神狩り の商品レビュー
山田正紀氏のデビュー作。古代文字を解明しようとした若い学者が勝ち目のない「神」との戦いに巻き込まれてゆく話。 氏の作品は「オフィーリアの物語」と「イノセンス After The Long Goodbye」の2作しか読んだことがないけれど、それらと比べると随分若書きだなあという印...
山田正紀氏のデビュー作。古代文字を解明しようとした若い学者が勝ち目のない「神」との戦いに巻き込まれてゆく話。 氏の作品は「オフィーリアの物語」と「イノセンス After The Long Goodbye」の2作しか読んだことがないけれど、それらと比べると随分若書きだなあという印象がある。書き手と主人公に対して「一体なにをそんなに尖ってカッコつけているのか」と小一時間問い詰めたいレベル。 キャラの心理的な流れも事件の流れもまだまだ生硬なところがあって、決して読みやすい文章ではないが、でもそれが十数年たつと、あの「オフィーリア」の流麗な文章に化けるのだから、それだけ資質が凄いのだろう。 実際、「神は人間の敵であり、人間を使って残酷なゲームを楽しんでいる」という設定からして壮大過ぎるし、衝撃も大きくて、この設定は後々のSF作品に影響を与えているのではないか。 例えばサイボーグ009の「天使編」や「神々との闘い」はまさに同じネタで、サイボーグたちは人間を超越し、なおかつ人間を弄んでいるらしい存在と戦う話になっているし、昨年公開された映画版も神の存在について問う話になっている。
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他人に向けて書いていないので、話が分裂的ですがオレは健康であります。 まず、タイトルが面白い。神狩り。神を狩る?おいおい、ちょっと待てよ。そんなのありか?そもそも神とは何なのか?まあ、規定できてしまったら神ではなくなってしまうのだが。少なくとも、神は俺達よりも上位の存在であることは間違いないだろう。 分かりやすく言えばこういうことだ。三次元の存在である人間が、自らが産み出した二次元の存在に殺される。普通は干渉不可能だろう。だが、主人公はそれをやろうとする。それも「狩る」という単語が示すように、神に対するあからさまな敵意を持って。 この小説では、その不可能な行為を言語論理学で実現しようとする。キーワードとしてヴィトゲンシュタインの残した「語りえぬことについて「我々は沈黙を守らねばならない」と言う語が出てくる。このルールを破ろうとする主人公達は神からの干渉を受け、仲間が次々と殺される。 この小説で描かれる神は悪の性質を持っている。神が人を殺すのは裁きなどではなく、一種の娯楽、ゲームとして捉えられる。更には、キリストは神に預言を託されたのではなく、神に弄ばれたのであり、だからこそ彼は死に際に「神よ私を見捨てるのですか?」と言ったのだと言う、面白い解釈をしている。 最大の難問であった、どうやって神を狩るのか?と言うことだが、これには「言語」がポイントになっている。神が人間をゲームにおびき出すためにわざと人間に示す「神の言語」それを解明することにより、神と同次元の存在になろうとしたり、攻撃を加えようとするのだ。 神の言語と言う発想には感心した。そもそも神は絶対者であるのだから、言語を持つ必要はないと思っていたが、人間が言語をもてるのに神がもてない訳はないし、もしかしたら、神は言語上に生きている存在?で、人の言語は物理的力を持たないが神の言語にはその力があるのでは?神の言語で神を殺せるのでは?などと妄想した。 しかし、世界の限界は私の言語能力の限界であるのだとしたら、神の言語を解明したとき、私自身が神になるという皮肉な結果が待っているのではなかろうか?では一体どうやったら神に勝てるのか?少なくともその答えを神が教えてくれることはないだろう。
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花崗岩石室に刻まれていた謎の古代文字、そこには「13の関係代名詞が入り組んだ構造を持ち二つの論理構造からなる言語」が刻まれていた。 それは明らかに人間が使いうる言語ではなかった、なぜなら人間が思考するには関係代名詞は一度の文で七つまでしか使えない。人間の短期記憶の仕組みが関係して...
