道具屋殺人事件 の商品レビュー
中篇の長さでありながら、非常に物語が複雑に入り組んで構成されていて驚く。 いくつかの話が平行して進んでいて、兄弟子の策に陥る主人公の亮子の夫、福の助、その亮子が遭遇する問題、そしてそれぞれの事件が、落語に絡めて構成されている。 謎解きも、師匠の馬春がまず真相を見抜き、言葉が不自由...
中篇の長さでありながら、非常に物語が複雑に入り組んで構成されていて驚く。 いくつかの話が平行して進んでいて、兄弟子の策に陥る主人公の亮子の夫、福の助、その亮子が遭遇する問題、そしてそれぞれの事件が、落語に絡めて構成されている。 謎解きも、師匠の馬春がまず真相を見抜き、言葉が不自由な師匠の言いたいことを福の助が気づき、それを基にした落語を演じ、犯人(というか問題の当人)がしゅんとなり、その後に亮子が事件の顛末を解決してくれる、という書いてて自分でも分からなくなるくらい。 さらに、ところどころに上手に落語の解説が挟まれているので、初心者でも楽しめる。 様々な伏線がしっかりと生き、謎解きが多少強引に感じることもあるが、十分に納得できる真相が明かされるので、最後まで楽しむことができた。
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落語ミステリです。 表題の「道具屋殺人事件」の他、「らくだのサゲ」、「勘定板の亀吉」の3編から成っております。 「らくだのサゲ」が秀逸!!!!! 福の助さんの高座、素で楽しませていただきました。 落語知識の勉強にもなります。面白かった!!!!!
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落語に関わる小説は幾つかあります。北村薫の“円紫シリーズ”を筆頭に“笑酔亭梅寿シリーズ”“間宮緑のシリーズ”、映画化された「しゃべれどもしゃべれども」や「落語娘」など…。しかし、中でもこの“神田紅梅亭寄席物帳シリーズ”は、最も噺家に近い世界を描いています。出てくる名人の名前は20...
落語に関わる小説は幾つかあります。北村薫の“円紫シリーズ”を筆頭に“笑酔亭梅寿シリーズ”“間宮緑のシリーズ”、映画化された「しゃべれどもしゃべれども」や「落語娘」など…。しかし、中でもこの“神田紅梅亭寄席物帳シリーズ”は、最も噺家に近い世界を描いています。出てくる名人の名前は20を下らず、出てくるネタの数は100近くになります。所詮半可通の私ではありますが、この本で初めて知った事も幾つかあります。ヘタな落語のガイドブックよりためになるかもしれません。この本を読むと志ん生、志ん朝、小さん、談志、そして米朝、枝雀など古今東西の名人のDVDやCDに手が伸びてしまいます。
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初めて読んだ落語ミステリー。 楽しかった。 TVドラマ『タイガー&ドラゴン』をみたり、北村薫さんの書いたミステリ、女子大生「私」と落語家円紫師匠シリーズを読んだりして興味がわき、昨年から古典落語を聴きまくり、ちょうど1年経った。 そんな今、本書『神田紅梅亭寄席物帳 道具屋殺人...
初めて読んだ落語ミステリー。 楽しかった。 TVドラマ『タイガー&ドラゴン』をみたり、北村薫さんの書いたミステリ、女子大生「私」と落語家円紫師匠シリーズを読んだりして興味がわき、昨年から古典落語を聴きまくり、ちょうど1年経った。 そんな今、本書『神田紅梅亭寄席物帳 道具屋殺人事件』が眼にとまったのは、タイムリーだった。 1.道具屋殺人事件 2.らくだのサゲ 3.勘定板の亀吉 の3話が入っている。 探偵役は、脳血栓で倒れ、千葉県館山市の自宅で療養中の師匠、山桜亭馬春。安楽椅子探偵を務める。 主人公はその弟子の奥さん。事件の真相を求めて、師匠宅を夫婦で訪れる。 北村さんのシリーズでは、事件の謎解き推理をする過程で、わかりやすい説明になるようにと、落語の一節をたとえ話として使っているだけだったのではないか。 一方、本書での落語のポジションは、事件の核となっている。落語の噺の中に、事件を解く鍵がある。 古典落語を知っていれば一層面白いし、知らなくても大事な噺のあらすじは書かれているので十分に楽しめると思う。 また、ミステリー好きで、これから古典落語を聴いてみたいという方なら、入門書にもなるかもしれない。 残念だったところは、第3話。「下ネタ」で気持ちのいいものではない。ここでいう「下ネタ」は落語家の符牒、いわゆる業界用語。一般に使う卑猥な意味ではない。念のため。
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“落語ミステリ”なるサブジャンルが存在するのかは知らないが、マニアックなテーマを扱った作品の中でも画期的な一冊であることは確かだろう。それぞれの占める割合は、圧倒的に落語の方が多い。ミステリはもはや小道具のひとつと化してしまっている。それでも、「オチ」を共通するその構造が似通って...
“落語ミステリ”なるサブジャンルが存在するのかは知らないが、マニアックなテーマを扱った作品の中でも画期的な一冊であることは確かだろう。それぞれの占める割合は、圧倒的に落語の方が多い。ミステリはもはや小道具のひとつと化してしまっている。それでも、「オチ」を共通するその構造が似通っているため、不思議に感じたコラボレーションが徐々に痛快になってくる。残念なのは前フリの長さ。演目内容にリンクした事件が起こるという規則性があるため、落語家にある噺を披露させるまでは何も始まらないのが難点と言えばそうかもしれない。トリックの切れ味もゆるゆるだが、なぜか怒りは感じない。作品全体から発せられる小気味の良さに、まんまとハマってしまったようだ。
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高座の最中に血染めのナイフがあらわれる、後輩は殺人の疑いをかけられる、妻の知り合いは詐欺容疑…。次から次へと起こる騒動に、二つ目、寿笑亭福の助が巻き込まれながらも大活躍!落語を演じて謎を解く、一挙両得の本格落語ミステリー。
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