自動車の社会的費用 の商品レビュー
著者も書名も知っていたけれど未読のまま数年。書店でたまたま目に留まって購入。 B/C分析は2020年の今も道路計画を評価するベースの考え方だが、冒頭でさっそく斬り捨てられていて笑ってしまった。 令和になってようやく歩行者フレンドリー(ウォーカブル)な計画が積極的に志向されるよう...
著者も書名も知っていたけれど未読のまま数年。書店でたまたま目に留まって購入。 B/C分析は2020年の今も道路計画を評価するベースの考え方だが、冒頭でさっそく斬り捨てられていて笑ってしまった。 令和になってようやく歩行者フレンドリー(ウォーカブル)な計画が積極的に志向されるようになり、時代が追いついてきた感もある。 「社会的費用」と銘打っているものの、数値的な評価については紙面上重きを置かれておらず、159頁からの10頁ほどでまとめ的に論じられている程度。しかし、そこに至るまでの経済学の思考についても丁寧に述べられていて読みやすい。 宇沢モデルのような著名な業績からは離れた分野だが、名著として知られているのも納得。
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「自動車の社会的費用」宇沢弘文著、岩波新書、1974.06.20 180p ¥799 C0233 (2020.11.07読了)(2020.10.28借入)(2019.02.05/45刷) いろんな方々が勧める本なのでいつか読もうと思っていたのですが、先日、日本経済新聞で、池上彰さ...
「自動車の社会的費用」宇沢弘文著、岩波新書、1974.06.20 180p ¥799 C0233 (2020.11.07読了)(2020.10.28借入)(2019.02.05/45刷) いろんな方々が勧める本なのでいつか読もうと思っていたのですが、先日、日本経済新聞で、池上彰さんが、読書週間にどうでしょうか、と勧めていたので、この機会に読んでしまうことにしました。1974年のベストセラーです。 宇沢弘文 略歴(日経の記事より) 1928年生まれ 1951年、東京大学理学部数学科卒業 特別研究生となり、経済学の研究を始めた 1956年に渡米、スタンフォード大助教授やシカゴ大教授などを歴任した 1968年に帰国し、 1969年、東大経済学部教授に就任した 得意の数学をいかして60年代、数理経済学の分野で数多くの先駆的な業績をあげた 経済が成長するメカニズムを研究する経済成長論の分野で、従来の単純なモデルを、消費財と投資財の2部門で構成する洗練されたモデルに改良 1974年、「自動車の社会的費用」がベストセラーになった 交通事故や排ガス公害などを含めた自動車の社会的コストを経済学的に算出し、大きな話題を集めた 地球温暖化をはじめとする社会問題にも積極的に取り組み、発言・行動する経済学者としても知られていた 1983年に文化功労者、 1989年に日本学士院会員に選ばれ、 1997年に文化勲章を受章した 2002年3月には日本経済新聞に「私の履歴書」を執筆した 2014年9月18日、肺炎のため死去、86歳 「日本における自動車通行の特徴を一言にいえば、人々の市民的権利を侵害するようなかたちで自動車通行が社会的に認められ、許されているということである。ところが、自動車通行に限らず、すべての経済活動は多かれ少なかれ、他の人々の市民的権利に何らかの意味で抵触せざるを得ないのが現状である。このことは、産業公害の例を出すまでもないことであろう。ところが、経済活動に伴って発生する社会的費用を十分に内部化することなく、第三者、特に低所得者層に大きく負担を転嫁するようなかたちで処理してきたのが、戦後日本経済の高度成長の過程の一つの特徴であるということができる。