残虐記 の商品レビュー
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どこまでが景子の想像なのか分からなかった。どこ行ったんだ。ケンジはきもすぎるからケンジと通じ合っていたみたいな流れが嫌だった。景子は独身って書いてるけど本当は夫がいるんだよね?
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少女誘拐監禁事件の被害者であることを告白した手記を残して失踪した作家。 彼女を誘拐したケンジ、ケンジの隣人ヤタベ、検事の宮坂に父母…彼らの存在すべてが幾重にもフィクションの膜に覆われていて人物像が定まらない。 手記自体がフィクションなのではないか、もしくは、これを編集者に託すとい...
少女誘拐監禁事件の被害者であることを告白した手記を残して失踪した作家。 彼女を誘拐したケンジ、ケンジの隣人ヤタベ、検事の宮坂に父母…彼らの存在すべてが幾重にもフィクションの膜に覆われていて人物像が定まらない。 手記自体がフィクションなのではないか、もしくは、これを編集者に託すという体をとった夫のフィクションなのではないか…といった疑念が邪魔して、なかなか解読できないもどかしさがあった。
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10歳の少女が変質者に誘拐され、犯人が勤める町工場の寮の一室に一年以上拉致される。隣室の住民に助けを求めるが、精神障害の犯人を使嗾する共犯者であり、盗視常習者で発覚直前に逃走し行方知れず。少女は救助、解放されても世間の好奇の目に晒される。事後捜査でも拉致されていた状況や実態は一切...
10歳の少女が変質者に誘拐され、犯人が勤める町工場の寮の一室に一年以上拉致される。隣室の住民に助けを求めるが、精神障害の犯人を使嗾する共犯者であり、盗視常習者で発覚直前に逃走し行方知れず。少女は救助、解放されても世間の好奇の目に晒される。事後捜査でも拉致されていた状況や実態は一切語らず、うちに籠り妄想の世界に浸る。両親は彼女の救助を機に離婚し父は再婚する。少女は母親と生活するが娘への防御衝動が昂じて二人の気持ちは離れる。取調べや裁判は被害者の証言がないまま行われ、犯人は長い懲役刑に服する。彼に対して秘密の一年間をともにした連帯感のようなものが芽生える。沈黙を通す彼女に担当の検事がいきさつや犯人への心理を想像すべく接触を繰り返し、二人は後に結婚することになる。事件のことが世間から忘れられた頃、彼女は若くして小説を書き、その描写の迫力が世間に衝撃を与える。作家として生活するある日、突然、事件の真相や心理を綴った小説(記録)を出版者に届けるよう夫に依頼して失踪する。 この小説は彼女が失踪するにあたって残した記録の物語であり構成も奇抜で面白い。被害者である少女の目を通した事件のあらましであり心の軌跡である。 桐野夏生が少女拉致という状況を設定し逃げ場のない心の閉塞感を描いた心理小説である。
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妻が失踪したという冒頭だったので、なんとなく「真相を知りたい」という欲求に沿って読み進めた。 結果からすると、求めていたものは得られず、ひたすら想像のみを強いられた。 読後感はよくなく、妻がなぜ疾走したのかは勿論、そもそも事件の真相までもが不透明なままである。 私は直ぐに答えを...
妻が失踪したという冒頭だったので、なんとなく「真相を知りたい」という欲求に沿って読み進めた。 結果からすると、求めていたものは得られず、ひたすら想像のみを強いられた。 読後感はよくなく、妻がなぜ疾走したのかは勿論、そもそも事件の真相までもが不透明なままである。 私は直ぐに答えを示してくれる娯楽に依存的で、「想像すること」自体に慣れておらず、体力もないのだと思う。 また読者である私自身も、ケンジと景子の間にあった真相を隅々まで理解したいという野次馬精神、そしてマスコミ的な偽善を持ち合わせていることに気付かされた。 「毒の夢を紡ぐ」とは、なるほど。 自分を破滅させる妄想が自分を明日へと生かすことは、往々にしてあると思う。ただしいつかは抜け出さなければ、一生本当の現実は味わえない。 恵子は夢の一部を構成する夫を捨ててそこから抜け出したのか、はたまた夢の中心であるケンジのもとに飛び込んだのか。 私にはよく分からなかった。
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初めての桐野夏生作品。グロテスクが東電OL殺人事件を元にした作品というのは知っていたが、この小説も新潟の女児監禁事件が元になっていたのは知らなかった。 誘拐されていた1年間何をされていたのか、周りからの視線や両親とのギクシャクした関係、全員が敵に見える、勝手に想像される地獄。被害者の少女の精神的な傷は計り知れない。 ケンジのしたことは受け入れられるものではないが、施設でのいじめや同じ施設内での同性の性的暴行を目の当たりにし、ヤタベさんとの歪んだ関係と依存の様子を見ると適切な教育、そして愛情を満足に受けられていたらこうはならなかったのではと思った。 私たちは性別、年齢、さまざまな単語を聞くだけで自分に都合のいいように“想像”していることがたくさんあるんだと気付かされた。『残虐記』のどこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションなのか。それを私たちが“想像”してしまっていることこそが、景子が警察にも誰にも事件の真相を言わず、そして突然失踪したことの答えなのかもしれない。
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昔読んだような気がしていたけど、読んで無かったのかも。 と思うくらい新鮮な気持ちで読めました。 事件自体は凄惨なものなのだけど、確かに、1年間も監禁されていた者の精神状態なぞ誰が分かるだろうか。 監禁から解放されて日常に戻った時の違和感や、 現実を現実と捉えられなくなる感じが...
