夜間飛行 の商品レビュー
夜間飛行 筆者が生きていた時代、夜間飛行を行うパイロットは死と隣り合わせの職業であった。 その中で運行会社の監督であるリヴィエールは夜間飛行を確実に成功させるため、理不尽な処罰を行い仕事への緊張感をもたせていた。 それは、リヴィエールの「事業の恒久性と個人的幸福は両立せず、相軋...
夜間飛行 筆者が生きていた時代、夜間飛行を行うパイロットは死と隣り合わせの職業であった。 その中で運行会社の監督であるリヴィエールは夜間飛行を確実に成功させるため、理不尽な処罰を行い仕事への緊張感をもたせていた。 それは、リヴィエールの「事業の恒久性と個人的幸福は両立せず、相軋轢するものであり、恒久の永続を求める」という言葉からも読み取れる。 当時の夜間飛行が如何に危険なものであったか、その中でパイロットたちは何を考えて飛行機を運転していたか、様々なことが読み取れる本であった。
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サン=テグジュペリ(1900~44年)は、フランスの飛行家、小説家。仏リヨンに生まれ、1921年に兵役で航空隊に入りパイロットとなったものの、除隊後は工員などをしながら、雑誌に作品を発表する。その後、ラテコエール社に入って、トゥールーズ-カサブランカ空路のパイロットとなり、更に、...
サン=テグジュペリ(1900~44年)は、フランスの飛行家、小説家。仏リヨンに生まれ、1921年に兵役で航空隊に入りパイロットとなったものの、除隊後は工員などをしながら、雑誌に作品を発表する。その後、ラテコエール社に入って、トゥールーズ-カサブランカ空路のパイロットとなり、更に、アエロポスタル社のブエノス・アイレス支配人として、南米空路開発に携わるが、その間、『南方郵便機』(1929年)、『夜間飛行』(1931年/フェミナ賞受賞)、エッセイ集『人間の土地』(1939年/アカデミー・フランセーズ賞受賞)等を発表する。第二次世界大戦勃発後は、動員されて偵察任務などに従事したが、一時ニューヨークに亡命し、『星の王子さま』(1943年)等を執筆。1943年に北アフリカのフランス軍に復帰し、翌年、偵察飛行のために仏コルシカ島を発った後、地中海上でドイツ軍に撃墜されたといわれる。 本書には、上記の『夜間飛行』、『南方郵便機』の2作が収められているが、作品としての評価は『夜間飛行』が圧倒的に高い。 本書を読むにあたって、まず理解しておく必要があるのは、当時の航空界・技術の状況だろう。かの有名なライト兄弟が初の有人動力飛行に成功したのは1903年で、その後、1909年に英仏海峡横断、1913年に地中海横断、1927年にリンドバーグによる北大西洋横断、及びル・ブリによる南大西洋横断が成された。フランスは、こうした長距離飛行で世界を先導したほか、商業飛行にも力を入れ、トゥールーズから、カサブランカ、ダカールへ路線を伸ばし、更に南米への路線を開拓していった。 『夜間飛行』は、こうした開拓期に、南米各地からの郵便機を集中させ、ヨーロッパ便の中継点となっていたブエノス・アイレスにおける一夜を、支配人のリヴィエールを中心に描いたもので、更に、チリ路線におけるアンデス山脈の嵐、パラグアイ路線における星空の下での静穏な飛行、パタゴニア路線における颶風との格闘(結局、同路線のパイロットのファビアンは帰還しない)という、様々な状況下での飛行の様子が語られている。 リヴィエールは、テグジュペリをパイロットとして鍛えた実在の人物がモデルとなっているといわれるが、本作品の中で、リヴィエールおよび配下のパイロット達は、当時は無理と言われた夜間飛行をビジネスとして確立するための、勇気、沈着、責任感、自己犠牲といった美質の体現者として描かれている。それを象徴する、リヴィエールの次のような言葉が心に沁みる。「部下の者を愛したまえ。ただそれと彼らに知らさずに愛したまえ」、「愛されようとするには、同情さえしたらいいのだ。ところが僕は決して同情はしない。いや、しないわけではないが、外面に現わさない。」 使命を果たすために命まで賭すという行為は、現代ではあまり称賛されないし、むしろナンセンスと捉えられかねないが、今の我々の社会が、こうした使命感に燃えた(無名の)英雄たちの行為の積み重ねによってできていることは間違いなく、その尊さを思い出させてくれる作品と言えるだろう。 (2024年1月了)
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『夜間飛行』のみ読んだ。 郵便物を配達する航空会社の運営者である主人公リヴィエールとパイロットの視点を中心として描かれた小説。 今みたいな科学技術は無かったため、当時の夜間飛行は危険だった。 しかし、航空機を利用した郵便会社を存続させるために夜間飛行を実施せざるを得なかった。 ...
