ヘンリ・ライクロフトの私記 の商品レビュー
ギッシングの主作です…
ギッシングの主作です。繊美この上ない自然描写は英国人ならざる我々をも魅してやみませんが、何よりも我々の心をうつのはこの作のすみずみにまで行きわたる、自分というものに対する強靭な誠実さであると思います。
文庫OFF
岡崎武志『読書の腕前』で 「およそ読書人と呼ばれる人の本棚に、 これがないことはありえない」(P51) と言わしめた本書。
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これはギッシング作の架空である人物、ヘンリ・ライクロフト私記である。ライクロフトの私記では、春、夏、秋、冬、と季節毎の情景やライクロフトの郷愁の念が文章の中で躍動している。花のひとつひとつの名前を書き、自然や景色、そうしてイギリスの文化について叙情的に四季とともに語られている。ギ...
これはギッシング作の架空である人物、ヘンリ・ライクロフト私記である。ライクロフトの私記では、春、夏、秋、冬、と季節毎の情景やライクロフトの郷愁の念が文章の中で躍動している。花のひとつひとつの名前を書き、自然や景色、そうしてイギリスの文化について叙情的に四季とともに語られている。ギッシングはきっと架空のライクロフトという人物を投影することによって自身の葛藤や、貧乏であったこと、それらに付属する感傷を昇華する事が出来たのだと思う。 ライクロフトはこのような事を語っている。老年になり歴史について史書を読む必要はない。私は「ドンキホーテ」を読みたい、と。楽しむ為に、と。ギッシングに於けるライクロフトという架空の人物が作り出され、それが本になり彼は成功を遂げた。イギリス中で愛読された。しかしその数ヶ月後にギッシングは死んだのだ。友は悲惨な死であったと言った。ライクロフトの言う望んだ死は遂げられなかったのだ。 私はこれを読み、自然というものを、四季というものを大事にしたいと思った。ひとつひとつの変化を毎日捉えられるように、ライクロフトのようにはいかなくとも、微量の僅かばかりの活力を生を、大地の匂いを楽しみたい。そう思った。
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ギッシング『ヘンリ・ライクロフトの私記』岩波文庫 読了。移りゆく四季の中で、読書を愛する主人公が人生を回顧し思索にふけりながら、片田舎で穏やかな余生を送る。読書人の境地ともいえる。読中たまに飽るが、散見する彼の思想には共感する部分が多い。再読を重ねるほどに妙味を堪能できるだろう。...
ギッシング『ヘンリ・ライクロフトの私記』岩波文庫 読了。移りゆく四季の中で、読書を愛する主人公が人生を回顧し思索にふけりながら、片田舎で穏やかな余生を送る。読書人の境地ともいえる。読中たまに飽るが、散見する彼の思想には共感する部分が多い。再読を重ねるほどに妙味を堪能できるだろう。 2010/04/14
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ヘンリ・ライクロフトという架空の人物の隠遁生活におけるエッセイ集のようなもの。ライクロフト=ギッシングとみればエッセイであり、そう見なければ、文学作品となる? 解説には、自然の描写に共感できる、とあったが、そうでもない。正直に言うと、最後まで読み通すのには、骨が折れた。こういう...
ヘンリ・ライクロフトという架空の人物の隠遁生活におけるエッセイ集のようなもの。ライクロフト=ギッシングとみればエッセイであり、そう見なければ、文学作品となる? 解説には、自然の描写に共感できる、とあったが、そうでもない。正直に言うと、最後まで読み通すのには、骨が折れた。こういう本を楽しんで読めるようになりたい。
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若いときはいろいろ苦労した。特にお金はなかった。が、今、こうして思いがけず遺産が転がり込み、自然のなかで悠々自適の生活をおくっている。もう既に野心はない。自分の人生も既に終わっているのだと認識する。人生の秋から冬にかけて、読書と散歩の日々をおくる。安らかな死を願いつつ。 とい...
