかない。 普通の話を読んでいるつもりが、いつの間にかとんでもない世界に迷い込んでしまう。 (2008年6月18日・記)
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夜中に水の溜まった甕を覗き込むような底の見えない感覚。 全体的に一途に思いすぎて常識を通り越してしまった人たち。 素直、あるいは純粋なのかもしれないけど、それは決して目指す場所ではない。その人(モノ)だけしか見えていない感じが怖い、と思う。 この世界においては私の方が異端なのだ...
夜中に水の溜まった甕を覗き込むような底の見えない感覚。 全体的に一途に思いすぎて常識を通り越してしまった人たち。 素直、あるいは純粋なのかもしれないけど、それは決して目指す場所ではない。その人(モノ)だけしか見えていない感じが怖い、と思う。 この世界においては私の方が異端なのだろう。
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やっぱりこの人は、こういった怪しげな世界を書いている方が好きだなぁ。最近のはあまり毒気がなくなってしまった気がする。いっそホテルアイリス級のどーんとした物が読みたい。
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小川洋子という人の書く本は、いつも自分の心の奥底を覗き込まれているようで、たまらない思いがするものが多い。 この作品は、その究極をいくもののような気がする。 どこかに自分の囲ったワールドを持っていて、それが世間と相容れなくてもがく人々。 もがく、というのは適当ではないかもしれない...
小川洋子という人の書く本は、いつも自分の心の奥底を覗き込まれているようで、たまらない思いがするものが多い。 この作品は、その究極をいくもののような気がする。 どこかに自分の囲ったワールドを持っていて、それが世間と相容れなくてもがく人々。 もがく、というのは適当ではないかもしれない。 人と違う次元を過ごしているので、世間とシンクロできなくてもどかしく思う感じか・・・。 それは、どこか私自身に通じるところがある気もして、すこし辛かった。 「変人」というひとくくりでは表せない個性派ぞろい。 時々あっちの世界に行ってしまいそうな感覚もあり、怖くもなった。
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2009.08.23. こりずに再読。やっぱり好き。1番好きなのは、やっぱり「涙売り」。これって、映像化とかしてしまったら非常にグロテスクで気持ち悪い話かもしれないんだけど、好きなんだ。係ったら危なそうな女の子なんだけど、どうしようもなく惹かれてしまう。「パラソルチョコレート」ほ...
2009.08.23. こりずに再読。やっぱり好き。1番好きなのは、やっぱり「涙売り」。これって、映像化とかしてしまったら非常にグロテスクで気持ち悪い話かもしれないんだけど、好きなんだ。係ったら危なそうな女の子なんだけど、どうしようもなく惹かれてしまう。「パラソルチョコレート」ほのぼのしてて、いいですね。 2008.06.20. 再読。★5つ。 2007.11.25. 好き。私の中にある小川さんのイメージを静かにぎゅっと集めた短編集。どれもほんとにいいんだけど、特に「涙売り」は秀逸。涙が楽器にとても良い効果がある、その涙を売って放浪していた女性が主人公なんだけど、ひとりの男性に出会って、もうどうしようもなくなるのね(こう書くとすごく陳腐だけどもっと雰囲気とかすごいの)。体の関節を楽器にしている彼に、彼女は涙をすり込んでいく。エロティックな空気が漂う中、ラストは切ないを通り越して退廃的な感じがする。夜明けの縁、それは死の影が1番色濃い場所なんじゃないだろうか。★5つ
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おおおおお……。 虚構と現実の狭間、明けることのない夜の縁を彷徨い歩くような、まさにタイトル通りの本。 虚無のような、喪失のような、読んでいると自分の中のなにかが、さりさりと削り取られていくような気がする。 この人の本を読んでいる時の心はなんだか修行僧のような感じだ。 読み終わっ...
おおおおお……。 虚構と現実の狭間、明けることのない夜の縁を彷徨い歩くような、まさにタイトル通りの本。 虚無のような、喪失のような、読んでいると自分の中のなにかが、さりさりと削り取られていくような気がする。 この人の本を読んでいる時の心はなんだか修行僧のような感じだ。 読み終わったあとにため息。すごい本だ。 090710
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記憶・思い出の中にかすかに浮かぶ 景色、あるいは原色の夢のような 不思議な物語九編を収めた一冊。 夢の中の、変だと思うけど 納得してしまうような情景を 読んでいる感じです。 浮遊感というか…。 でもどうしてかぐっと入り込む事が 出来なかったので、ランクは低めです;
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