花崗岩石室に刻まれていた謎の古代文字、そこには「13の関係代名詞が入り組んだ構造を持ち二つの論理構造からなる言語」が刻まれていた。 それは明らかに人間が使いうる言語ではなかった、なぜなら人間が思考するには関係代名詞は一度の文で七つまでしか使えない。人間の短期記憶の仕組みが関係しているらしい。また、なぜなら人間は最低でも五つの論理記号(そして、ならば、あるいは、でない、必然である)のだ。 つまり、この古代言語は人間の論理能力では扱えない代物だったのだ。では一体誰がこのような言語を使っていたのか― 主人公である情報工学の学者である島津は、人間よりも一段階上の論理能力を持つ存在、つまり「神」でしかありえないと考えるようになる。 この古代言語はいわば人間の思考について一段階上の段階から記述したメタ言語ではないのか、そしてこの言語によって世界のすべてが「神」によって記述されているのではないか― 序盤は「古代文字」についてのハードSF的な考察が割と多い。しかし後半、島津が理亜達と行動を共にするようになる辺りからはミステリーの楽しさが勝るようになる。また思索的な部分も言語についてから神とは何か?というより壮大なテーマについて語られるようになる。 ここで語られる「神」とは、私たちを支配しようとする管理者で、人間はそれにあらがい戦わなければならない。それでこの本のタイトルは『神狩り』であるというわけだ。 思いのままに世界を操る「神」に島津は勝利することが出来るのか?戦いの果てに何が?
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おもしろくワクワクしながら読んだ。最後は唐突というか尻切れトンボ的だったけれども、戦いは続くということなのだろう。
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ある工事現場から見つかった古代文字を通して、 人間が神に一矢報いろうとするお話。 神を狩るというすごいテーマなうえに全編通して暗いです。 でもかなりおもしろかったです。 いままでぼんやりと考えていた神というものを、 目の前に突きつけられて、考えてみろって言われた感じ。 新鮮。
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忘れもしない大学生の時に初めて読んだ山田正紀氏の作品。 衝撃的でした。 とにかく面白いの一言につきる。 一気に読んだ記憶があります。 今読んでも絶対に面白い!!
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「人類を弄ぶ神」「人類を神の支配から解放する」というメインモチーフにぶっとび。その着想だけでなく、神の実在を証明する手がかりを設定し説得力を持たせたことの勝利。 後半の展開は??だけど、それを補って余りある着想のすばらしさ。
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最近ではミステリの分野にもその活躍の場を拡げ、駄作を書かないSF作家山田正紀。その類いまれなデビュー作。 人間には理解しえない言語体系のなかに存在している”神”。その”神”が世を支配し、自らの存在に近づこうとするものを排除している。その存在に気づいた主人公が、”神”の正体を暴こうと細い糸をたぐり寄せていくが、彼に手を貸そうとした仲間たちが次々と倒れていく。 物語はあと一歩。神の正体の一歩手前で寸止めになる。それゆえに、読者に想像の快楽を残すという、寸止めの美学を見せている。短いながら、重厚で、思弁、哲学的な深みを感じる作品。これがデビュー作とは信じられない。続編『神狩り2 リッパー』が上梓されたが、こちらは賛否両論を呼んでいる。
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元になった中編がSFマガジンに発表された当時、儂は高校生でけっこう夢中になって読んだ記憶がある。十代で読むべき小説のひとつだ。今読むと、大上段に振りかぶり過ぎて、何処に振り下ろしたらいいのか判らなくなったような印象がある。ちょっと考えるネタになるエンターテインメントとして、展開も...
元になった中編がSFマガジンに発表された当時、儂は高校生でけっこう夢中になって読んだ記憶がある。十代で読むべき小説のひとつだ。今読むと、大上段に振りかぶり過ぎて、何処に振り下ろしたらいいのか判らなくなったような印象がある。ちょっと考えるネタになるエンターテインメントとして、展開も早いし面白い。
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日本SF小説の金字塔・・というコピーにつられて読んだのですが、なるほど確かに当時にしてみると(これは30年以上前の作品です)、かなりインパクトがあったのだろうと感じる作品でした。 30年前の作品ではありますが、起・承・転・・とぐいぐいと作品世界に引き込んでいく力は今読んでも衰えて...
日本SF小説の金字塔・・というコピーにつられて読んだのですが、なるほど確かに当時にしてみると(これは30年以上前の作品です)、かなりインパクトがあったのだろうと感じる作品でした。 30年前の作品ではありますが、起・承・転・・とぐいぐいと作品世界に引き込んでいく力は今読んでも衰えているとは思いません。 しかしやはり「現在」の科学的知識あるいはSFの知識からすると、ディテールが甘いと感じざるを得ません。 もっとも残念だったのが、「結」の部分にあたる第三部です。 話が唐突かつ種々の謎を投げっぱなし・・という、大いに不満が残る内容でした。 古典として考えれば評価4としても良い作品なのですが、上記の理由により評価は3としました。 なお2005年に「神狩り2」という続編が書かれているそうです。 そちらについてはいずれ。
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