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夜間飛行 の商品レビュー

3.7

194件のお客様レビュー

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2022/02/12

日用の糧を得るために職場へ通う、その車中で読むものではなかった。 「夜間飛行」は、飛行中の機体が行方不明になりつつある夜を舞台に、郵便事業の経営者の心情を描いた作品である。 主人公は安全性の確立されていない夜の空に若者を送り、長年勤めた技術者を見せしめに解雇し、管理職とその部下...

日用の糧を得るために職場へ通う、その車中で読むものではなかった。 「夜間飛行」は、飛行中の機体が行方不明になりつつある夜を舞台に、郵便事業の経営者の心情を描いた作品である。 主人公は安全性の確立されていない夜の空に若者を送り、長年勤めた技術者を見せしめに解雇し、管理職とその部下を慣れ合わせないためだけに、あえて罰を下させる人物である。主人公は「命を賭して、または賭させてまでする価値のある仕事か」と一応は自問するが、あまり気にせず事業に邁進する。そこに見い出される主人公のポリシーが読んでいて恥ずかしくなるほど自己陶酔的である。 おそらくサン=テグジュペリはこの作品を通して、「死すべき人間の何を永遠なるものとして遺せるか」を問いたかったのだと思う。問いたかったというより、答えを示して啓蒙したかったのでしょう。 言いたいことは分かる。「命を賭してやるべきこと」を見つける人は確かにいるし、素晴らしい部分もあるのだと思う。ただし、それは自己決定に限るのであって、誰かが「命を賭けさせてやろう」「永遠の大事業に参画させてやろう」「それがいい生き方だと教えてやろう」とするならば、厚かましい余計なお世話以外の何でもない。死んだら全て忘れ去られるけど、満足のいく、とるにならない人間の円満な生というのも確かにあるし、本来どちらがいいというものでもないと思う。 「人間の土地」は素晴らしい文学作品だと思ったけど、「夜間飛行」を読んで、サン=テグジュペリのパターナリズムに嫌気がさしてしまった。サン=テグジュペリの何を知っているわけでもないけれど、資本主義や軍国主義が好きそうにも思えない繊細な文を書くのに、そういうものに巻かれるのは厭わないというか、積極的ですらあるというか、人にまで勧めてくるのは何なんでしょうね。そんなことが気になって、通勤電車でイライラしてしまったので星2つ。

Posted byブクログ

2021/10/19

サンテグジュペリ 飛行シーンがリアルな2編。「 夜間飛行 」は 飛行士の崇高な使命感、「南方郵便機」は 日常と死をかけた飛行の対比 が印象に残る 読みにくいが 慣れると 小説の中に引きこまれ、読み手は リヴィエール、ファビアン、ベルニスを追体験できる 「 夜間飛行 」上司リブ...

サンテグジュペリ 飛行シーンがリアルな2編。「 夜間飛行 」は 飛行士の崇高な使命感、「南方郵便機」は 日常と死をかけた飛行の対比 が印象に残る 読みにくいが 慣れると 小説の中に引きこまれ、読み手は リヴィエール、ファビアン、ベルニスを追体験できる 「 夜間飛行 」上司リブィエールの厳しい言葉 *人間=生の蝋(ろう)→魂を吹き込み意志を造る必要がある *過誤が 現れたときに 見逃すことは 罪悪 *不測の事変に対応するために 人員を訓練する必要がある *勝利、敗北という言葉に意味がない〜勝利は国民を衰弱せしめ 敗北は国民を衰弱から鼓舞する〜大切なのは進展 アンドレジッド の序 *人間の幸福=自由の中でなく、義務の甘受の中にある *義務の危険な役割に〜熱中し、成就した中に幸福がある *勇敢な人間は、金持ちが慈善を隠すと同様に、その行為を隠す 「南方郵便機」僕は泉を見つけ出した〜ジェヌヴィーヴ *ストーリーテラー=ベルニスの友人 *日常と死をかけた飛行の対比→住むことと飛行の対比 *ジェヌヴィーヴ=日常、住むの象徴 「南方郵便機」の構成意図 *1部 ベルニスの飛行=非日常。飛行士目線の風景を楽しめる〜描写うまい *2部 ベルニスの回想。ジェヌヴィーヴとの恋=日常 *3部 ストーリーテラーの回想。恋とベルニスの結末

Posted byブクログ

2021/09/06

昔の人は仕事に命かけるほどの気持ちがあったのがすごいと思った。私だったら死ぬぐらいなら仕事したくない。今当たり前にあることは、昔の人が命をかけて作り上げてきたものだと知ると、今の当たり前に感謝しようと思った。

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2021/08/09

不思議に思いつつも、飛行機が普通に飛ぶことが普通のこととなった今、この小説を読むと、当初の苦悩と挑戦がよく分かる。 航空ファンが、歴史やロマンに思いを馳せながら読むのももちろん良い。でも、航空業界に関心がなくても、人の考えがつまった作品であり、一人一人の考えが生々しい哲学的な本...

