魔の山(上) の商品レビュー
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23歳のハンスカストルプが魔の山,ベルクホーフというサナトリウムへやってきて7ヶ月。謝肉祭,ワルプルギスの夜まで。 ハンス・カストルプの生い立ち,ハンス・カストルプとヨーアヒム・チームセンの関係と各々の性格や興味,人文主義者でハンス・カストルプの教師たろうとするイタリア人のロドヴィゴ・セテムブリーニとの出会い,時間の流れについて,ハンス・カストルプが一流ロシア人席に座るクラウディア・ショーシャ夫人に興味を抱くまでの心の動きと恋心の扱い方,病気というものの捉え方などなど。
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とにかく長い。退屈。特に何も起きないまま上巻が終わる。ちょこちょこ動きはあるのだけれど。サナトリウムでの様々な人々との交流を通した青年の成長物語、とでもいうのかしら。病気、死、宗教、戦争、いろんなテーマを登場人物を通してひたすら討論していく場面が続く。しんどい。下巻、盛り上がりを見せてきたところで終わってしまう。しんどい。小説というよりも哲学書のような。しんどかったけど達成感はあった。これを読めたらもう何でも読めそう。ハンスが遭難しかけて生と死について開眼していくところは繰り返し読んだ。あの部分のために他を読んだのだと言ってもいいレベルで沁み入った。結論、しんどかったけど読んでよかった。しんどいけど読んだ方がいい。 好きだった箇所をメモしておいたので貼っておく。 「人間は死よりも高貴であり、死に従属するには高貴すぎる、頭脳の自由を持つからだ。人間は生よりも高貴であり、生に従属するには高貴すぎる、心の中に敬虔さを持つからだ。」
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「退屈な教養小説」というのが率直な感想である。 「魔の山」と言うと何やらファンタジーな空間を連想する向きが多そうだが、実際には結核療養のための施設…サナトリウムである。 高山の療養施設ながらまるでリゾート施設のような雰囲気で、若くしてここに送られた主人公は特に将来を悲観する事も...
「退屈な教養小説」というのが率直な感想である。 「魔の山」と言うと何やらファンタジーな空間を連想する向きが多そうだが、実際には結核療養のための施設…サナトリウムである。 高山の療養施設ながらまるでリゾート施設のような雰囲気で、若くしてここに送られた主人公は特に将来を悲観する事も無く周囲の一癖も二癖もある大人達から色々学ぶ事になる。 まぁ大半は主人公について回るセテムブリーニとかいうオッサンの寓話的警告で、表向きはただ食って散歩して寝ているだけなのに分厚い本の上下巻とかよく書けたものだ。 元々は「大学に入ったら何やら小難しそうな本に挑戦したい」というだけの理由で読んだので内容らしい内容はもうほとんど覚えていない。 この本を読んで何か一つ得た事があるとすれば主人公がやたら気にしている人妻のクラウディア・ショーシャがサルバドール・ダリの妻となったガラのモデルらしいと後に判った事ぐらいだ。
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これは読むのに苦労したなー… なぜならば終盤のハンス青年の ほのかな思いが成就するときに 他の言語でしゃべっているのを表現するために カタカナ混じりの会話になってるのよ。 平凡な位置青年であるハンスが いとこの療養に付き合いうために 3週間の期限付きでサナトリウムに 行くことになったけれども… …がつく通りでお察しです。 それとページ数で。 結局彼も発熱により サナトリウムから降りられなくなるのです。 平凡な彼は やがて様々な患者に感化され 心の成長を遂げていきます。 人体に興味を覚えたり 恋というものを覚えたり そして、それが成就したり。 下巻、すごく気になるのよね…
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「このことに連関して、たとえばトーマス・マンの小説「魔の山」では、いま扱っている強制収容所の囚人とやや比喩的に類似した状況にある人々、すなわち結核療養所の入所患者で、同様に退院の期限を知らず、同様に「未来を失って」、すなわち未来の目的に向けられていない存在を送っている人々の心理的...
「このことに連関して、たとえばトーマス・マンの小説「魔の山」では、いま扱っている強制収容所の囚人とやや比喩的に類似した状況にある人々、すなわち結核療養所の入所患者で、同様に退院の期限を知らず、同様に「未来を失って」、すなわち未来の目的に向けられていない存在を送っている人々の心理的な変化が描かれているのである」『夜と霧』フランクル p.174
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「ノルウェイの森」でキーとなる物語。サナトリウムに入院している従兄ヨアヒムを、学校出たてのハンス・カストルプが尋ねて、そこで7週間のつもりが7年も過ごすことになる。大学工学部を出たばかりの世間知らずなところがなんともリアル。セテムブリーニが御託を並べるところがウザイが、経済的な後...
「ノルウェイの森」でキーとなる物語。サナトリウムに入院している従兄ヨアヒムを、学校出たてのハンス・カストルプが尋ねて、そこで7週間のつもりが7年も過ごすことになる。大学工学部を出たばかりの世間知らずなところがなんともリアル。セテムブリーニが御託を並べるところがウザイが、経済的な後ろ盾が無く困窮している彼と、従兄弟達の恵まれた生活とが第1の対比をなす。下巻に第2の対比がある。たっぷり頁を使ったショーシャ夫人との恋愛沙汰がどうなるのか。閉じた空間に医者、患者ら多彩な登場人物がいて、読んでも読んでも飽きない。
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上巻は3日、下巻は読み終えるのに1ヶ月半もかかってしまった。 なんと切り口の多い作品。。 まだ完全には消化しきれていない状態でこの文章を書いている。 こういった間口の広い作品は、 フィニッシュをどこに持ってくるかという問題があり、 巻末の解説でも書かれているように、 実は作者自...
