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哲学入門 の商品レビュー

3.9

20件のお客様レビュー

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2024/02/17

いわゆる哲学の入門ではなく、ヤスパース自身によるヤスパース哲学の入門書。 「限界状況」「交わり」「包括者」「枢軸時代」など、ヤスパース哲学の魅力的な概念が有機的に紹介されている。ラジオ講演の書籍化なので、紙幅の都合もあるのだろうが、説得的な推論というより断定的で「教義」のようにも...

いわゆる哲学の入門ではなく、ヤスパース自身によるヤスパース哲学の入門書。 「限界状況」「交わり」「包括者」「枢軸時代」など、ヤスパース哲学の魅力的な概念が有機的に紹介されている。ラジオ講演の書籍化なので、紙幅の都合もあるのだろうが、説得的な推論というより断定的で「教義」のようにも感じた。 「世界」そのものを「包摂者」=絶対者=神と捉え、それを実存として意識することを説く。「神」を非人格的存在としつつも神の「意志」に従うという議論や、神秘主義のように包括者を直接感得するのではなく、具体的に存在する「他者」との交わりを通して間接的に知るといった主張は、たしかに魅力的であるが、矛盾を孕んでいるようにも思う。つまり、神秘主義や神の観念を正当化しつつ、理性的な個人としての現実的生活も絶対視するという、徹底すると相反する立場を無理やり統合して落とし所を見つけているようにも思える。    すなわち、「神=包括者」と「交わり」という二重の真理を認める二元論のようにも感じられる。 交わりとは、人間関係こそ価値あるものであるという、通常における真理である。包括者とは、絶対者や真理に到達することこそ望ましいとする、例外における真理である。だとすると、包括者と交わりを統一的に関連付けることは、通常における真理と例外における真理を無理に統合することとならないか。そのような統合に実益があるだろうか。通常者は、人間関係における悦びで十分満足することができ、包括者の認識には関心がない。例外者にとって、絶対者こそが関心事であり、かれが救われるのは絶対者との和解ないし合一のみである。交わることのない平行線を無理に理論上交差させたところで、その実践が人を救うものとなるのだろうか。交わりを結ぶ他者の存否は、偶然による。幸運な人間は交わりが可能で、そうでない人間に交わりは不可能ということになる。諸々の具象を超えた包括者を絶対視しながら、それへのアクセスが偶然に依存するという考えは、包括者の絶対性=普遍性を矮小化しないか。

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2021/11/21

平易な文章で分かりやすく書かれている。哲学というととっつきにくいイメージがあるが、このような本、あるいはもっと簡単なガイドブックのようなものから読んでいくと良いと思う。 付録に「哲学に関する読書について」という節があるが、ここで書かれていることは哲学に限らず全ての学問における読...

平易な文章で分かりやすく書かれている。哲学というととっつきにくいイメージがあるが、このような本、あるいはもっと簡単なガイドブックのようなものから読んでいくと良いと思う。 付録に「哲学に関する読書について」という節があるが、ここで書かれていることは哲学に限らず全ての学問における読書に共通する。その意味で、哲学はあらゆる学問のベースとなっていると言っても言い過ぎではないかもしれない。

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2021/06/20

ドイツの哲学者ヤスパースがラジオにて行った講演をもとに作成された。 「入門」と名前がついているが、哲学的言い回し(と古臭い訳)のため、素人にはかなり難解。

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2020/09/27

哲学入門 (和書)2012年04月27日 00:37 1954 新潮社 ヤスパース, 草薙 正夫 ヤスパースさんなど実存主義といわれている方々の本を図書館で渉猟しているものです。 この哲学入門はヤスパースさんの作品の理解の助けになります。まず初めに読んでみるのも良かったかも...

哲学入門 (和書)2012年04月27日 00:37 1954 新潮社 ヤスパース, 草薙 正夫 ヤスパースさんなど実存主義といわれている方々の本を図書館で渉猟しているものです。 この哲学入門はヤスパースさんの作品の理解の助けになります。まず初めに読んでみるのも良かったかもしれません。 次はハイデッガーその次はサルトルなど読み解けるように勉強していきたいと思います。

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2020/06/09

ラジオでの講義を本にしたもので、12講からなる。最初の3講くらいはふむふむ、なるほどー。で、だんだんわかりにくくなる…悟性って何だ、無制限的って何だ、とか哲学をかじっている人でないとわからない単語も普通に出てくる。 個人的に興味深かったのは神の存在を証明しようとした第4講。やは...

