カインの末裔 クララの出家 の商品レビュー
私は、人間というものはある程度、憎悪というものを燃料にしてつき動かされる部分があると思っている。 恵まれない境遇に、素手で憎悪を握りしめ、両腕をかなぐり振るう主人公に安らぎを与えて欲しい気もする私は、この主人公にシンパシーを感じ、どこか肯定的に読んでしまった。 ニーチェ的に読め...
私は、人間というものはある程度、憎悪というものを燃料にしてつき動かされる部分があると思っている。 恵まれない境遇に、素手で憎悪を握りしめ、両腕をかなぐり振るう主人公に安らぎを与えて欲しい気もする私は、この主人公にシンパシーを感じ、どこか肯定的に読んでしまった。 ニーチェ的に読めば、信仰宗教に身を委ね、資産家に取り入る笠井をルサンチマンの犠牲者として描き、主人公を超人として描いたとも言える。 クララに対しては、抑圧された、進んで内的自制へ傾く、思い込みの激しい人物として、少し距離を置きたいと感じる。
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「カインの末裔」 北海道の農場で、小作人として働く男 その名を仁右衛門という 身体が大きく、また非常に乱暴で しかも何かと僻みがましい男だった なにかあったら平気で人のせいにして逆恨みするような奴だ 農場の規則などまるっきり無視 人の親身な忠告にも耳をかさない 隣の女房と姦通する...
「カインの末裔」 北海道の農場で、小作人として働く男 その名を仁右衛門という 身体が大きく、また非常に乱暴で しかも何かと僻みがましい男だった なにかあったら平気で人のせいにして逆恨みするような奴だ 農場の規則などまるっきり無視 人の親身な忠告にも耳をかさない 隣の女房と姦通する 弱いものに八つ当たりもする まあ早い話、巨体まかせで生きてこれたために精神が未熟なのだ いつか自分の土地を持つ夢もあるが そんな調子で物事が上手くいくはずはない いろいろやって追い込まれた挙げ句 他の小作人にいいかっこ見せようと、地主の屋敷に直談判へ向かう しかしそこで 想像をはるかに超えた地主の暮らしぶりに打ちのめされた彼は その結果、ほんの少しの謙虚な心を手に入れ いずこへともなく逃げてゆくのだった 「クララの出家」 クララは裕福な家の娘で 道を歩けば誰もがふりかえる美少女である しかし、いつもわけのわからない憂鬱に悩まされていた その憂鬱はある日 路上にて発狂した青年を目撃したことから始まったのだ しかし青年は後に、聖職者となって人々の尊敬を集めるようになった そんな彼の姿を見ようと、教会に赴くクララだったが 全裸で説教するそのスタイルに衝撃を受けて そのまま懺悔室までついていき そこで、神の花嫁になることを命じられてしまう …どういうつもりで書かれたものかよくわからないんだけど とてつもなく淫靡な話のようにも思える 有島武郎がアナーキズムに興味を示していたのは確かなことだが
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カインの末裔。羨望と嫉妬で身を滅ぼす話かなぁと思ってるのですが、救いまで描かなくていいんだ、って思った。カインのしるしまでかかなくていいの。 クララの出家。あまり集中して読めなかったのはあるけど、文章は美しいけどよくわからなかった。 大学図書館913.6A76
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久し振りに読んだ。両方とも変な味わい。リアリズム性と観念性とのブレント加減がいかにも有島らしい。ただ、そのブレンド加減が、語り手のポジションの不安定さに繋がっている感も。作家としての方法的模索の一里塚、といった位置づけになるのかな。
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おそらく人生ではじめて読み切った一冊。ヘッセの車輪の下かと迷ったが、やはりこの作品で間違いない。 カインという名を大学のキリスト教概論という講義で耳にするまで、この作品のタイトルを完全に失念していた。 カインはアダムとイヴとの長男で弟を殺したがために神に追われた放浪者である。作中...
