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子どもを理科好きに育てる本 の商品レビュー

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2024/09/01

夏休み。と言えば自由研究。自分自身も子どものときは苦手だった。そもそもどうやってテーマを決めたらいいの?誰も教えてくれないし…と小学生のときに思い、中学生くらいからは理科的なものから距離を置いても別に日常生活では困らないのでは?と思いはじめ、いよいよ大学生や大人になると理科なんて...

夏休み。と言えば自由研究。自分自身も子どものときは苦手だった。そもそもどうやってテーマを決めたらいいの?誰も教えてくれないし…と小学生のときに思い、中学生くらいからは理科的なものから距離を置いても別に日常生活では困らないのでは?と思いはじめ、いよいよ大学生や大人になると理科なんて頭から完全消去されて現在に至る。 こういう人、本当に多いはず。でもいくら理科なんか日常生活とは直接関係ないじゃんと開き直っても、実生活では毎朝出勤前に空を見上げ、雲や風から帰宅時の天気を予測して傘が必要かを判断しなければいけないし、料理が好きな人ならば意外と化学の知識がついて回るのは理解できるだろう。つまり理科が日常生活にあまり関係がないなんて大噓で、実は日常生活の細部に関わっていて、大人になった今「ああ、授業で半分寝ながら聞いていたあれは、○○のことだったんだ…」と後悔しながら日々を過ごすというのがほとんどでは。 だから、せめて自分の子どもには理科の大切さと便利さについて、食わず嫌いにならないように、陰になり日向になり伝えようとしているのだけれど… いやはや、子どもをもつ親ならばほぼ全員、このことについては本当に思い通りにならないと悩み、苦労しているはず。 そこで手にしたのがこの本。著者の中野不二男さんも強調しているのは、理科の「身近さ」と「日常性」だ。それを子どもにわかってもらうために、まず大人が身の回りの理科的なものに興味を持って親しむ態度を見せること。その大切さが細かく記されている。 具体的に見ていこう。冒頭では小学生の著者の娘さんが顕微鏡をのぞき、糸を撚ったような独特の形状であるニジマスの染色体が見えたときの素直な驚きの声が書かれている。ここでお父さんである著者は、まずは娘さんと同じように発見を喜び、感情を共有している。次にそうしながらも著者はすかさず図鑑を持ってきて、娘さんに染色体のページを開かせる。そうすると娘さんは、今顕微鏡で見たものとほぼ同じ形状のものを図鑑でも見つけ、二重の発見の喜びにひたる。ここで重要なのは、お父さんはすでに知っていることでも、知識を与えるような態度をしないで、子どもが自分で発見していくという“プロセス”を踏ませること。つまり、子どものなかに理科への興味を形作る重要な要素は“体験”であり、大人の役割はそれを演出することだ。 とは言うものの、言うは易く行うは難し。だけどこの本は学術的という言葉とは対極の、著者の実際の子育て体験談が中心で読みやすい。ちなみに、やはり著者にとっても子育てにおける最大の敵は、ゲーム(ビデオゲームからはじまってPCや携帯機器まで)だった!親の思惑をよそに理科からゲームへと子どもの興味の比重が移るのに対し、親がどう対処していくかの一連の記載もおもしろかった。 だが最後に、著者はおもしろい話だけの人じゃないということを書いておきたい。 最終章の第9章のテーマは、先の戦争で日本の対戦国の1つだったオーストラリアの捕虜収容所で日本人捕虜が起こした「カウラ事件」について。日本人捕虜の多数が食事用のナイフを加工したものを手に集団で暴動を図ったとされた事件。「生きて虜囚の辱めを受けず…」という日本人の特質を象徴する事件として語られてきたが、オーストラリア在住歴もある著者は「日本人もオーストラリア人も人間としての根本部分は同じだ」と信じ、一般に流布する説に懐疑を抱く。そして文献調査により、捕虜のリーダーとされていた人物が零戦のパイロットだったのを突き止め、彼が不時着した地点近くに今も残る機体を実際に見に行く。そこで機体から発見したのは、胴体着陸の痕跡だった。著者は零戦が被弾した箇所から不時着した地点の距離をもとに、計算を駆使して彼が残り少ない燃料で不時着に至れたのは、生き残るという強い意志による冷静な判断によっていたことを突き止める。 著者は書く。「真相」は通説や俗説により覆われている場合が実は多いが、理科や数学はベールをはいで真実の姿を表出させる有効なツールなのだと。 読み終えたとき、自分の子どもを理科好きにするノウハウを見出せたかどうかは正直なところわからないが、中野不二男という1人の理科好き(理科バカ?)の一代記を読了した充実感は得られた。

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2019/07/26

理系といわれる分野に対して、どの様にこどもに興味を持たせるか、著者自身が実践されている方法がたくさん出てくる本です。 日々の家での様子がエッセイ風に書かれており、文章が情景が分かるように丁寧にかかれているので、とっても面白く読めました。 そして、強く感じたのは、著者の様々なワザを...