ラジオでの講義を本にしたもので、12講からなる。最初の3講くらいはふむふむ、なるほどー。で、だんだんわかりにくくなる…悟性って何だ、無制限的って何だ、とか哲学をかじっている人でないとわからない単語も普通に出てくる。 個人的に興味深かったのは神の存在を証明しようとした第4講。やはり最近(この当時にとって)の哲学者は神の存在の証明を避けたがるらしい。最近に限ったことではないと思うが。そして結論はというとやっぱりちょっと有耶無耶だと感じる。 補足で初学者向けにどの哲学者から学ぶのが良いかのヒントもあるが、わりとザックリバッサリ説明しててこれも意外と面白かった(こういう方面から論じないことから失敗してる、とか普通に言う)。 概論的なことを講じているという意味では確かに入門なのかもしれないが、読みやすさで言えばソクラテスの弁明~パイドンのほうが圧倒的に読みやすいと思う。

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2015/10/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

訳文が非常にわかりにくい。これが第一の難点。最も自分にとって分かりやすかった第5講でさえ理解するのが難しかった。 神・超越者・包括者というのも日本人である私にはとっつき難い。付録を読むと中世の神学者にかなり敬意を払っている。東洋に生まれた者にヨーロッパのキリスト教の影響を多大に受けたヤスパースの哲学は馴染みがない。 12講まで読んでなかなか納得いかずわけのわからない本、というような気持ちだったが、付録を読むと「人生を真摯に生き、哲学し続ける態度」こそが肝要だと述べているとわかった。これこそが哲学的態度であり哲学そのものなのだ。思い起こせば1講で述べている通りだった。

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2015/02/01

池田さんの『考える人』では取り上げられていなかったが、なあんだ、同じことやっていたんだ。魂は不滅だった。 彼のことばは平明で非常に的を射ている。彼の実存への考察、哲学への愛。ボーヴォワールは、彼のことばを見習うべき。どうも彼女は、わからせてやろうという気持ちばかりがいっぱいで、「...

池田さんの『考える人』では取り上げられていなかったが、なあんだ、同じことやっていたんだ。魂は不滅だった。 彼のことばは平明で非常に的を射ている。彼の実存への考察、哲学への愛。ボーヴォワールは、彼のことばを見習うべき。どうも彼女は、わからせてやろうという気持ちばかりがいっぱいで、「わかる」というそのことをあまり疑っていない。彼女の実存と彼の実存は次元が違う。ヤスパースの実存は、時間や歴史から垂直に立ち上がった実存だ。水平にしか眺められない彼女と比べて、その点で一歩超えている。実存の獲得は闘いではない。驚くという力だ。 ヤスパースはかなり敬虔なひとだ。義務表現の多用もおそらくそこから来ている。これほどまでに考察できているのにもかかわらず、神と実存を何とかして分けようとしている。だが、わけてしまうことで、ではその二者をわけたそのものはなんなのか、という問いがまた始まってしまう。そこに彼の困難さが見られる。彼は「存在」と「存在者」を混同してしまっているのかもしれない。それについての考察はハイデガーを待たねばならない。 彼は限界・無制約ということばをもって実存を語りだすが、この限界・無制約ということばが混乱を生んでしまう。まず、限界は彼の中で存在のどん詰まり、離れぬことのできぬまなざしの存在ということを表す一方、死ぬ定めにある現存在そのものの限界(病気や寿命、戦争など)として語られる時もある。確かに現存在の限界が存在の限界へ目覚めさせることもある。だが、そうでなくとも突然ひとは存在に目覚めてしまうのだ。 次に、無制約ということば。この部分についてのところは、きっとラジオでも唾を飛ばしながら熱く語った部分ではなかろうか。彼はすべての根源として無制約性というのをあげている。それに対する驚きが哲学を突き動かす。もはやこれは体質的なものだ。池田某という哲学の巫女は本当に巫女だった。だが、彼がそう語る時、もはや根源に制約を施してしまっているのだ。それに、真に無制約だというのなら、義務や信仰というものにつながるのだろうか。ただそこに自由としてあるそのものに、義務をまとわせるあたりが宗教的だ。自由であり無制約と言いながら、「~べき」と言う。それは自由や無制約性の義務を「信じる」からこそ成り立つのだ。ただそこにあるより、義務をまとっている方がこの無制約性と現存在を同時に抱えてしまったこの恐ろしいまでの存在という脅威に怖がらずにすむもの。戦争を見た彼は、なんとしても道徳性を説きたかったに違いない。 それにしても、最後の哲学への比喩はとても詩的でランボーの酔いどれ船を思わせるような美しさを持つ。彼が歴史の中に蒔いた種は、今、こうして芽を出しました。