『夜間飛行』のみ読んだ。 郵便物を配達する航空会社の運営者である主人公リヴィエールとパイロットの視点を中心として描かれた小説。 今みたいな科学技術は無かったため、当時の夜間飛行は危険だった。 しかし、航空機を利用した郵便会社を存続させるために夜間飛行を実施せざるを得なかった。 このような事情を理由にリヴィエールは社員たちに対し、厳しく取り締まり、指導をしてきた。(正直今の時代にそぐわない経営のような気がするけど) そんな主人公の苦悩や葛藤などの心情や、パイロットの飛行中に生じる緊張感や怖さなどを、比喩表現を多用し美的な文章で描き出している。 正直な所、私が苦手な比喩が多用されていたので、この小説の良さや内容をはっきり説明できるとは言えない。しかし、パイロットが嵐に飲まれて飛行が困難になった際の場面は、引き付けられるような描写で面白く感じた。また再読しようと思う。
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『星の王子さま』に続いてサン=テグジュペリの作品を読むのは2冊目。『星の王子さま』の思想にはそれほど感銘を受けず、「確かにいいことを言ってるけど、よく言われてることだしそれほど感動することかな??」という気持ちだった。 『夜間飛行』と『南方郵便機』は全く異なり、徹底的な真面目さと...
『星の王子さま』に続いてサン=テグジュペリの作品を読むのは2冊目。『星の王子さま』の思想にはそれほど感銘を受けず、「確かにいいことを言ってるけど、よく言われてることだしそれほど感動することかな??」という気持ちだった。 『夜間飛行』と『南方郵便機』は全く異なり、徹底的な真面目さと強かさの上に物語が成り立っている。主人公の葛藤とそれが整理される過程を詳らかにする文章には、小説というより哲学書のような雰囲気すら感じられる。不思議なことは、この真面目さと強かさに触れて初めて、『星の王子さま』の背後の奥行きが見えてきたことである。今まで『星の王子さま』の表層だけを撫でていた自分が恥ずかしい。 人称が分かりにくい、表現が詩的など読者は随所でふるいにかけられる。しかしだからこそ私達は、訳者堀口大學の言葉を借りれば、「あくまで純粋な金」に出会えたのだ。私はこの採掘作業が大好きだ。ぜひとも苦悩しながら読了し、訳者のあとがきまでたどりついてほしい。
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郵便飛行業に命懸けで従事していた男たちの物語。 当時、夜間飛行は命懸けの仕事だった。一つのミスでも命取りとなってしまう。だからこそ、リヴィエールは部下たちに冷徹で厳格に接しなければならなかった。仕事への使命感がひしひしと伝わってくる。 家族や恋人など仕事以外に大切な存在がある...
郵便飛行業に命懸けで従事していた男たちの物語。 当時、夜間飛行は命懸けの仕事だった。一つのミスでも命取りとなってしまう。だからこそ、リヴィエールは部下たちに冷徹で厳格に接しなければならなかった。仕事への使命感がひしひしと伝わってくる。 家族や恋人など仕事以外に大切な存在がある者。死を怖れる者。気持ちがわかるからこそ、葛藤があり、心が揺れ動く。それでも夜間飛行の任務を遂行する決意をした彼らのことを思うと… 命懸けの仕事は今でもたくさんあるけれど、当時の夜間飛行はリスクが高すぎて、人の命以上に大切な手紙なんてあるのかな、と思ってしまうくらい。いくら誇りある仕事とはいえ、大切な人がこんなに危険な仕事をやるとしたら自分なら耐えられないかな、とか。 もちろん登場人物たちも悩み葛藤していた。これは、飛行機の操縦士でもあったサン=テグジュペリ自身の物語でもあったのだろう。それでも飛ぶことを選んだ彼らの誇り高さと決死の覚悟に胸を打たれた。
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難しすぎてよく分からなかった…星の王子さましか読んだことがなかったから、気軽な気持ちで読んだのが間違いだったかも。もっとじっくり時間をかけて読むべき本だったと反省。またチャレンジしたい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
少し古い翻訳のため、読みずらかった。 ひたすら暗闇の中、燃料も残り半時間しか持たないと半ば諦めていた頃、ふと星のような光が見え、思わずそこを目指して上昇。すると月が照らす雲の上に出る。地上は見えないのだからどうしようも無いのだが、もうまもなく我々は死ぬのだろうと予期しつつも、その光景に心を奪われる、幻想的な光景だった。p110 司令側は、今頃燃料が尽きた頃だろう、相変わらず応答はない、きっと…、と、やり切れなくなるが、また別の機を送り出さなければならない。暗闇と、孤独と戦う、静かな戦いだ。 南方郵便機は読んでいて、話の筋が汲み取れているのか不安になりつつも、複雑な比喩表現が多く、ざっくりとでなければ読み進めることが難しかった。 