フィンガーボウルの話のつづき の商品レビュー
吉田篤弘さんの初めての小説。 短編のタイトルの下にかかれたナンバーは何?と、まず思う。そして、読み進めていくと、書きあぐねている小説のなかにいるのか、小説のために集めた話なのか、よくわからなくなる。それでもビートルズのホワイト・アルバムが存在感たっぷりな話は私にとって心地よかった...
吉田篤弘さんの初めての小説。 短編のタイトルの下にかかれたナンバーは何?と、まず思う。そして、読み進めていくと、書きあぐねている小説のなかにいるのか、小説のために集めた話なのか、よくわからなくなる。それでもビートルズのホワイト・アルバムが存在感たっぷりな話は私にとって心地よかった。「フールズ・ラッシュ・イン」で、タイトルに想いを馳せ、最後の「Don't Disturb, Please」で、なんとも言えないくらいこの小説が好きだと思った。なかでも「私は殺し屋ではない」はクスッと笑えたし、「キリントン先生」「ピザを水平に持って帰った日」は、特によかった。そして、この先吉田篤弘さんが書いていく小説の種がたっぷりある本だと思った。ゆったりとした時間を味わうために、また再読したい。
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おだやか/静か/少しだけファンタジー/どこかにありそうでない町、どこかにいそうでいない人/ビートルズが出てきたり、まったく出てこなかったり/作者とはたぶん好みが似ているのだろうな、という感覚/中扉のイラストも味があって良い その静かな声 キリントン先生 フールズ・ラッシュ・イン...
おだやか/静か/少しだけファンタジー/どこかにありそうでない町、どこかにいそうでいない人/ビートルズが出てきたり、まったく出てこなかったり/作者とはたぶん好みが似ているのだろうな、という感覚/中扉のイラストも味があって良い その静かな声 キリントン先生 フールズ・ラッシュ・イン の3編がとくによかった。 ———————————————— ●ろくろく おー、この予告編だけの映画、昔同じようなことを考えたような。予告編って、ショートムービーなわけで、そのワクワク感、肝心なところは言わない感、好きなんだよなあ。これに限らず、ちょこちょこ共感できるポイントがある。 予告編への偏愛、分かる。俺の片岡義男好きにも、ちょっと通じる。 この短編にはビートルズもホワイトアルバムも出てこない。んー、全部入っているスタイルで通してほしかったかな。この作品自体は連載? 書き下ろし? 作中の前半では連載という記述あったけど。 ホワイトアルバムの通しナンバー、Aがつくのとつかないのがある。 ホワイトアルバムが、モチーフ。 ●フェニクス 通しナンバーついてない。おや? インタールードとしてとてもいい。こういうところも含めて、この人好きだなー。堀江に春樹とタルホを足したといったら乱暴か(笑)。 ●ハッピー・ソング 200ページ 北の涯ての灯台に魅かれる、というのに惹かれる。 「北に何があるの?」 「何もない。だからいい。自分で作り出さなければならない」 ●フールズ・ラッシュ・イン 港町の食堂の窓から、日曜の朝に降る霧雨を眺めている。窓ガラスには水滴がびっしりと付いている。向かいの売店の老犬は、頭を撫でると「ふぅん」と鼻を鳴らすような声を立てる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
目次より ・「彼ら」の静かなテーブル ・ジュールズ・バーンの話のしっぽ ・ジョン・レノンを待たせた男 ・シシリアン・ソルトの効用 ・閑人カフェ ・私は殺し屋ではない ・その静かな声 ・キリントン先生 ・小さなFB ・白鯨詩人 ・ろくろく ・フェニクス ・ハッピー・ソング ・ピザを水平に持って帰った日 ・フールズ・ラッシュ・イン ・Don't Disturb, Please 起こさないでください ・あとがきのかわりにジュールズ・バーンの話のつづき ビートルズの(ホワイト・アルバム)を軸としてゆる~く繋がっている連作短編集であるこの本を読んでいる本日、職場で回ってきた業界紙のコラムで(ホワイト・アルバム)が紹介されていたというこのシンクロ。 それも含めての吉田篤弘ワールドなのでしょうか。 目次を見ても『フィンガーボウル』は出てきませんが、それぞれがフィンガーボウルの話のようでもあり、ジュールズ・バーンが紡いだ話のようでもあり。 各タイトルには6桁あるいは7桁の数字がついています。 頭にAが付いているものと付いていないものがあり。 これも、ビートルズファンなら知ってる(ホワイトアルバム)のトリビアル。 初版についていた限定番号になぞらえているらしい。 まだ宅配ピザがなかった頃、テイクアウトのピザが寄らないように、箱を水平に捧げ持ちながら帰る少年たち。 家に帰る友人に渡す(ホワイトアルバム)が濡れないようにピザの空き箱に入れて。 そんな経験がないにもかかわらず懐かしい光景。 そして、私もシシリアン・ソルトをふんだんにお風呂に入れて、ぷっくりと持ち上げられた身体の中から新しい物語が浮かび上がってくるのを見ていたいと思ったのだった。
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構想はあるのに、なかなか新作に取りかかれずにいる吉田君は、ゴンベエ先生の紹介でスパイスを扱う会社の小冊子に文章を寄稿することになる。 謎の作家の存在や、ビートルズの「ホワイト・アルバム」に導かれ、いくつかの物語がシンクロし始める。 2016年2月6日読了。 読むのは2度目になり...
