木曜の男 の商品レビュー
チェスタトンの描く異…
チェスタトンの描く異色長編。次々に巻き起こる展開に、ページをめくる手が止まりません。
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どちらかというと、ス…
どちらかというと、スパイものなのかもしれないですが、読後には独特の感想が残りました。ちょっと訳も古めかしいですが、思わず引き込まれる作品です。
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古典新訳文庫版を読んでそれほど日がたたないからか、今回はわりあい一気に読めた。話の性格上、なるべく勢いのままに読んだ方がいいように思う。訳は名訳と言われる割にところどころ意味の通らないところがあった(南條訳を参照してみると意味はわかる)が、きびきびしたリズムのあるいい文章なので、...
古典新訳文庫版を読んでそれほど日がたたないからか、今回はわりあい一気に読めた。話の性格上、なるべく勢いのままに読んだ方がいいように思う。訳は名訳と言われる割にところどころ意味の通らないところがあった(南條訳を参照してみると意味はわかる)が、きびきびしたリズムのあるいい文章なので、それに乗せられたところはあるかも。 映画でいうと『ナイトメア・アリー』みたいなかんじかな。悪夢感が似てる。後半に、現在との関連を思わせる記述が時々入ってくるのが興味深い。
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久しぶりに、読み終わった後すぐ2周目をしたが、それでも分からん そして続けて3周目 日曜=神というのは分かるが、秩序と無秩序、無政府主義の意味するところを無理やり解釈してみる キリスト教的には神=秩序なはずなので、グレゴリー=秩序を嫌う=哲学者=無政府主義者=無神教、となる(「我々は神が廃止したい」「原罪から解放されると考えるには(哲学者は)知的すぎる」との記述もあるし) サイムたちは試されてる殉教者とすると、聖書で言うところの12人の弟子か 裏切った(ように見えた)大佐に対して、「ヘロデの前にユダを」ともサイムが言ってるし 日曜の発言である「私は君たちを戦場に送った」らへんの下りはヨブくらいにも聞こえる サイムの最後の叫びである「一度地獄に降りる必要がある」というのもヨブっぽい そうなると、とどのつまりはこの本は旧約聖書のヨブ記と見做しても良さそうだ そうやって読むと、それなりに理解は出来る 加えて、日曜の最後の一言からするに、変に知的になって色々考えるようになった人間(特に、今回で言う哲学者、そしてサイムに対しても)に対する神からの警告、と捉えれば良いのかな そう言えばヨブ記38章にもそんな記載があったな
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推理小説というよりは哲学書? 孤独で救いのない世界で普通に暮らすことができていることに感謝するサイムや他月曜から土曜、普通な暮らしに退屈と不平等感を感じ破壊を目論むグレゴリー。見方の完全に異なる両者だが、神(日曜)が説明する権利を与えたのは前者であった。カトリック的価値観がチェス...
推理小説というよりは哲学書? 孤独で救いのない世界で普通に暮らすことができていることに感謝するサイムや他月曜から土曜、普通な暮らしに退屈と不平等感を感じ破壊を目論むグレゴリー。見方の完全に異なる両者だが、神(日曜)が説明する権利を与えたのは前者であった。カトリック的価値観がチェスタトンのわかりやすい例えと吉田健一のわかりやすい訳で理解できる至高の一冊。
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光文社古典新訳文庫から本書の新訳版『木曜日だった男』が出版されたことを知った時は驚いた。あれほど癖の強い、あくの強い作品を新訳版で出す光文社の編集部の見識をまず疑った。この光文社のシリーズは商業的にも意義的にも世の読書家に好評をもって迎えられているらしく、その余勢を買ったあまりの...
