宮沢賢治 の商品レビュー
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リンゴの中を走る汽車 -2007.06.28記 こんなやみよののはらのなかをゆくときは客車のまどはみんな水族館の窓になる 乾いたでんしんばしらの列がせはしく遷ってゐるらしい きしゃは銀河系の玲瓏レンズ巨きな水素のりんごのなかをかけてゐる りんごのなかをはしってゐるけれどもここはいったいどこの停車場だ枕木を焼いてこさえた柵が立ち 八月のよるのしづまの寒天凝膠-アガアゼル 宮沢賢治の「青森挽歌」という長詩-252行詩の、冒頭の数行。リンゴというものの形態-- それは丸いものにはちがいないが、閉じられた球体などではなく、孔のある球体であること。それ自身の内部に向かって誘い込むような、<本質的な-孔>をもつ球体。 「りんごのなかをはしってゐる」汽車とは、存在の芯の秘密の在り処に向かって直進していく罪深い想像力を誘発しながら、閉じられた球体の「裏」と「表」の、つまりは内部と外部との反転を旅するものとなる。畢竟、私たちの身体の、その脊髄内部の中枢神経は、もとはといえば、肺の表面を覆っていた外胚葉の<陥入>によるものである」という。 いわば、私たちの身体は、内側に向かって、一旦、裏返されているものなのだから、賢治の、このリンゴのなかを走る汽車のように、空間の外部が内部に吸い込まれていくという反転のイメージは、生物の発生学では、なじみの深い形象でもあるのだ。
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宮沢賢治の作品を通して「自我」とは何かを論考する。 著者は「ふつうの高校生に読んでほしい」と思って書いたのだそうだ。 「自分とは何者か」を考えるのは近現代における人間最大のテーマだからね。だけど「ふつうの高校生」って誰だよって思っちゃう。難しいというか、こういう文章への習熟は必要...
宮沢賢治の作品を通して「自我」とは何かを論考する。 著者は「ふつうの高校生に読んでほしい」と思って書いたのだそうだ。 「自分とは何者か」を考えるのは近現代における人間最大のテーマだからね。だけど「ふつうの高校生」って誰だよって思っちゃう。難しいというか、こういう文章への習熟は必要だよね。 人が何を見てどう生きたのかのすべてをテキストにすることなんてできるはずもない。表現されたものの背景を読者により感じさせる力が賢治の作品にはある。だから宮沢賢治に魅かれるんだ。
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美しい文章に魅了される幸せな読書体験でした。 自己を保存したいという願望と、自己を散開して他のあらゆる生き物とつながりたいという願望の相克。バタイユが追求した思想との類似性を感じました。
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純粋なる自己犠牲の結果に早逝した偉人イメージがあった宮澤賢治ですが、死ぬことでしか解消されない問題を、極めて楽観的に選び続けた人生であったと思いました。「生殖と生計の営為にその身を汚さぬということによって、〈子供でありつづけること〉を、賢治はひとつの思想として選んだのである。」(...
純粋なる自己犠牲の結果に早逝した偉人イメージがあった宮澤賢治ですが、死ぬことでしか解消されない問題を、極めて楽観的に選び続けた人生であったと思いました。「生殖と生計の営為にその身を汚さぬということによって、〈子供でありつづけること〉を、賢治はひとつの思想として選んだのである。」(P225)これってピーターパンじゃない!そうか、イーハトーブはネバーランドだったんだ!ってことは賢治は100年前のマイケル?社会の問題、家族の問題、自我の問題、賢治の「少年小説」が今だに普遍性を持っているのは大人と小人の葛藤があるからか…奇しくも賢治の文学のシンボルであるりんごはマイケルが一度は手にし、そして失うアップルというブランドでもあります。世界で一番、成功した中二病は宮澤賢治とマイケル・ジャクソン、とか言ったら誰かに叱られるんだろうな…しかし、本書がそもそもふつうの高校生に読んでほしいと思って書かれた、という点からも「自我」ってテーマ、気になって気になってしょうがありません。筆者の「自我の起源」読みたいリストに入れました。
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[ 内容 ] 幻想と現実、存在の肯定と否定,宮沢賢治の「世界」は外へ内へと転回しつづける。 我々を永遠に魅了する数々の作品表現の深層に、その意識・身体・自我を探索し、近代を駆けぬけた人間賢治の軌跡を現代の思想として構築する。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ]...
