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マジック・フォー・ビギナーズ の商品レビュー

3.1

13件のお客様レビュー

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2024/06/22

“切実さ”こそが物差しなんだ。 楽しい日常や円満な夫婦関係にゾンビや幽霊が出現したら?多分、平和な生活を取り戻すために必死に戦う。それって結局、ファンタジーという名の“普通のお話”。ですよね? でももっと切実な“何か”を抱え込んでしまった人にとっては? 切実であればあるほど、...

“切実さ”こそが物差しなんだ。 楽しい日常や円満な夫婦関係にゾンビや幽霊が出現したら?多分、平和な生活を取り戻すために必死に戦う。それって結局、ファンタジーという名の“普通のお話”。ですよね? でももっと切実な“何か”を抱え込んでしまった人にとっては? 切実であればあるほど、ぶっ飛んだ世界を描くことができる。奇妙なシチュエーションをものともしない。だって登場人物にとってはそれどころじゃないから。 なんだかかえって人間らしい“リアリティー”を描いている気がしてくるかもしれない。 ケリー・リンクは、“奇妙さ”を単純な舞台設定や小道具として登場させたり、精神世界の安直なメタファーに使ったりしない。訳がわからないものは真剣にわからない。でも“痛み”はありありと感じられる。 『妖精のハンドバッグ』が好きだ。 祖母のゾフィアが持っているハンドバッグには、ゾフィアいわく災害を逃れるために国がまるまる一個、山、森、川、海も、住人も獣も神さまもみんなで避難のために移り住んでいるという。もちろん単なるおばあちゃんのホラ話では終わらない。 読んでいると女の子の一人語りというスタイルも含めて、ミランダ・ジュライの『水泳チーム』を急に思い出す。この不器用で、泣かないようにぎりぎり自分を保っている感じ。泣いたら楽になるって分かっていても強がる感じ。そんな精神状態で必死になって語るのはなんともヘンテコな物語。 おばあちゃんから継承したのは大事なハンドバッグなのか、世界一の嘘つきの称号なのか。 切ない。 『いくつかのゾンビ不測事態対応策』で男と女の子の間で繰り広げられる会話もいい。 他人の家のパーティに紛れ込んだ男は、“ゴージャスなオッパイの女の子”と奇妙で重なり合うことのない会話を繰り広げるけれども、ベッドインはしない。女の子の抱える哀しみは男には癒せないし、世界から置いてきぼりにされつつある男が抱え込んでいる“欠落”は、“現実”では埋められない。美術館からピカソを選ぶことなく、“誰も描かなかった絵”を盗み出したと語る男が求めるものは、本人にだってわからないだろう。ゾンビ襲来による破滅と、破滅がもたらす救済を待つだけだ。 『しばしの沈黙』の冴えない中年男たちもまた切羽詰まっている。 表題作におけるジェレミー少年が思春期をどう潜り抜けるかかも大変だが、中年の危機はどん詰まりだ。 逆回転をモチーフに、お話の中のお話でお話しが語られる三重に複雑な入れ子構造になっている。 死んだときから生まれた時へ逆行していくのは、可能性に満ちた時代に戻っていくことなのか? それとも全ての結末の記憶を抱えて生きていく重荷なのか? 真夜中の3時に別居中の妻を救おうと電話をかけるエドに希望は感じられない。過去に戻ってやりなおすこともできない。 でも、夜明けまで、まだ時間はある。待つことはできる。

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2021/10/09

「妖精のハンドバッグ」は、ランボーの母音の詩を思い出すような詩情があってよかった。訳の細部に工夫が見られる。「石の動物」にはタカシマヤの日本の着物が出てきたり。「猫の皮」では「魔女の復讐」という語が固有名のように使われる。けっこう作者は日本に造詣が深い印象をもった。

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2019/11/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

こちらが歩み寄れない作品。(個人の感想です) 文章がいわば意味をなさない作品なんですよ。 個人の存在もなんか概念でしかなく なんか砂城の上にいるようなごとく。 ただ、なんとなく理解できる作品はありますよ。 いずれありそうな死者婚が出てくる作品や 家族の乱れが別の生物の大量発生と 浸食により表現されているものとか。 正直、私には合いませんでした。 無念。

Posted byブクログ

2014/10/12

[ 内容 ] 電話ボックスを相続した少年は、その番号に何度もかけてみる。 誰も出るはずのない電話だが、あるとき彼が愛するTVドラマの主人公が出て、助けを求めてきた――異色の青春小説たる表題作ほか、国をまるごと収めたハンドバッグの遍歴を少女が語る「妖精のハンドバッグ」、なにかに憑か...