おそらく人生ではじめて読み切った一冊。ヘッセの車輪の下かと迷ったが、やはりこの作品で間違いない。 カインという名を大学のキリスト教概論という講義で耳にするまで、この作品のタイトルを完全に失念していた。 カインはアダムとイヴとの長男で弟を殺したがために神に追われた放浪者である。作中の仁右衛門はこのカインの末裔として、また地上の放浪者として描かれている。初読のとき(中学生)、そのような大きなバックグラウンドがある作品だとは思っていなかった。このことを踏まえて再読して、予想外に楽しめた作品だった。わたしにとっては最初の一冊であり、最高の一冊なんだなと感じた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
【Impression】 アカン、タイトルから勝手に色々想像しすぎてしまった。 誰が死ぬんやろうとかそればっかり考えて読んでた。 もしくは冒頭での様子から既にその行為を犯していたか。 タイトルとの関連があるとするなら、地主の家に行き「自分が人間なら向こうは人間ではないし、向こうが人間ならこっちが人間ではない」と考えて、馬を殺したところ。 人間だから馬を殺して生き残ろうという行為は普通なのか、人間ではないから馬を殺す行為は生存のためには普通の行動なのか。 それとも夢を断たれたんやろうか。 どっちともとれるが、「小作」という職業に関して言えば、社長の居ない会社みたい。 株主と労働者のみ。 【Synopsis】 ●どこからか訳ありな様子で一組の夫婦が放浪している。どうやら「農場」を目指しているようで、そこで小作人として働く手はずとなっていた ●このような生活には慣れているのか、到着の翌日から黙々と働く。男にはひそかに独立の夢を持っており、それに向かいお金を貯めるという予定を立てている ●しかし、一向に暮らし向きはよくならない。悪天候に見舞われ不作。男はルールを無視し利益を上げたが、赤ん坊が死ぬ、飼っていた馬が競馬によって骨折する、村の犯罪の犯人と疑われる。普段から「まだか」と呼ばれ、その風貌と性質から恐れられており、小作内においてもうまく関係を構築できていなかった。ある一家とは、確執が積み重なっていた ●そんな折、現状を打開しようと地主に対し、小作料の引き下げを願い出ることを決める。小作との関係改善と自身の境遇を良くするために。しかし、いざ函館に出、地主の生活を見て絶望する。 ●帰宅した男は役に立たなくなった馬を、一時は躊躇っていた馬の殺害を実行し、皮を剥ぐ。そして小屋を捨て放浪へ向かう。
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カインの末裔、生きる喜び・目的って何だろう?と考えさせられた。なぜ仁右衛門夫婦は力強く生きる力があるのか? クララの出家、クララのその後が知りたい。乙女の一時的な感情の高ぶりではないと言えるのか?
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素晴らしく力強い作品。物語で終始語られる主人公の粗暴さが、クライマックスである地主と相対するシーンをより凄惨なものとしている。圧巻の一言。生活に打ちのめされた主人公が人間とはなにか思い悩む姿はひどく悲しくせつない。
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キリスト教に関連する表題作二編。 本当に、有島武郎はもっと評価されるべき作家だと思う。二編とも、素晴らしい描写に満ちている。 解説によると、クララの出家のほうは、今日までほとんど顧みられていないとのことだが、クララが聖フランシスに懺悔する場面は本当に神聖であり、かつエロティック。...
キリスト教に関連する表題作二編。 本当に、有島武郎はもっと評価されるべき作家だと思う。二編とも、素晴らしい描写に満ちている。 解説によると、クララの出家のほうは、今日までほとんど顧みられていないとのことだが、クララが聖フランシスに懺悔する場面は本当に神聖であり、かつエロティック。 (2012.5)
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クララの出家のみ、しかも青空文庫にて。 クララの出家は、ど定番な駆け落ち物語。 最初に一目惚れした時に正に真っ逆さまに叩き落とされた気分なんだろうけど、やっぱ女はやると決めたら年齢関係無くしたたかです。
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