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2013/05/31

本書はヤスパースが12回にわたって試みたラジオ講演「哲学入門」の全訳。 一般向けであり、訳もいい。ただやはり使う用語はむつかしい。文末に用語の解説はあるが。 哲学するってどういうことか、について書かれている。 一回読むだけじゃまとめられない。再読しようっと。 印象に残ったのは...

本書はヤスパースが12回にわたって試みたラジオ講演「哲学入門」の全訳。 一般向けであり、訳もいい。ただやはり使う用語はむつかしい。文末に用語の解説はあるが。 哲学するってどういうことか、について書かれている。 一回読むだけじゃまとめられない。再読しようっと。 印象に残ったのは次の文。 哲学的思惟には、科学のように、進歩発達の過程という性格がないのであります。(中略)私たちはプラトーンよりも進歩しているとはいえないのです。私たちは、プラトーンに利用できた科学的認知の材料に関してだけなら、彼よりも進歩しているといえる。しかし、「哲学すること」それ自身に関していえば、おそらく私たちはもう一度彼の水準に到達することはほとんどできないのではないでしょうか。 p.8 現代において真剣に哲学することによってだけ、歴史的な現象のうちにある永遠の哲学に触れてることができるのです。歴史的現象は、根底において共通的な現在へ結合されるための手段であります。 p.211 (まっちー)

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2012/12/24

哲学入門というタイトルは大嘘であった(わかっていたけれど)。ヤスパース独自の用語がごく当然のように文章に登場し、文脈でその語の意味を推し量りつつ読み進めなければならなかった。その意味では、ヤスパース入門でもない。ただし、注意深く読み進めれば、ヤスパースの主張の大枠をぼんやりと理解...

哲学入門というタイトルは大嘘であった(わかっていたけれど)。ヤスパース独自の用語がごく当然のように文章に登場し、文脈でその語の意味を推し量りつつ読み進めなければならなかった。その意味では、ヤスパース入門でもない。ただし、注意深く読み進めれば、ヤスパースの主張の大枠をぼんやりと理解できるような気がする。そのぼんやりとした者は、ことごとく私の気に障った。ちゃんと生きなければならない。それは理解できる。しかし、ヤスパースのいうようなちゃんとした生き方ができない者は、生きている価値がないというのか。彼のいう生き方は、相手がいて初めてできることであって、自己の選択の問題ではない。それは環境によって左右されることを、本人の責任に押し付けることだ。望んだところでできない人々は既にして死んでいる。そんなのはあんまりだ。

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2012/12/10

入門と銘打ってあります。「こういう門扉がありますよ」と教えてくれるようであり、看板に偽りなしという気がしたな。まあ、私は(私も)哲学専攻の学生はなかったし、今もそうなので、門を開いて更に奥へ行くつもりはありません。ただ眺望していたい願望がある。 p75「哲学は与えない―」 既に...

入門と銘打ってあります。「こういう門扉がありますよ」と教えてくれるようであり、看板に偽りなしという気がしたな。まあ、私は(私も)哲学専攻の学生はなかったし、今もそうなので、門を開いて更に奥へ行くつもりはありません。ただ眺望していたい願望がある。 p75「哲学は与えない―」 既に知っているものを理解することだ、という件が印象に残ります。 あと哲学のための哲学ではなくて、人間のための哲学を論じている点で、割と実学的な本だという気もした。実存主義的でもあるせいか、優れた自己啓発書としても読めるのでは。

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