[ 内容 ] 電話ボックスを相続した少年は、その番号に何度もかけてみる。 誰も出るはずのない電話だが、あるとき彼が愛するTVドラマの主人公が出て、助けを求めてきた――異色の青春小説たる表題作ほか、国をまるごと収めたハンドバッグの遍歴を少女が語る「妖精のハンドバッグ」、なにかに憑かれた家を買った家族の騒動を描く「石の動物」など、アメリカ文学の新潮流をかたどる女性作家による瑞々しくも不思議な感触を残す全九篇。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2014/07/16

世界がねじれている。でもそれは前景として、世界の一部としてそこにあるだけ。ねじれそのものが真っ向から取り上げられることは少なくて、ねじれた世界の表面を滑るようにして、キラキラした物語が綴られる。だからこその、細部の息遣いのリアルさ。・・・っていうのはちょっとまとめすぎかしら。 な...

世界がねじれている。でもそれは前景として、世界の一部としてそこにあるだけ。ねじれそのものが真っ向から取り上げられることは少なくて、ねじれた世界の表面を滑るようにして、キラキラした物語が綴られる。だからこその、細部の息遣いのリアルさ。・・・っていうのはちょっとまとめすぎかしら。 なんかね、ツイストドーナツのようだな、と。全体のファンタジー性が。ねじってある意味なんて無い様に思えるんだけど、実はその分まぶしてある砂糖の乗りもよくてうまい具合になじんでたり。(ツイストドーナツのツイスト性について、なんて初めて考えたよ。。。) まあ、とにかく美味しいです。

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2013/06/30

「マジックフォービギナーズ」読んだ http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/310068.html … 柴田元幸訳。SFや幻想物に分類されているけど、奇想天外な展開も冒険や旅も架空の生物も出てこない(ちょっと出てくる)。平凡な...

「マジックフォービギナーズ」読んだ http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/310068.html … 柴田元幸訳。SFや幻想物に分類されているけど、奇想天外な展開も冒険や旅も架空の生物も出てこない(ちょっと出てくる)。平凡な人々の平凡な日常に紛れ込む違和感にフォーカスした短編集(つづく 「ゾンビ不測事態対応策」とか、普通の話を書いてから最後に固有名詞のいくつかを、その状況では有り得ない物体や事象へ入れ替えて仕上げたような(なんでゾンビ?笑)。他人の話を聞くときにたまに感じる違和感を突き詰めたらこういう短編集ができるかな。最初のバッグの話がとてもいい(おわり

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2012/04/02

これファンタジーなのかな?ホラーっぽい。短編だと結局こういう感じになってしまうのか…?個人的好みだけど、ファンタジーはしっかり世界を作り上げてある長編でないと面白くないかも。ファンタジーとしては好きではない作品。柴田元幸さんの翻訳なので期待していたが、翻訳もえ?と思う箇所が多々あ...

これファンタジーなのかな?ホラーっぽい。短編だと結局こういう感じになってしまうのか…?個人的好みだけど、ファンタジーはしっかり世界を作り上げてある長編でないと面白くないかも。ファンタジーとしては好きではない作品。柴田元幸さんの翻訳なので期待していたが、翻訳もえ?と思う箇所が多々あってがっかりな一冊だった。作者は男性かと思っていたのだが、女性であるのを知って、ようやくこのシュールさを納得できた。

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2010/09/18

昨日こんな夢を見た…なんていう、誰かの話を聞いてるような。幻のような世界なのに、奇妙な現実感。 アメリカンな感じで、どこか実験的で、読んでるときは、いまいちかな・・と思ったり。 でも、読み終わると、悪くないのかも。なんとも説明できない本…。 買う前に立ち読みすることをお...

昨日こんな夢を見た…なんていう、誰かの話を聞いてるような。幻のような世界なのに、奇妙な現実感。 アメリカンな感じで、どこか実験的で、読んでるときは、いまいちかな・・と思ったり。 でも、読み終わると、悪くないのかも。なんとも説明できない本…。 買う前に立ち読みすることをおすすめします。

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2010/06/14

日常の風景の中に透明な交換膜があって、そこから不可思議な作用が出入りしている様子を記録したら、この短篇集になった。みたいな。表題作『マジック・フォー・ビギナーズ』はまっこと傑作!劇中のTV番組『図書館』はぜひ見てみたい。

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2011/08/07

短編集どこでも評判がいいみたいだけど、あまりにシュールでついていけなかった。起承転結の承で終わるような展開といい、世界観といい、、、こういうのを楽しめる人が文化度が高いんだろうなぁと思いつつ断念。

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