構想はあるのに、なかなか新作に取りかかれずにいる吉田君は、ゴンベエ先生の紹介でスパイスを扱う会社の小冊子に文章を寄稿することになる。 謎の作家の存在や、ビートルズの「ホワイト・アルバム」に導かれ、いくつかの物語がシンクロし始める。 2016年2月6日読了。 読むのは2度目になります。 ひとつひとつが短いお話なので、眠る前に1ひとつずつ。今回はそんな感じで読んでみたのですが、ちょうどいい感じで気持ちがゆったりできました。 余談ですが。この作品を読んでから、ずっと気になっていたビートルズの「ホワイト・アルバム」を聴いてみました。ただ、一気には聴けなかったので、ちょっと良さが半減してしまったかも。。。
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翻訳?って感じてしまった部分もある なんとなく外国もんを感じた、お話進行具合。 話のなかで短編集を書いてる、みたいな。 これも洒落たかんじに。 中の書き手が悩んでる感じと、 おのおのに出てくる人も なんかスパッとしてないというか 模索してるようなかんじが ボク...
翻訳?って感じてしまった部分もある なんとなく外国もんを感じた、お話進行具合。 話のなかで短編集を書いてる、みたいな。 これも洒落たかんじに。 中の書き手が悩んでる感じと、 おのおのに出てくる人も なんかスパッとしてないというか 模索してるようなかんじが ボクにはイイ感じに、 しっとりとした感じでよかった。 ソルト、ホワイトアルバム、レインコート、 余白、ラジオ、しわのあるシャツ、ピザ 等々、記憶に残るキーワード。 なんか、もんもんとしてる時に読んで… でも、もんもんが解決されるわけではないけど 読んでみて、なにか感じてもいいんじゃない? って感じ、かなぁ。 吉田さん、めっけ。
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そう、これこれ! 僕が読みたかった吉田篤弘は まさにこんなん(笑) 世界の果てにある食堂と ビートルズの『ホワイト・アルバム』をめぐる 無国籍風味な大人の童話集といった味わい。 夜の喧騒を一手に引き受ける「世界の果て食堂」。 入り口の青いガス燈と真っ白なテーブルクロス。 ...
