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カルメン の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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とても情熱的で美貌の…

とても情熱的で美貌の持ち主カルメン。その美しさに魅了され、自分の人生までをも変えてしまった男たち。そして衝撃のクライマックス!「カルメン」ほかにも五つの短編集が入っています

文庫OFF

2024/09/05

 歌劇カルメンの原作をはじめとするフランス文学短編集。気軽に読み始めたが、どの作品もなかなかに強烈だった。  しかし、カルメンってここまで悪女だったのか…そして凄まじく強い女。男を色恋で振り回すどころの話ではない。ジプシーと言えば、音楽・舞踏に物乞いと放埒な流浪の民といったイメー...

 歌劇カルメンの原作をはじめとするフランス文学短編集。気軽に読み始めたが、どの作品もなかなかに強烈だった。  しかし、カルメンってここまで悪女だったのか…そして凄まじく強い女。男を色恋で振り回すどころの話ではない。ジプシーと言えば、音楽・舞踏に物乞いと放埒な流浪の民といったイメージしかなかったが、まるで狡猾な国際犯罪組織だ。カルメンは、差し詰め組織で暗躍する凶暴な峰不二子といったところか。  他の作品のお気に入りはタマンゴ。読んでいる時のイメージは、ボブサップそのもの。

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2021/01/29

おおメリメ、私はあなたと相容れない! 短編を読むたびに、内心そう叫ばずにはいられなかった。 最初の衝撃は、テオ・ファルコネにて。 冒頭に張られた伏線に嫌な予感はしていたけれど、もしかしてもしかするかもしれない、との祈りを無情に裏切られた。 次の衝撃は、オーバン神父にて。 軽い羞恥...

おおメリメ、私はあなたと相容れない! 短編を読むたびに、内心そう叫ばずにはいられなかった。 最初の衝撃は、テオ・ファルコネにて。 冒頭に張られた伏線に嫌な予感はしていたけれど、もしかしてもしかするかもしれない、との祈りを無情に裏切られた。 次の衝撃は、オーバン神父にて。 軽い羞恥心(彼女の思い込みは、概ねの人が、一度はする類の勘違いではないでしょうか?)とともに、神父を詰らずにはいられなかった。 最後の衝撃は、アルセーヌ・ギヨにて。 いっそ会わせぬままでいて欲しかったのに、何という要らぬ押し付け、正義感、信仰か!この地獄に比べればそりゃあその先は天の国だろうて…! 伝聞らしい、ということを鑑みれば、そりゃそうか、としか言えないのだけれど、現実は小説より奇なりを小説で示されたような、妙な「裏切られた感じ」に頭を抱えるしかなかった。 「有名なカルメンの原作らしいし、教養に一読しておこう」などという軽い気持ちで手に取ってはいけなかった。 海外小説の古い翻訳にしては、堀口大學の名訳のおかげでとても読みやすかったのだけれど、飲み込みやすかっただけに、余計にこっぴどく振られたような心地がする。 現実は残酷だ… とはいえ、表題の「カルメン」は名作だったし、ずっと謎だったカルメンの魅力と死の理由が腑に落ちたので、やはり読んでよかった…読んでよかったんだよ… 記憶にあるオペラの劇的で情熱的な印象に比べると、原作は幾分派手さに欠けるストーリー構成だったような気はするが、そこは音楽劇としての脚本の常だとして。 カルメンは、決してただの気まぐれな、愛に生きる女ということではなく。 ロマとしての誇り高さこそが、彼女の魅力であり、死の原因であると知ることができたのは、得難い収穫だった。 やはり、原作こそが「カルメン」だった。

Posted byブクログ

2015/08/12

ドン・ホセという軍人がカルメンという故郷を持たないジプシーを愛してしまった結果、人生を転落していく物語である。これまで名前だけは知っていても読んだことがなかったが、そんなに長い物語でないことに驚いた。カルメンは教養のない、粗雑な女だが、怪しくも美しい容姿を利用して多くの男達を手玉...

ドン・ホセという軍人がカルメンという故郷を持たないジプシーを愛してしまった結果、人生を転落していく物語である。これまで名前だけは知っていても読んだことがなかったが、そんなに長い物語でないことに驚いた。カルメンは教養のない、粗雑な女だが、怪しくも美しい容姿を利用して多くの男達を手玉にとってゆく。決して上品な話ではない。カルメンがどんな女なのか、想像することしか出来ないが、彼女の捉え方によってオペラや劇での演技も変わってくるのだろう。これを読んでカルメンの劇を見てみたくなった。

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2011/12/11

短編集。 6つ収録されている中でも自分は表題作でなく「アルセーヌ=ギヨ」が最も印象に残った。 近所で身投げを試みたギヨと、彼女を更生させてまともな人生を歩ませようとする有閑貴婦人ド・ピエンヌ。さらにギヨの堕落の原因となったド・ピエンヌの幼馴染で道楽者のマックスがその中に加わるこ...