そして、自動車は、まさにその最も象徴的な例であるということができる。」(ⅲ頁) 【目次】 まえがき 序章 1 自動車の問題性 2 市民的権利の侵害 Ⅰ 自動車の普及 1 現代文明の象徴としての自動車 2 自動車と資本主義 3 アメリカにおける自動車の普及 4 公共的交通機関の衰退と公害の発生 5 一九七三年の新交通法 Ⅱ 日本における自動車 1 急速な普及と道路の整備 2 都市と農村の変化 3 非人間的な日本の街路 4 異常な自動車通行 Ⅲ 自動車の社会的費用 1 社会的費用の概念 2 三つの計測例 3 新古典派の経済理論 4 社会的共通資本の捉え方 5 社会的コンセンサスと経済的安定性 6 市民的自由と効率性 7 社会的共通資本としての道路 8 自動車の社会的費用とその内部化 Ⅳ おわりに あとがき ●欠陥道路(5頁) 自動車事故による死亡者が年々二万人にも達し、100万人近い負傷者が出ているにもかかわらず、歩・車道も分離されていない欠陥道路に依然として自動車の通行が許されている。そして、都市と農村を問わず、子どもたちにとって、自動車を避けるという技術を身につけることが、生きてゆくためにまず必要になっている。これまで貴重な遊び場だった街路は自動車によって占有され、代替的な遊び場もない。 ●社会的害毒(10頁) 自動車の通行によって、都市環境は破壊され、自然は汚染されてきた。そして、市民生活の安全を脅かし、社会的な安定性は失われつつある。 ☆関連図書(既読) 「欠陥車と企業犯罪―ユーザーユニオン事件の背景」伊藤正孝著、現代教養文庫、1993.03.30 「クルマを捨てた人たち―自動車文明を考える」田中公雄著、日経新書、1977.03.25 「自動車が走った―技術と日本人」中岡哲郎著、朝日選書、1999.01.25 「自動車絶望工場」鎌田慧著、現代史出版会、1973.12.05 「自動車王国の暗闇」鎌田慧著、すずさわ書店、1984.04.10 「アメリカ自動車幻影工場」鎌田慧著、潮出版社、1985.11.25 (2020年11月11日・記) (アマゾンより) 自動車は現代機械文明の輝ける象徴である。しかし、自動車による公害の発生から、また市民の安全な歩行を守るシビル・ミニマムの立場から、その無制限な増大に対する批判が生じてきた。市民の基本的権利獲得を目指す立場から、自動車の社会的費用を具体的に算出し、その内部化の方途をさぐり、あるべき都市交通の姿を示唆する。
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少々の時代遅れ感は否めないが、社会的費用という概念を学習するにはベスト。 企業は機会費用という概念が好きだが、同じように見えない費用として社会的費用は改めて見直されてもいいのでは。 例えば「某OSの社会的費用」。僕らは1年のうち何時間ただグルグル回るアイコンを見させられ、ハッカー...
少々の時代遅れ感は否めないが、社会的費用という概念を学習するにはベスト。 企業は機会費用という概念が好きだが、同じように見えない費用として社会的費用は改めて見直されてもいいのでは。 例えば「某OSの社会的費用」。僕らは1年のうち何時間ただグルグル回るアイコンを見させられ、ハッカー対策に幾らのお金を使っているのか?なんてね。
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この本にある経済学的な思考は誰にでも備わっているべきである。我々は、社会的な価値判断を前提として生きている。しかし、その社会的価値判断は一度下されると、再び検討されることがない場合がある。それが問題となるのは、本書の主題となっている「自動車通行に伴う社会的費用の発生」といったよう...
