ゴリオ爺さん(上) の商品レビュー
強者が弱者を踏み台にしていく、金と欲望が渦巻く当時のパリ社交界や社会の暗部。その世界で束の間の栄光を摑んだ勝者と、強者に利用された敗者、それぞれが辿る果ての破滅。そうした社会での立身出世意を夢見る一方でみずみずしい純真さもあわせ持っている青年と、娘二人を社交界に送り出して貢ぎ続け...
強者が弱者を踏み台にしていく、金と欲望が渦巻く当時のパリ社交界や社会の暗部。その世界で束の間の栄光を摑んだ勝者と、強者に利用された敗者、それぞれが辿る果ての破滅。そうした社会での立身出世意を夢見る一方でみずみずしい純真さもあわせ持っている青年と、娘二人を社交界に送り出して貢ぎ続けた挙句、報われないまま落魄しきって最期を迎える、強烈な父性愛をもつ老人との交わり。これらを巧みな構成と迫真の描写でものして強烈な印象を与える本作がバルザック35歳の作品であることには、音楽の世界でのシューベルトやモーツァルトの才能を思ってしまいます。 この作品を読むと、再登場人物の前後談を含むバルザックの作品全体『人間喜劇』への興味がいや増します。 バルザックの作品は、学生時代に読んだ『「絶対」の探求』『従兄ポンス』『従妹ベット』以来。今回、岩波文庫の2024年一括重版で出てきたのを機に読みましたが、やはり代表作の本作を最初に読むべきだったな、と今更ながら思いました。
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いつの時代になっても変わらない人間の欲の深さや嫉妬、見栄といった負の部分に多くの焦点が当たっているので、時代を超えて迫ってくるものがあります。ゴリオ爺さんは、自分で分かっていながら娘たちに尽くしたのでしょう。その部分が可哀想で涙が出ました。
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ゴリオが見せた父性愛とその顛末はトラウマとして封じ込められ,ラスティニャックの欲望は前向きなものとして残される,そういう時代かもしれない。 文学作品として見た場合,写実主義の代表とも言えよう書き込みの多さが特徴的である
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ゴリオ爺さんは傍から見るとかわいそうな人だけど、本人は娘二人を愛し続けることで満足しているのだから幸せなのかもしれないな。むしろ娘は過保護に育った分、お金があっても幸せではない気がする。しかしラスティニャックはダメ男だなぁ。若い頃はあれくらいハチャメチャでいいのかもしれないが、こ...
ゴリオ爺さんは傍から見るとかわいそうな人だけど、本人は娘二人を愛し続けることで満足しているのだから幸せなのかもしれないな。むしろ娘は過保護に育った分、お金があっても幸せではない気がする。しかしラスティニャックはダメ男だなぁ。若い頃はあれくらいハチャメチャでいいのかもしれないが、こちらの家族は可哀そう。振り返ると自分にもラスティニャック的なところがあった。家族には迷惑かけたなぁ。
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ピケティの21世紀の資本から読んでみようと思った本。 当時のパリの貴族の様子が描かれている。特に感情面の描写が豊かなのがとても良いと思った。 法学部の楽聖がいかに立身出世をしていくかを考え、社交界を渡っていこうかという序章。 どのように振る舞うべきかについても考えさせられる。
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再読終点。前回より楽しめた。人間の汚ない面が強調されているように思って、前回は気分が悪くなったけれど、こういう浅ましい人間は、実はどこにでもいることに気がついた。バルザックはおもしろい!
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彼女のからだつきぜんたいがこの下宿屋の特徴をあらわし、またその反対に下宿屋は彼女の人品骨柄を包含しているのだ。
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あれやこれやとお金関係で父を頼りに来る娘達に父はこれ以上にない愛情で接するが、自分が最期という時に見舞いにも来ない娘達の本性を随分前から知っていた風に言うゴリオにはとても驚きました。 熊本学園大学:(まんぼう)
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とにかく、くどい。 これがフランス古典なのか。 しかしながら、日本文学にはないこのくどさが、 われわれ読者に情景をありありと浮かばせる。 想像の余地がないということは、筆者の思い描く場面がそのまま 伝えられているということでもある。 場面をある程度把握するまでは、確かに疲れる...
とにかく、くどい。 これがフランス古典なのか。 しかしながら、日本文学にはないこのくどさが、 われわれ読者に情景をありありと浮かばせる。 想像の余地がないということは、筆者の思い描く場面がそのまま 伝えられているということでもある。 場面をある程度把握するまでは、確かに疲れる作品ではあるが、 一度頭の中に思い描けば、その中で進む物語にのめり込まずにはいられないだろう。
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古典イコールお堅くてとっつきにくいのかな~、と手を出さずにいたけど全然そんなことがなくて面白い。 パリジャンの言葉遊びを交えた軽快な会話や、王政復古時代の貴族の馬鹿馬鹿しくも本人たちにとっては必死な生活が興味深い。
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