昔読んだような気がしていたけど、読んで無かったのかも。 と思うくらい新鮮な気持ちで読めました。 事件自体は凄惨なものなのだけど、確かに、1年間も監禁されていた者の精神状態なぞ誰が分かるだろうか。 監禁から解放されて日常に戻った時の違和感や、 現実を現実と捉えられなくなる感じがとても伝わってきて、 やっぱ桐野さんすげぇ、って思った。 目に見えない人の悪意や、妬み、そういった黒い感情を書かれるのが本当に巧い。 ゾクゾクしながら数日で読み切ってしまった。 昔桐野作品を片っ端から読みまくった日々を思い出した。
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小4で誘拐され1年間ケンジに監禁された景子の物語。 景子は小説家となり事件をモチーフとした小説を高校生の時に発表する。 最初は景子の夫から担当編集者へ送られた手紙から物語が始まる。 どれが現実でフィクションなのか、ちょっと境界線がわからなくなるような、 ゾワゾワした気持ちに...
小4で誘拐され1年間ケンジに監禁された景子の物語。 景子は小説家となり事件をモチーフとした小説を高校生の時に発表する。 最初は景子の夫から担当編集者へ送られた手紙から物語が始まる。 どれが現実でフィクションなのか、ちょっと境界線がわからなくなるような、 ゾワゾワした気持ちになる小説だったなー。 最後もまた夫の手紙で締めくくられるけど、 そういうことだったのか!って気づきもあった。 でもそれすらも真実かはわからないんだよなぁ。 夫の予想でしかないから。 桐野さんの小説は本当にはずれなくおもしろいです!
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拉致され1年間監禁された小4女子。犯人がなぜ自分を監禁したのか、助けてくれるはずの人は共犯だったのか。相手の欲望を想像する「性的人間」となった彼女は作家になり、そして失踪する。支配されることへの安心感、想像されることへの屈辱。人心の面妖不可思議さの渦に飲み込まれてしまう。 登場...
拉致され1年間監禁された小4女子。犯人がなぜ自分を監禁したのか、助けてくれるはずの人は共犯だったのか。相手の欲望を想像する「性的人間」となった彼女は作家になり、そして失踪する。支配されることへの安心感、想像されることへの屈辱。人心の面妖不可思議さの渦に飲み込まれてしまう。 登場人物がみな、言葉足らずな感じで、言葉の信ぴょう性が揺らぐ作品。それだけに異様に想像力がかき立てられた。グロテスクな窃視はだれもが好むところではないかな(私だけ?)。ひといきに読んでしまった。解説にある谷崎の『鍵』との関連がなるほどな、と。
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誘拐監禁された少女の心理が綴られる。当初は犯人に支配されていたが、徐々に少女が心理的優位な立場を作る。小学3年生迄しか学んでいない犯人は、少女と学習の場を得る。事件解決後、物語は複雑な要素を絡めながら被害者の心理的葛藤、迷い、社会の大人達の理不尽さに悩み続ける。事件解決の十数年後...
誘拐監禁された少女の心理が綴られる。当初は犯人に支配されていたが、徐々に少女が心理的優位な立場を作る。小学3年生迄しか学んでいない犯人は、少女と学習の場を得る。事件解決後、物語は複雑な要素を絡めながら被害者の心理的葛藤、迷い、社会の大人達の理不尽さに悩み続ける。事件解決の十数年後、小海鳴海との作家名の元被害者の元に、突如犯人から出所したとの自筆の手紙が届く。「先生、ほんとうにすいませんでした。でも、私のことはゆるしてくれなくてもいいです。私も先生をゆるさないと思います。どうぞ、お元気で。」この手紙を受け⋯
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