そう、これこれ! 僕が読みたかった吉田篤弘は まさにこんなん(笑) 世界の果てにある食堂と ビートルズの『ホワイト・アルバム』をめぐる 無国籍風味な大人の童話集といった味わい。 夜の喧騒を一手に引き受ける「世界の果て食堂」。 入り口の青いガス燈と真っ白なテーブルクロス。 ゴンベンを擁するあらゆる領域に詳しい「ゴンベン先生」。 黒ビールに串焼きを食べながらの秘密の会合。 壁にドアノブだけを30個並べた「小さな冬の博物館」。 たった一作だけを発表して雲隠れしたイギリスの作家。 唯一ジョン・レノンを待たせたサンドイッチマンの伝説。 バディ・ホリー商會のシシリアン・ソルト。 ジャン・ギャバンによく似た海辺の漁師。 謎が謎を呼ぶ「閑人(ひまじん)カフェ」。 鞄の中でくたくたになった サリンジャーの「フラニーとゾーイー」。 薄汚れたシナトラ食堂と老犬フール。 数億年分の時間が詰まった 空から落ちてきた星の欠片…。 いやはや、なんという心地よさ。 少しずつ少しずつ、 ささやかにリンクし共鳴し合う登場人物たちの妙。 何度となく読むたびに 毎回好きな話が変わっていくのもいい感じ(笑) 日本でも外国でもない「ここではないどこか」で起こる シュールで奇妙で、 それでいて微笑ましい16+1のショートストーリー。 『白河夜船』のレビューで 吉本ばななの作品はストーリーがどうこうより、 ほとばしる切ない感性を楽しめばいいと書いたけど、 吉田篤弘の連作短編集で言うなら 一冊トータルとしてどうこう評価するのではなく、 読んだ人それぞれが それぞれのお気に入りのストーリーを見つけて、 そのショートストーリーを 何度も何度も読み返すのがベストな楽しみ方だと思う。 (また吉田さんの短編は何度読み返しても、そのたびに心地良さが持続するところがスゴい!) ということで僕のお気に入りのストーリーは、 一人旅を続ける女性カメラマンは 「親愛なる、夜ふかしの皆様…」で始まるラジオの声に導かれ、 「6月の月放送局」のある島を目指す… 『その静かな声』、 しわくちゃな白シャツがトレードマークの有名な作曲家と 同じアパートに住む少年とのひとときの触れ合いを描いた 『キリントン先生』、 「レインコート博物館」で働く仲良し三人組の活躍に 頬がゆるみっぱなしになった(笑) 『小さなFB』、 予告編専門の映画監督を夢見るちょっと変わった青年「ろくろく」が 村上春樹の「風の歌を聴け」の鼠とオーバーラップした、 ほろ苦くちょっと切ない青春ストーリー 『ろくろく』、 10歳の小学生が初体験する ビートルズのレコードと焼きたてのピザの味。 お店で買ったピザが崩れないように 15秒おきに水平になってるか確かめまくる小学生二人が ホンマ微笑ましくて笑えます! 『ピザを水平に持って帰った 日』、 かな~♪ 詩的で寓話的なストーリー。 強烈に郷愁を誘う、 かつてそこにあった 懐かしくて切なくて美しい世界。 村上春樹の「カンガルー日和」同様に いつでも読めるように鞄に入れて、 公園のベンチやカフェでまったり読むのにも最適だし、 自宅で英国風ティータイムを気取って(笑) 紅茶にビスケットをつまみながら ゆるゆると読むのも おそろしいくらい合いそう(笑)。 あっ、もちろんBGMには ビートルズの 『ホワイト・アルバム』をお忘れなきよう(笑)♪
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登録3000冊目はこちらでした。 吉田篤弘さんらしい世界観。 世界の果てにある食堂。消息不明となった謎の作家。静かな声。レインコート博物館。ビートルズのホワイト・アルバム。 既読本については全部レビューを書きたいけど、さすがに中高時代に読んだものは記憶の彼方。。理想としては「...
登録3000冊目はこちらでした。 吉田篤弘さんらしい世界観。 世界の果てにある食堂。消息不明となった謎の作家。静かな声。レインコート博物館。ビートルズのホワイト・アルバム。 既読本については全部レビューを書きたいけど、さすがに中高時代に読んだものは記憶の彼方。。理想としては「あれ、どんな内容だったっけ?」と思ったときにレビュー読み返して記憶が蘇ると良いのだけれどなかなか再読する余裕がないよ。
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落ち着いて、洒落ていて、いかにもクラフトエヴィング商會らしい作品でした。毎日1〜2話ずつ、大切に読んで満足です。
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唐突な終わり方。ふわふわした、少しつながってる話がたくさん詰まってた。ビートルズのホワイトアルバム、ドアノブ、音楽、とか。
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よかった。 これは手元に置いておきたいな。 少しへんてこ。 ひとつひとつの話が、ちゃんと心に刻まれる。 どれも好きだなーと思う。 どれも体温がある。 2012年に出会えて、2013年の最初に読み終わったことをうれしく思える本。
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