あんなに意気込んで旅立ち、故郷に別れを告げて、またこの地を踏み、故郷と再会を果たす時にはさぞ感動を覚えることだろうと考えていたが、実際に帰ってきてみると物事は何ひとつ変わっておらず、待っていたのはつまらない、石ころのような日常だった。だから私は、また旅立たなければいけない。(第1部) 病気の稚児を三日三晩、寝ずに看病して疲れ果てた母親は、医師にすすめられて休息をとる。帰ってきてみると、お前がどこかへ行ってる間にこの子は血を吐いてたんだぞと、夫に怒鳴られる。しばらくして、夫は、自分自身の方がおかしなことを言っていたと冷静さを取り戻し謝罪しようとするが、どこかギクシャクして終わる。ある時、母親は私のもとを訪ねる。私にとって彼女は友人であり、初恋の相手だった。彼女いわく、稚児が遂に死んでしまったのだった。しばらく混乱していたが、もう耐えられない。と、2人で外へ繰り出し、途端に小雨に降られ、車を出し、暗闇の中やっと見つけたホテルでは満室だと断られ、散々なものだと嘆くも、ようやくホテルを見つけて、散々だったのは我々自身の方であり、小雨やホテルに宿泊できなかったことなど、他愛のないことではないかと考える。愛欲は感じず、静かに過ごす。しばらくしてそれぞれ家に帰るが、この小期間中に夫の方も外出しており、我々のこの逃避行がバレることはないだろう。私は私、彼女は彼女、初恋であったが、この2人では世界が違うのだ。(第2部) 友人宅を訪ねると、誰かが病気らしい。行ってみると、彼女が弱っていた。もう一度、彼女と私と同じ世界に連れ出せないかと話しかけてみるが、顔の皺を眺めたりして、徐々に私が誰なのかもわからない様子。そして悲しみつつ、郵便機は飛び立つのだった。 搭乗者惨死、機体大破、ただ、郵便物は無事。郵便物、無事ダカール着。(第3部) わかりやすい概要解説 https://bookkiroku.com/【勇気が持てる本】51%EF%BC%8E『夜間飛行』著サン・テ/ ところが人間に恐ろしいのは、ただ神秘の世界だけなのだ。神秘をなくすことがたいせつなのだ。搭乗員が、夜というあの暗い井戸の中へ降りて行って、そこからまた上がって来ても、別に珍しいことをしたとも思わないようにしなければいけないのだ。p81夜間飛行 下界という名のこの玩具の牧場は箱の中に収められたように整然としている。家屋も、運河も、道路も、みんな人間の玩具だ。畠は必ず垣根のところで、庭園は必ず壁のところで終っているこの整然たる世界。確然たる世界。p154南方郵便機
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星の王子様とは、がらっとかわり、少し驚いた。 昔の夜間飛行はとても危険で命懸けだったんだなと興味深い。
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航空輸送会社が夜間定期飛行を実現するまでの実験時代のお話。 命を失う危険を犯してまで実現したいことなどないし、人の人生まで背負いたくないんですけど。私は完全に個人的幸福側の人間だけど、こういう人がいないと人類の進歩ってない? 「ところが人間に恐ろしいのは、ただ神秘の世界だけな...
航空輸送会社が夜間定期飛行を実現するまでの実験時代のお話。 命を失う危険を犯してまで実現したいことなどないし、人の人生まで背負いたくないんですけど。私は完全に個人的幸福側の人間だけど、こういう人がいないと人類の進歩ってない? 「ところが人間に恐ろしいのは、ただ神秘の世界だけなのだ。神秘をなくすることがたいせつなのだ。」 「事業と、個人的幸福は両立せず、相軋轢するものだからだ。」
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「夜間飛行」は、比喩的表現が多く、趣きあり。また、昔の夜間飛行がとても危険であること、パイロットの心情などがよく分かり、読み応えあり。 「南方郵便機」は、サハラ砂漠の上空を飛ぶ飛行士の話で、無線とか、砂漠に不時着する話とか、風景の方が迫ってくるとか飛行士ならではの感覚などがリアル...
「夜間飛行」は、比喩的表現が多く、趣きあり。また、昔の夜間飛行がとても危険であること、パイロットの心情などがよく分かり、読み応えあり。 「南方郵便機」は、サハラ砂漠の上空を飛ぶ飛行士の話で、無線とか、砂漠に不時着する話とか、風景の方が迫ってくるとか飛行士ならではの感覚などがリアルに描かれている。が、こちらは、比喩的表現が夜間飛行に比べものにならないほど多く、何のことを示しているのか常に考える必要があり、なかなか読み進めることができない。ベルニスともう一人の二人称の構成で、これは、自分が自分に語りかけるもので実質的に一人称なんだろうと思って読んでいたら、最期に、ベルニスが死んで、そのことをもう一人が語る場面があるので、やば別人だった?もう一度最初から読み直すのがいいかも。
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