この本にある経済学的な思考は誰にでも備わっているべきである。我々は、社会的な価値判断を前提として生きている。しかし、その社会的価値判断は一度下されると、再び検討されることがない場合がある。それが問題となるのは、本書の主題となっている「自動車通行に伴う社会的費用の発生」といったような、社会的価値判断が結果的に我々に被害を及ぼしている場合と言って良いだろう。 1973年という、高度経済成長の盛りに上梓され、世に送り出された本書の提言は今もなお現実的なものとして、目の前で繰り広げられている我々の価値判断に伴う社会的活動を考え直すきっかけと、その際に必要な思考の土台を読者に対して提供している。 当時、社会問題となっていた「公害」も、今日における「気候変動問題」も本書の射程である。 本書を読むことによって、「自らがどのような社会に生きているか」「どのような社会に生きるべきか」が見えると同時に、いかに、「日本社会における都市構造と自動車交通」を含めた社会人インフラストラクチャーが「非人間的」かつ「環境不適合」なのかが自ずと感じられることだろう。 21世紀が始まって、20年を迎えようとしているが、度重なる自然災害に、凶悪事件、自殺、交通事故、原発の問題など、様々な社会的価値判断が引き起こしてきた問題が眼前に山積している。 新型コロナウイルスという「社会的脅威」が我々を脅かしている今日こそ、本書を読み、ありうべき社会とは何か、そしてそれはいかに造られるべきかを考えることは有益である。
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昨今、これまで以上に自動車事故のニュース(とりわけ、あおり運転や高齢者ドライバーによるもの等)がクローズアップされている。私は自動車を運転しないものの、著者の名著に触れようと手に取ったものだ。 著者は、社会的資本である道路が誰のためのものなのか、歩行者でなく、自動車のためのもの...
昨今、これまで以上に自動車事故のニュース(とりわけ、あおり運転や高齢者ドライバーによるもの等)がクローズアップされている。私は自動車を運転しないものの、著者の名著に触れようと手に取ったものだ。 著者は、社会的資本である道路が誰のためのものなのか、歩行者でなく、自動車のためのものなのか、ということを迸る憤怒を交えながら(時には、自動車をガン細胞とも)、熱い思いで読者に語りかける。自動車保有率など、現在の状況とは符合しない点もあるものの、半世紀ほど前に刊行されたその警句的な示唆に富んだ内容に読者と著者の距離感が縮まっていくことを自覚してしまうほどだ。
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こちらも読書猿さんの図書「はじめての新書」での紹介に よるものです。ちょっと冗長なところもあるけど、こんな経済学もあるのかと軽いショックを受けます。
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現実の社会問題と経済学の理論とが、斬り結ぶさまを学ぶことができた一冊。 自動車という、それなしには考えられない事柄に対しても、批判理論を展開し、同時に理論的な枠組みを越えた社会規範についても論じられている。 社会経済における自由と公正に関する議論では、”応益負担””応能負担”...
現実の社会問題と経済学の理論とが、斬り結ぶさまを学ぶことができた一冊。 自動車という、それなしには考えられない事柄に対しても、批判理論を展開し、同時に理論的な枠組みを越えた社会規範についても論じられている。 社会経済における自由と公正に関する議論では、”応益負担””応能負担””応分負担”それぞれの方法の適応が課題となっている。最適な解はおそらく一つではないし、また、不変とも限らない。常に社会的な議論と合意形成の努力が必要であろう。 その際には、本書で示されているような、実際の課題を正面から論じる勇気、その理論と規範とを論じる知性が欠かせない。 今日、自動車に関して、新たな技術的、社会的状況も生まれている。どのように論じることができるだろうか。Jane Jacobs『アメリカ大都市の死と生』も合わせて参照したい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
車が当たり前の社会で、考えさせられる内容です。ペーパードライバーの私には、納得できることだらけでしたが、日常的に車に乗っている人は「そうは言ってもね〜」と否定的にみられるかもしれません。道は、本来歩行者のためのもの。高速道路などの自動車専用道路以外は、「自動車は歩行者の道を走らせて頂いている」くらいの意識で丁度いいのかもしれません。マイノリティーな意見だと思います。経済優先の社会では無視されるに違いありません。しかし、無駄なお金を負担し合っていることを、日本人は認識すべきかもしれません。
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【由来】 ・「岩波新書を読む」で。これもかなりの基本書みたい。 【期待したもの】 ・ ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。 【要約】 ・ 【ノート】 ・
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40年前のこのような考え方を著した事に脱帽.数値的には古いが社会的共通資本という考え方は色あせない.ただ現実のどう落とし込んでいくかと言うのは難しいね.
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