理系といわれる分野に対して、どの様にこどもに興味を持たせるか、著者自身が実践されている方法がたくさん出てくる本です。 日々の家での様子がエッセイ風に書かれており、文章が情景が分かるように丁寧にかかれているので、とっても面白く読めました。 そして、強く感じたのは、著者の様々なワザを実践するには、まずは実践する大人側に興味を持っているということがとても大切だということ。 今思えば、自分の両親も、本著者がしてくれたようなことをいっぱいやってくれました。私は文系、夫は理系。夫の力を借りて、この本のように、子どもの視野を広げる手伝いをしていきたいと思いました。

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2016/09/27

子育て本としてかなり気に入った一冊! 2人のお子さんを育てた経験をもとに書かれているので、統計を根拠としているわけではないのだけど、一般的な啓発本よりよっぽど良い印象を受けた。 ・章ごとにポイントはまとめてあるものの、基本的にはエッセイの体で書かれていて単純に読んで面白い ・...

子育て本としてかなり気に入った一冊! 2人のお子さんを育てた経験をもとに書かれているので、統計を根拠としているわけではないのだけど、一般的な啓発本よりよっぽど良い印象を受けた。 ・章ごとにポイントはまとめてあるものの、基本的にはエッセイの体で書かれていて単純に読んで面白い ・著者がとった作戦に対して子どもがどんな反応をしたのかが書いてあり、真似したい!と思ったワザが多くあった 具体的には… ・こどもが手の届く本棚 ・こどもの興味が湧きそうなページを開いておく ・科学雑誌 ・衛星チャンネル ・NHK教育番組 ・科学館、博物館の活用 ・工作、ものづくり ・テレビゲームとの付き合い方 ・自由研究 ・百科事典の活用

Posted byブクログ

2019/02/05

★大宅壮一ノンフィクション賞作家・中野不二男 理科好き育成を目論む★ これが最新刊本でこの時期に原発テーマの本を上梓していないのに驚きましたが、中野不二男は1950年新潟市生まれの科学・技術ジャーナリストでノンフィクション作家。豪州での先住民アボリジニーの調査・研究を経て、帰国...

★大宅壮一ノンフィクション賞作家・中野不二男 理科好き育成を目論む★ これが最新刊本でこの時期に原発テーマの本を上梓していないのに驚きましたが、中野不二男は1950年新潟市生まれの科学・技術ジャーナリストでノンフィクション作家。豪州での先住民アボリジニーの調査・研究を経て、帰国後は国立民族学博物館でその共同研究への参加、80年代後半から宇宙政策シンクタンク宙の会の代表幹事も務めました。 本書は、理科離れが指摘されて随分経つ子供に一緒になって簡単な実験をしてみたり、夜空の星を観察するとか、身近に理科的環境を用意してあげれば科学や自然への興味や関心は無限にどんどん膨らんでいくこと、子供が理科を好きになる瞬間は日常生活のどこにでもあると指摘します。こういうちょっとした体験が好奇心を育て理科への栄養となる、と工学博士の著者自らの体験にそった豊富なアイデア満載で、子供ばかりか理科嫌いのあなたも楽しめる一冊です。 私が彼に遭遇したのは『マレーの虎ハリマオ伝説』(文藝春秋1994年)を読んだからです。 その本は、マレーの虎と呼ばれたハリマオが、昭和の初めに、マレーシアで三千人の手下を連れて密林を駆け巡る盗賊の頭になり、その後、太平洋戦争中は日本軍に利用され諜報員となった実在の人物で、福岡県出身の本名を谷豊といいますが、その彼がシンガポールで30歳という若さでマラリアで死んだのが、今から70年前の1942年3月17日です。父たちの世代は、1960年から1年以上続いたドラマ『怪傑ハリマオ』で、勝木敏之という俳優演ずるハリマオの格好良さに熱狂し虜になってハリマオごっこを興じたといいます。 生前充分過ぎるほど戦争の道具にされたのに、死んでからも戦意高揚のために、それこそ死んでもラッパを放しませんでしたという日露戦争の木口小平二等卒よろしく英雄に祭り上げられ、敗戦後にはマンガやドラマ化されたというのが、ことの真相です。 盗賊になるきっかけは子供の頃住んでいたマレーシアで、反日運動のさなか在中国人によって彼の妹が殺されたからですが、盗賊といっても中国人から奪った略奪品を貧しいマレー人に手渡したという一種の義賊だった。それもこれも、英雄ハリマオ伝説を解き明かすために福岡とマレーシアにおよぶ現地調査や綿密な取材を敢行した著者の強烈な分析力の成果ですが、そういうものからは遠ざかって今や彼は、最先端科学を解り易く解説する第一人者で科学・技術ものを得意とするノンフィクション作家の感があります。

Posted byブクログ