増補 新橋の狸先生 の商品レビュー
もともと昭和17年に著者が興味を持って調査していた人物に関する諸稿を一冊の本として出版されたものに、著作集刊行に際し、その後の調査結果を追加したものらしい。自分は例によって本著のタイトルになっている、新橋の狸先生こと、千七百年代後期から千八百年代にかけて新橋で占いをしながら、タヌ...
もともと昭和17年に著者が興味を持って調査していた人物に関する諸稿を一冊の本として出版されたものに、著作集刊行に際し、その後の調査結果を追加したものらしい。自分は例によって本著のタイトルになっている、新橋の狸先生こと、千七百年代後期から千八百年代にかけて新橋で占いをしながら、タヌキを愛し育て、タヌキに関する書画や著作を残した奇人、成田狸庵こと成田朝辰(なるたともとき)に関する評伝目当てで本書を手にとった。著者は書誌学や近世文学の研究者なので、基本的に内容は狸庵本人やその周辺人物が残した記録をもとにまとめたもので、フィクションの要素は皆無、なによりも気になる、タヌキを愛好するようになった本人の内面などは、よくわからないのだけど、それでも言動の一部はうかがい知ることができ、非常に満足。なにより、時空を超えて、その時代、そこに自分と同好の士が息づいていた、という証拠を目にすることができ、とても楽しい時間を過ごせた。なお、本書が取り上げている狸庵氏に関する資料は代表的な『狸説』をはじめそのほとんどが、国会図書館デジタルアーカイブで、家にいながらにして目にすることができ、草書体で書かれていて、ちょっとハードルが高いのだけど、ぜひ一度、時間を取ってきちんと読んでみたい。
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