光文社古典新訳文庫から本書の新訳版『木曜日だった男』が出版されたことを知った時は驚いた。あれほど癖の強い、あくの強い作品を新訳版で出す光文社の編集部の見識をまず疑った。この光文社のシリーズは商業的にも意義的にも世の読書家に好評をもって迎えられているらしく、その余勢を買ったあまりの無謀な行為ではと疑ったのである。 しかしネットでの書評を読むと意外と良好のようで、不評コメントは私が調べた限りでは見当たらなかった。 で、本作は間違いなく傑作である。しかし残念ながら万人に推奨できる傑作ではない。これを初チェスタトンとして選ぶとしたら、その後その人はチェスタトンと訣別するのではないだろうか。なぜならば一読しても、訳が解らないからだ。 物語はガブリエル・サイムなる詩人が無政府主義者と論争になるところから始まる。主人公詩人!しかも相手は無政府主義者!もうこれだけでクラクラだ。 この「クラクラ」には二種類の意味がある。 1つは文字通り、理解不能という意味でのクラクラ。もう1つはこのチェスタトンならではの人物設定に対する酩酊感のクラクラである。 実は私はこの本を2回読んでいる。したがって上述のクラクラ感は正に私が抱いた感覚なのである。 さて物語はサイムが「日曜」と名乗る人物が議長を務める無政府主義者集団に加わる。実はサイムはロンドン警視庁の公安警察官であり、彼はこの無政府主義者集団を壊滅するために送られたスパイだったのだ。 そして彼は「日曜」から「木曜」と名づけられる。そう、他のメンバーにはお察しの通り、「月曜」から「金曜」という委員会がいるのだ。そしてサイムはこのメンバーと接触していくのだが、実に意外な展開が待っている。 そして最後に残った議長「日曜」を追い詰めるサイム。しかしそこで明らかになる驚愕の事実!そして・・・。 このオチ―あえて真相と云わない―を知ったその瞬間、読者はきっと呆気に取られるだろう。そして唐突に訪れるカタストロフィに似た結末に呆然とせざるを得ない。 通常ならば駄作のレッテルを貼られるべき作品なのだが、チェスタトンの作品を読んできた者ならばこの作品は甘美な麻薬の如き魅力に満ち満ちているのだ。 上で述べたプロットを彩るのは全編これ、チェスタトンの哲学、逆説、宗教論とあらゆる思想論だ。サイムをチェスタトンの代弁者にし、事ある毎に登場人物と議論を重ねる。リアリティという観点から極北の位置に存在する人物たちはもちろんそんなサイムを変な奴だと一笑に付せず、論破しようと議論でもって対決する。この議論が実に面白い。いや正直に云えば1回目の読書では全く読みにくくてしょうがなかった。さらにその難解な文章の合間を縫うように展開するストーリーもまた曲者であり、何がなんだか解らないうちに1回目の読書は終ったと云えよう。 しかし2回目に読むとこの難解さが逆に心地よくなってくるのだから不思議だ。恐らくそれは免疫が出来たのだろう。だからチェスタトンが読者に放つ悪夢としか思えないクライマックスシーンも実に愉しめるようになる。特に本書では一般大衆と警察が入り混じって大勢サイムを追いかけるシーンは悪夢さながらも一歩間違えば喜劇である、そんな余裕まで感じられるようになる。 つまりこれはチェスタトンしか書けない奇書なのだ。それを愉しめるかどうかはまず本書を当たる前に「ブラウン神父シリーズ」を先に当たってもらいたい。その後なおチェスタトンを読みたいのであればこれは本当に読むべき作品である。 数少ないチェスタトンの長編という意味でも貴重な1冊。当時私は創元推理文庫版の難解な訳にてこずったが、今は光文社から新訳版が出ている。今からこの作品に遭遇する人はなんと恵まれた人たちなんだろうと私は思わずにはいられない。
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無政府主義者の秘密結社の委員は「日曜」「月曜」と曜日で呼ばれているが、そのうちの「木曜」に欠員が出たため、新たな「木曜」として選ばれたのが詩人のガブリエル・サイムであるが、彼は実はその陰謀を防ぐために組織に潜入した刑事であった。 議長である「日曜」の峻烈な意思のもと、ロシア皇帝と...
無政府主義者の秘密結社の委員は「日曜」「月曜」と曜日で呼ばれているが、そのうちの「木曜」に欠員が出たため、新たな「木曜」として選ばれたのが詩人のガブリエル・サイムであるが、彼は実はその陰謀を防ぐために組織に潜入した刑事であった。 議長である「日曜」の峻烈な意思のもと、ロシア皇帝とフランス大統領の爆破暗殺が計画されるが、その計画の過程で他の委員たちの正体が徐々に明らかになっていく。 読後、これは探偵小説なのかどうかもよくわからない、不思議な状態となった。白昼夢のような雰囲気のなか、物語は結末を迎えるが、この不思議な感覚を味わうという意味では一読の価値はあるかも知れない。ブラウン神父シリーズとは、まったく趣が異なるのも興味深い。
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小説の前半と後半でまったく別の作品かと思うほど展開が変わる。前半の、前世紀の暗黒都市ロンドンを怪しく描いた雰囲気は好き。推理小説として読むと、筋立てはだいたい読めてしまう。あーやっぱり、と思いつつも読ませる何かはある。
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不思議な不思議なチェスタトン。 フツーの推理小説ではないな、何だろうこの感じ? 著者名くらいしか知らなかったチェスタトンに興味を持ったきっかけは、ボルヘスの著作で言及されていたから。 もっとホームズ的な、良くも悪くも通俗的推理小説を期待していたらトンデモワールドが待っていたぞと。 (ここでも神=球体が展開されている) 訳が少々古くて読みづらかったのだが、この訳者さんE.ウォーの『ブライズヘッドふたたび』の人ではないか! あちらが比較的読みやすかったことを考えると、チェスタトンの文章そのものが訳出しづらいのかも? 現在新訳が出ている“ブラウン神父シリーズ”の短編集はぜひ読んでみようと思っている。
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