[ 内容 ] 幻想と現実、存在の肯定と否定,宮沢賢治の「世界」は外へ内へと転回しつづける。 我々を永遠に魅了する数々の作品表現の深層に、その意識・身体・自我を探索し、近代を駆けぬけた人間賢治の軌跡を現代の思想として構築する。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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幼いころその幻想的な物語を好きになることはできなかった。 如何せん児童が読むには暗い内容が多い。 よだかは燃え尽き、猫はいじめられ、 友人は水死し、セロ弾きは意地悪で、化け猫は人を喰おうとする。 しかし本書を読んでその印象が大きく変わった。 死は終わりではなく、輪廻によるひとつ...
幼いころその幻想的な物語を好きになることはできなかった。 如何せん児童が読むには暗い内容が多い。 よだかは燃え尽き、猫はいじめられ、 友人は水死し、セロ弾きは意地悪で、化け猫は人を喰おうとする。 しかし本書を読んでその印象が大きく変わった。 死は終わりではなく、輪廻によるひとつの通過点であるならば 物語は死によって閉ざされるのではなく、死によって新たに始まっている。 また、もう少し読めば 苦は痛みだけではない何者かであると分かるかもしれない。 生と死の継ぎ目が薄くなったか消えたかのように感じるように。 これから読み直す物語は、前向きな物語が増えそうだ。
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素晴らしいので図書館で借りた後、結局買ってしまった。 宮沢賢治はただの幻想作家じゃなく、徹底的な思想とその実践にあるんですね。 入門書としても、非常に良い。 ポイント1,雨ニモマケズの「デクノボー」は不気味なマゾヒズムではない。 ポイント2,転生を信じていた ポイント3、転生を...
素晴らしいので図書館で借りた後、結局買ってしまった。 宮沢賢治はただの幻想作家じゃなく、徹底的な思想とその実践にあるんですね。 入門書としても、非常に良い。 ポイント1,雨ニモマケズの「デクノボー」は不気味なマゾヒズムではない。 ポイント2,転生を信じていた ポイント3、転生を信じていたが、迷いもある「オキナグサ」 ポイント4,詩「青森挽歌」は名作である、と ポイント5,「わたくしといふ現象は 仮定された有機交流電燈の 一つの青い照明です」ってことを大正時代に考えるってすごすぎるだろう、と。 生き様も思想も結構壮絶で、そこに観察力と想像力が加わってあんな幻想世界が書けるんでしょうね。本当の天才なんだなあ、と感じます
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近代的自我を超える自我の一つの可能性を賢治に見る論考、と言ってしまっては味気ないが、その考証を賢治の人生と哲学へ深く降りて行くことによって美しい文体が生まれている。 「家」への違和感と「資本主義」への違和感から農村に入った賢治が感じる農村への違和感は、賢治の法華経的潔癖さと、彼...
近代的自我を超える自我の一つの可能性を賢治に見る論考、と言ってしまっては味気ないが、その考証を賢治の人生と哲学へ深く降りて行くことによって美しい文体が生まれている。 「家」への違和感と「資本主義」への違和感から農村に入った賢治が感じる農村への違和感は、賢治の法華経的潔癖さと、彼の生育環境にある。権力によってつくられた身体=存在を変え、エゴイスムを超えること。他者たちとの生命の交流の中に向けて開いていくこと。賢治の思想と実践は未完のものとして「現代社会」に生きる私につながっている。 見田先生が含意しているものはかなり深いと思う。再読します。
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宮澤賢治がどんな人かを十分理解している人は以外に少ないのかも知れません。それくらい賢治という人は、多面性を持った人です。この本は賢治の詩や童話の中に込められた賢治の自己犠牲の先にある願いや思いを明らかにしています。最後の「マグノリアの谷」では泣けてきそうでした。
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