不思議に思いつつも、飛行機が普通に飛ぶことが普通のこととなった今、この小説を読むと、当初の苦悩と挑戦がよく分かる。 航空ファンが、歴史やロマンに思いを馳せながら読むのももちろん良い。でも、航空業界に関心がなくても、人の考えがつまった作品であり、一人一人の考えが生々しい哲学的な本でもある。 10年前に読んだ本なので、詳細を覚えていないため、再読したい。

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2021/07/26

朝と昼に読みたくなる本はそんなにないのに、夜限定で読み返したくなる本はたくさんある。これはその中でも深夜1時以降向けの本。 飛行機で1人飛ぶ時間は孤独で、その中で研ぎ澄まされた考えが文章になって表れている、そんな印象を受けた。孤独の中で生まれた文章は、孤独な時間と場所で読むのに...

朝と昼に読みたくなる本はそんなにないのに、夜限定で読み返したくなる本はたくさんある。これはその中でも深夜1時以降向けの本。 飛行機で1人飛ぶ時間は孤独で、その中で研ぎ澄まされた考えが文章になって表れている、そんな印象を受けた。孤独の中で生まれた文章は、孤独な時間と場所で読むのに相応しい。私はきっとこれから何度もこの本を読み返すだろう。しかし、太陽の元で開くことはないと確信している。

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2021/07/03

翻訳が素晴らしい 普段は「漢字要らない協会会長」だけど こういうの読むと、 あぁー日本語は美しいなとしみじみする 声に出して読むと多幸感さらに倍!!! 街の灯りと人々の営みを超え、嵐に抗い、砂漠に眠る。 あれ?サン=テックスってハードボイルド作家だったのか? なんて事も、起こりう...

翻訳が素晴らしい 普段は「漢字要らない協会会長」だけど こういうの読むと、 あぁー日本語は美しいなとしみじみする 声に出して読むと多幸感さらに倍!!! 街の灯りと人々の営みを超え、嵐に抗い、砂漠に眠る。 あれ?サン=テックスってハードボイルド作家だったのか? なんて事も、起こりうるかも知れない魔法の1冊。

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2021/06/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

タイトルがロマンチックかつ星の王子さまの作者の作品ということで購入したもののすごく難解で情景が浮かばなくて読むの苦痛だった。私の読書力が足りなかった。夜空を飛んで荷物を届けるってロマンチック!と思っていたけど実際は死と隣合わせ、夜間飛行はそんな危険な仕事の支配人の話。無慈悲なぐらい厳しいけどそこには確かに部下への愛があった。理想の上司ではないけれど仕事の鬼で本物のリーダーだと思った。もう1作南方郵便機は全然分からなくて感想すら書けない。けど南方郵便機については翻訳者の後書きが物凄く素敵だった。『作者は母岩を貫いて金を取り出す仕事を読者の一人々々に残した。この仕事が精読である。(一部抜粋)』私も読書力を上げていつか必ずこの本から金を取り出したい!

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2021/05/08

夜間飛行・南方郵便機の2篇が入っていたけれど、夜間飛行のほうが好きだったな。人生とは小説であり、小説とは人生であるということを確かに感じさせる。

Posted byブクログ

2021/05/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2021.3.31 この本はいわゆる「読んでよかった本」に分類される。心に残る一冊だ。飛行文学、これはサン=テグジュペリをおいて他に書ける人はいないと思う。やはり自分が経験してきたことを書くからこそ、価値を持ち、良い作品になると痛感した。夜間飛行、南方郵便機のともに好きだが、南方郵便機は直接的に書かれていたのに対して、夜間飛行は技巧的であり上司をモデルにした渋い作品だった。 夜間飛行で墜落する飛行機に乗るファビアン。彼が厚い雲を抜けて、無音の世界、ただ星だけが見える世界に出たときに、死と穏やかさをこんなにもというくらい強く感じた。地上にいる人が主人公(上司:リヴィエール)なのも、最後に飛行機が遠い空の彼方に消えていったように思えてよかった。 南方郵便機は時が飛んで恐らく年老いたベルニスがジュヌヴィエーヴに会うところからとくに引き込まれた。その前の上手くいかない駆け落ちの場面も、いま振り返るといいな。

Posted byブクログ

2021/02/21

堀口大學翻訳。カバー装画は宮崎駿。郵便飛行業の草創期、夜を征服しようとする人々の物語。義務の甘受の中に存在する人間の幸福、安息。パワハラ文学(笑)

Posted byブクログ