若いときはいろいろ苦労した。特にお金はなかった。が、今、こうして思いがけず遺産が転がり込み、自然のなかで悠々自適の生活をおくっている。もう既に野心はない。自分の人生も既に終わっているのだと認識する。人生の秋から冬にかけて、読書と散歩の日々をおくる。安らかな死を願いつつ。 といった本。 本好きだったら、こういう生活、老後を送って見たいと誰もが思うだろう。まさに私の夢の生活そのものか。 が、これもギッシングの夢想でしかなく、安らかな死の夢は叶わず、彼は異国で寂しく死んで行くのであった。 現実は厳しい。
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英国の作家ギッシングが、20世紀初頭に、南イングランドの田園地帯で、散歩と読書に費やす1年間の日々を、ライクロフトという初老の男性の手記というかたちで著した自伝的著作。 渡部昇一が1976年発刊の伝説のベストセラー『知的生活の方法』で、「知的生活とはどのようなものであるかを典雅な...
英国の作家ギッシングが、20世紀初頭に、南イングランドの田園地帯で、散歩と読書に費やす1年間の日々を、ライクロフトという初老の男性の手記というかたちで著した自伝的著作。 渡部昇一が1976年発刊の伝説のベストセラー『知的生活の方法』で、「知的生活とはどのようなものであるかを典雅な筆致で示したことによって、今日なお、多くの人につきることのない感興を与えている」と書き、書評家の岡崎武志が『読書の腕前』(2007年)で、「およそ読書人と呼ばれる人の本棚に、これがないことはありえない」という、日本の知的生活を求める本好きにも愛され続ける作品である。 著者自身は平穏で幸せな一生を送ったとは言い難いが、最晩年に、自らの理想とした生活~自然の溢れる田園地帯で、季節の移り変わりを感じつつ、本を読み、思索に耽る生活~を著した本書は、発表から一世紀を経て、更なる物質社会で忙しない日常生活を余儀なくされる我々に、一時の安らぎを与えてくれると同時に、強い憧憬の思いを抱かせる。 本好きにとって、晩年に送りたい生活のモデルのひとつである。 (2007年11月了)
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主人公は非常な本好きで本にまつわるエピソードがけっこう出てきます。 そんな場面では思わず「そうなんだよ、わかるよ」と主人公の肩を叩きたくなる事が何度もありました。 さらには言葉や文字では表現できないけど確かに自分の中にあった気持ちを見事な表現で代弁してくれているような箇所も出てき...
主人公は非常な本好きで本にまつわるエピソードがけっこう出てきます。 そんな場面では思わず「そうなんだよ、わかるよ」と主人公の肩を叩きたくなる事が何度もありました。 さらには言葉や文字では表現できないけど確かに自分の中にあった気持ちを見事な表現で代弁してくれているような箇所も出てきました。 そんな時は「君の言う通りなんだよ」と抱きつきたくなる衝動に駆られもしました。 作中に出てくる本で読みたくなったものも数多くありました。 ただ興味の湧かない事に関するエピソードに対して冗長に感じたりもしましたし、言われるほど自然描写に卓越した物があるように感じられないのは私に責任があるのかな。
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困難極めた人生を、思いがけず手に入れた大金によって、片田舎へ引っ越し、古典文学や自然に触れながら、充実した隠居生活を送る作家ヘンリ・ライクロフト。 あまり幸福な人生とは言えなかった著者ギッシングの魂の叫びが、ヘンリ・ライクロフトという人物に託されている。 南イングランド片田舎...
困難極めた人生を、思いがけず手に入れた大金によって、片田舎へ引っ越し、古典文学や自然に触れながら、充実した隠居生活を送る作家ヘンリ・ライクロフト。 あまり幸福な人生とは言えなかった著者ギッシングの魂の叫びが、ヘンリ・ライクロフトという人物に託されている。 南イングランド片田舎に広がる田園風景の描写が素晴らしく美しい。
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死に方も含めて、著者の理想像だったのだろう。金はあり、家族はおらず、仕事としての著作はせずに、ごく限られた友人とだけ語らって、美しい自然の中で静かに暮らす。それは著者の置かれた現実の対極点だったようだ。そんな悲しさも含めて腑に落ちる。 こういう生活に憧れるひとと憧れないひと。はっ...
死に方も含めて、著者の理想像だったのだろう。金はあり、家族はおらず、仕事としての著作はせずに、ごく限られた友人とだけ語らって、美しい自然の中で静かに暮らす。それは著者の置かれた現実の対極点だったようだ。そんな悲しさも含めて腑に落ちる。 こういう生活に憧れるひとと憧れないひと。はっきり分かれるだろう。ぼくは当然前者。でも、一日中釣りをしてたり、野菜を作ってみたり、馬飼ってみたり、友達呼んだり、あまり詩的な田園生活は送りそうもないが。
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