上巻は3日、下巻は読み終えるのに1ヶ月半もかかってしまった。 なんと切り口の多い作品。。 まだ完全には消化しきれていない状態でこの文章を書いている。 こういった間口の広い作品は、 フィニッシュをどこに持ってくるかという問題があり、 巻末の解説でも書かれているように、 実は作者自身も明確にはそれを決めずに書き始めて 流れに身を任せたようだが、 個人的には最終章の決闘のシーンが終わった時点で 充分な満足感が得られ、 あとはどう結論をつけても何らかの片はつくだろうと感じたので、 それだけに、このフィニッシュには少々不満が残った。 他の人はどう感じたのか気になったので色々とレビューを読んでみたが、 まあ「時間の扱いが見事な作品」「精神論の教養小説」などと 評する人の多いこと。。 これだけ切り口の多い作品に対して、特に印象に残ったのがそこ? 感性が拙いとしか言いようがない。 そのような中学生の読書感想文レベルの感想にしか消化できないような 内容の薄い作品では決してない。 まず、舞台設定の見事さだろう。 標高1600メートルの山上にある高級療養施設。 抑圧の強い地上の現実世界から隔離されていて、 病気と死がいつも隣り合わせ、建物の周辺は自然に恵まれ、 気候変化が激しく四季に捕われない季節感があるという、 筆力次第で様々な非現実性を創出しやすい舞台。 見事な設定だ。 また、この作品を難解と感じさせる要因として、 第6章のセテムブリーニとナフタの激しい会話のやり合いがある。 精神と自然、病気と死、革命と伝統、自由と秩序。 色々詰め込んでいるが、 メルヴィル「モービィ・ディック」のような、 ただ単に詰め込んだだけで、 その事が全く何の効果も成していない駄作とは違い、 この作品は「詰め込み」が作品と綺麗に調和し、 芳醇な広がりを演出している。 しかし何と言っても、この作品の一番の読ませ所は 各シーンの起承転結のつけ方だろう。 過剰なまでの精神論、政治論、宗教論の応酬、 気まぐれに表情を変える美しい自然の描写、 音楽の与える高揚感、 様々な方法を駆使してクライマックスまで持っていき、 感情が最高潮にかき立てられた所ですぱんとシーンがカットされる。 この切り方が実に見事で、この読後感だけでも 読んで良かったと思わせるものが充分にある。 こういった粒ぞろいの各章を全体として俯瞰したとき、 上記「時間の扱い」「精神論」が作品に与える深みにも 唸らせられるのであって、 この作品を「時間に関する小説」「教養小説」などと単純に 一面的な部分を切り取って断定するのはナンセンスである。
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読み終わったというか… ぶあっつい文庫本の半分読み終わっても、まだ物語が始まってから24時間経ってない、しかも要約すると ご飯食べてお散歩して寝てた。 …という。 いや、内容は濃いんですけど。 考察があっちこっち行き過ぎて ついて行けず… 話の続きは?が気になって 断念し...
読み終わったというか… ぶあっつい文庫本の半分読み終わっても、まだ物語が始まってから24時間経ってない、しかも要約すると ご飯食べてお散歩して寝てた。 …という。 いや、内容は濃いんですけど。 考察があっちこっち行き過ぎて ついて行けず… 話の続きは?が気になって 断念しました… ううぅ…最後まで読みたかった… 2人のお祖父ちゃんの喪服の話が面白かった。
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山上にあるサナトリウムを訪れた青年ハンス・カストルプが自らも結核を患っていることが発覚し、3週間の滞在予定のはずが魔の山にて長い時を過ごす教養小説…なのだが、上巻を読む限りでは主人公は小説内で流れていく時間そのものではと思えてしまう。時間と空間というのは世界の特性ではなく人間の意...
山上にあるサナトリウムを訪れた青年ハンス・カストルプが自らも結核を患っていることが発覚し、3週間の滞在予定のはずが魔の山にて長い時を過ごす教養小説…なのだが、上巻を読む限りでは主人公は小説内で流れていく時間そのものではと思えてしまう。時間と空間というのは世界の特性ではなく人間の意識の特性によるものであり、時間が持つ主観的な相対性に対して自覚的な言及が興味深い。病院内の過ぎたようで遅々として進まぬ退屈な時間と停滞しているように見えて瞬く間に過ぎ行く時間、そうした対比が小説内の構造として表現されているのだ。
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上下巻合わせて1200ページ余りながら、不思議な物語と精神論・宗教論が混ざり合い、非常に難解な物語でした。 読み進めることが、まさにタイトルのごとく「魔の山」を登ることのようでした。。。 と冗談はさておき、 本書は、主人公ハンス・カストルプの結核を中心に、病気という面から「生と死」の考察と、サナトリウムという療養所のある平地と隔離された街を「時間」の考察という、2つの大きな主題から成り立ちます。 主人公のハンス・カストルプは、優柔不断というか、自己主張の少ない青年で、従兄弟のヨーアヒムを見舞うために、3週間の予定でサナトリウムを訪れます。しかし、サナトリウムで結核と診断され、長期療養を言い渡されるも、主人公のハンスはそれほど抵抗なく、療養を受け入れます。そして、時間的に孤立した療養所に留まることになるのです。 病気が人生観を変えたという話は、聞いたことがあると思います。病気は生と死の中間にあるものとも言えますが、病気は生の方向を良くも悪くも修正できる力をもつものなのかもしれません。 もう一つの主題である「時間」についてですが、この時間の魔術は、私達の時代でも容易に想像できるものなのではないでしょうか。普段の社会生活の中でも、時代の潮流に乗れていないと感じたり、世のトレンドとは無縁なコミュニティしか持ち合わせていなかったりと。。。 ある種、ゲーテとは異なる教養小説。
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