短編集。 6つ収録されている中でも自分は表題作でなく「アルセーヌ=ギヨ」が最も印象に残った。 近所で身投げを試みたギヨと、彼女を更生させてまともな人生を歩ませようとする有閑貴婦人ド・ピエンヌ。さらにギヨの堕落の原因となったド・ピエンヌの幼馴染で道楽者のマックスがその中に加わることによって綺麗な三つ巴の構成となる。 実はこの話の構成そのものがメリメの実体験だったり。 離れることで真実の愛が生まれるのはアンドレ=ジッドの「狭き門」にも共通か。

Posted byブクログ

2011/08/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

表題の「カルメン」のみ読了。何か思ったより浅かったというか…「椿姫」はマルグリットに娼婦なりに誇りと気品がある、「痴人の愛」はナオミに人間味があってわがままな性格に裏付けがある、わけで、カルメンは単に気まぐれでひとつところに定住しない民族性だけで悪女性は見いだせないよなあと思ってしまったわけです。何よりカルメンはドンホセ(だっけ)からそんなに影響うけてないし運命の恋をしたと男が感じたのはたぶん勘違いじゃないかなって思った。オミ(夫の事)がなんだのと言っていたけど、口先だけの慰めが何も心の平穏を与えないのは男の人も女の人も同じ。自己プロデュースがうまいだけのつまんない女性に短絡的な男の人がひっかかったっていう印象だった。

Posted byブクログ

2011/09/08

有名な作品なのであらすじは大体知っているが、ストーリーをきちんと追ったことはなかったため、折角なら原典に当たってみようと思って手にとった。 「カルメン」は「ファム・ファタル」の例としてマノン・レスコーと同じくらい名前が挙がる作品だ。 「マノン・レスコー」はどんどん堕ちていくグリュ...

有名な作品なのであらすじは大体知っているが、ストーリーをきちんと追ったことはなかったため、折角なら原典に当たってみようと思って手にとった。 「カルメン」は「ファム・ファタル」の例としてマノン・レスコーと同じくらい名前が挙がる作品だ。 「マノン・レスコー」はどんどん堕ちていくグリュウの緻密な心理描写とその波乱万丈な内容にあてられて、読んでいて非常に疲れた。 そのため同じファム・ファタルに分類される「カルメン」も疲れそうだと思っていたが、こちらは平気だった。 多分それは人物造形に因るところが大きいと思う。 一言で言うと、「カルメン」は語り手であるホセも、ヒロインのカルメンシータも潔い。悪に堕ちていくのも全て自分の責任であると分かっている。 自分達の行動を無理に正当化しようとしたり、むやみににわが身の不運を嘆いたりしない。 カルメンはかなり意識的な悪女だと思う。自分の魅力が男性を惑わすのを充分知っていて、効果的にそれを利用する。 だが彼女の心の主人となれるのは彼女自身だけだ。自分が嫌だと思うことには決して従わない。 カルメンは悪女だしホセも悪に染まってしまった人間なのに、どこか好ましく思ってしまうのはその芯が通った姿のせいだろう。 どちらに共感できるかと言えば、私は「カルメン」の方が好みだ。ただ、それは「マノン・レスコー」が「カルメン」に劣っているということではない。 カルメン以外にも収録されている短編はどれも面白く、堀口大學の訳の美しさもあって、とても楽しめた。いずれ他のメリメ作品も読みたい。

Posted byブクログ

2011/07/19

有名どころ「カルメン」というタイトルで、タマンゴマテオ・ファルコネオーバン神父エトリュスクの壷アルセーヌ・ギヨを含む、全6篇、それも堀口大學訳。カルメンを較べてみても、新潮文庫版とはかなり違います。でも、いずれも、です。ちなみに私、マテオ・ファルコネの話に惑溺したことがありました...

有名どころ「カルメン」というタイトルで、タマンゴマテオ・ファルコネオーバン神父エトリュスクの壷アルセーヌ・ギヨを含む、全6篇、それも堀口大學訳。カルメンを較べてみても、新潮文庫版とはかなり違います。でも、いずれも、です。ちなみに私、マテオ・ファルコネの話に惑溺したことがありました、だから、コルシカに行ってみたい(ナポレオンには、あんまり興味ないんだけど)。

Posted byブクログ

2009/10/07

作者のメリメは考古学者で、語学にも堪能だったらしい。作風はインテリの書きそうな皮肉な小説だなと思う。この短編集では、表題作のほかに、奴隷船に捕らわれた黒人の酋長が反乱を起こして、船をのっとたまではいいものの船の操縦法が分からず、漂流してしまう「タマンゴ」、裏切りをおこなった息子を...

作者のメリメは考古学者で、語学にも堪能だったらしい。作風はインテリの書きそうな皮肉な小説だなと思う。この短編集では、表題作のほかに、奴隷船に捕らわれた黒人の酋長が反乱を起こして、船をのっとたまではいいものの船の操縦法が分からず、漂流してしまう「タマンゴ」、裏切りをおこなった息子を射殺する「マテオ・ファルコネ」、ロマンチックな貴婦人に取り入って出世する「オーバン神父」、恋人と和解した途端、決闘で命を落とす「エトリュスクの壺」、自殺しようとした貧しい娘を、自分に好意をよせる情人(これは死にそうな貧しい娘の元恋人)といっしょに見取る上流婦人を描いた「アルセーヌ・ギヨ」が収められている。どれも、異常な皮肉さで書かれた作品ばかりだ。メリメはスタンダールと親交があったそうだが、上流婦人や、異民族に対する目は冷ややかで、フランスのエリートの気質をうかがわせる。エリートだからこそ、恋愛を馬鹿にしつつも無視できないのだ。表題作の「カルメン」は、ジプシーの女性をまるで悪魔のように書いていて、一種のステレオタイプを感じるが、ドン・ホセが、カルメンを愛したために、山賊となり、仲間を殺し、最期にカルメンまでも殺してしまうという恋愛の恐ろしさはよく書けているように思う。バスク語やロマニ語が挿入されていて、異国情緒もある。カルメンはスペインの女性ではなく、ジプシーである。

Posted byブクログ