武家の女性 の商品レビュー
藤原正彦の「名著講義」で題材になっていたのを見てから、ずっと半年ほど積読になっていたものをようやく読むことができた。 女性解放運動家山川菊栄が、自分の母の思い出話から、封建制度の時代から明治維新へと移り変わっていく、激動の時代を生きた武家の女性たちの日常を描いた本書。 倹しい...
藤原正彦の「名著講義」で題材になっていたのを見てから、ずっと半年ほど積読になっていたものをようやく読むことができた。 女性解放運動家山川菊栄が、自分の母の思い出話から、封建制度の時代から明治維新へと移り変わっていく、激動の時代を生きた武家の女性たちの日常を描いた本書。 倹しい当時の暮らしを、でも悲壮感に浸ることなく、女性や子供たちの生活に根ざした視点でいきいきと描いている。 物質的にも社会の制度的にも辛かったであろう時代を、ひょっとすると現代のわれわれよりも幸せだったのではと思わせるほど、人々のぬくもりの中で日々暮らしている彼らを美しく描き出していた。 子どもたちが、近くの藩士の奥方に裁縫を習いに行ったりお塾へ手習いに行ったりするその様は本当に微笑ましく、時代がいつであれ、日々の暮らしのその大もとにあるものは変わらないんだなと、しみじみと感じた。 ただ、「子年のお騒ぎ」「受難の時代」では、水戸藩の内紛のかどで、その本人のみならず、家族や幼い子供までが斬罪や永牢に処されたことが書かれていた。そういう時代があったという歴史の一部としてしか認識していなかった事実を、著者の語りから改めて知らされると、私たちと同じ、ごくごく普通に生きていた人々に本当にあったことなんだと強く思い知らされて、背筋が凍る思いだった。 終章で著者が、平凡な家庭の女たちこそが、力強く明るく、辛い時代を生き抜く土台を作ったのだとまとめていたのにすごく救われた気がした。
Posted by
別の本を探していた棚で、ふと見かけたもんで手にとりました。 幕末期水戸藩の下級武士の家庭はどんなんだったか、著者のお母様からの聞き書きです。 「よほどの上級の人はともかく、お武家様は町家の人間とは比べものにならないくらい貧しいんだけども、規律を守り節を乱さない毅然としたそ...
別の本を探していた棚で、ふと見かけたもんで手にとりました。 幕末期水戸藩の下級武士の家庭はどんなんだったか、著者のお母様からの聞き書きです。 「よほどの上級の人はともかく、お武家様は町家の人間とは比べものにならないくらい貧しいんだけども、規律を守り節を乱さない毅然としたその姿勢を、自分達とは違うものとして町民は敬っていました」みたいな話を聞いたことがあります。それを裏付けられた気が。 うーん。あんたらすげーわ。偉いわ。そりゃー私ら敵いませんわ。 そんな気する。
Posted by
左翼思想家、山川菊栄が母の語る、水戸藩の武士の家庭にあった話を淡々と綴った一冊。何となくきいていることも、こうやってきちんと書き留めていくことで後にものすごい重要な資料になるのよね。山川菊栄の筆が親族の話を書いているにもかかわらず、からっとした、客観性があるのは彼女の教育の高さと...
左翼思想家、山川菊栄が母の語る、水戸藩の武士の家庭にあった話を淡々と綴った一冊。何となくきいていることも、こうやってきちんと書き留めていくことで後にものすごい重要な資料になるのよね。山川菊栄の筆が親族の話を書いているにもかかわらず、からっとした、客観性があるのは彼女の教育の高さと比例しているのだろう。読みやすい。さすが柳田國男、いい人に頼んでいる。(2007.12.30)
Posted by
安政4年、水戸藩の下級武士の家に生まれた青山千世の一代記を、娘にあたる山川菊栄が聞き書きを作成した一代記として知られている。 江戸時代はリサイクルの時代といわれ、木綿の循環利用や形見分けの習慣が伝えられるけれども、根底には木綿や衣服が貴重品であった時代を物語る。 しかしそう...
安政4年、水戸藩の下級武士の家に生まれた青山千世の一代記を、娘にあたる山川菊栄が聞き書きを作成した一代記として知られている。 江戸時代はリサイクルの時代といわれ、木綿の循環利用や形見分けの習慣が伝えられるけれども、根底には木綿や衣服が貴重品であった時代を物語る。 しかしそうした内向きの出来事とは別に、元治元念に発生した水戸藩騒動や、明治維新によって没落の激しかった階層が上級武士か下級武士であったか。時代をこまかく記憶して記録化したことも重要であろう。家からでることには制限があったであろうが、細かく伝えていることは、藩にとって重要事件と解され、うわさの話のなかからそれなりに正確に事態を把握しようとした姿が見えてくる。
Posted by
筆者の山川菊栄は女性解放運動を行った人物として有名である。 女性解放運動家と聞いて強い女性のイメージを持ってしまったが、本書を読むと優しくて丸い性格の女性像が浮かんだ。 彼女の母や祖母から伝わった武家社会の女性像の話を読んで、男尊女卑というが当時の女性もそれなりに楽しく生きていた...
筆者の山川菊栄は女性解放運動を行った人物として有名である。 女性解放運動家と聞いて強い女性のイメージを持ってしまったが、本書を読むと優しくて丸い性格の女性像が浮かんだ。 彼女の母や祖母から伝わった武家社会の女性像の話を読んで、男尊女卑というが当時の女性もそれなりに楽しく生きていたのではないかな、と考えさせてくれる。
Posted by