車輪の下 の商品レビュー
2019.12.23 73 ようやく読み終わった。 風景や、子供の心情に、稲穂のような色の感想を持った。
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勉強ももちろん大切だけど、人との関わりや遊びからも人は成長することができるのだと改めて感じた。神学校で挫折して、いよいよこれから生きる喜びを学んでいくのかな、というところだったのに。残念。まさに車輪の下敷きになってしまった。それでも最後の夜は彼にとって唯一の救いだったんじゃないか...
勉強ももちろん大切だけど、人との関わりや遊びからも人は成長することができるのだと改めて感じた。神学校で挫折して、いよいよこれから生きる喜びを学んでいくのかな、というところだったのに。残念。まさに車輪の下敷きになってしまった。それでも最後の夜は彼にとって唯一の救いだったんじゃないかな。
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姉に薦められ出会う。読了。 街一番の秀才として皆に誇られ厳しく育てられてきたハンスは、神学校(まるで今でいう進学校である)に入学し、全寮制のもとやはり厳格な教育を受ける。 気弱で素直で優秀だったハンスは、不真面目な文芸家ヘルマン・ハイルナーを唯一の親友と覚え、やがて凋落していく。 「疲れきってしまわないようにすることだね。そうでないと、車輪の下じきになるからね」(P144) 心配する先生たちを相手にしないハンスはやがて失望を買い、ますます堕ちてゆく。ハイルナーが放校に処せられ、いよいよ精神も身体も耐えきれなくなったハンスは、学校を去る。 『学校と父親や二、三の教師の残酷な名誉心とが、傷つきやすい子どものあどけなく彼らの前にひろげられた魂を、なんのいたわりもなく踏みにじることによって、このもろい美しい少年をここまで連れて来てしまったことを、誰も考えなかった。なぜ彼は最も感じやすい危険な少年時代に毎日夜中まで勉強しなければならなかったのか。なぜ彼から飼いウサギを取り上げてしまったのか。なぜラテン語学校で故意に彼を友だちから遠ざけてしまったのか。なぜ魚釣りをしたり、ぶらぶら遊んだりするのをとめたのか。なぜ心身をすりへらすようなくだらない名誉心の空虚な低級な理想をつぎこんだのか。なぜ試験のあとでさえも、当然休むべき休暇を彼に与えなかったのか。 今やくたくたにされた小馬は道端に倒れて、もうものの役にもたたなくなった。』(P171) 故郷に帰ったハンスは、死にたくも死ねず、恋も実らず、見習い工としての新たな生活も道半ばに、酔った帰りに川に落ちて生涯を終える。 なんとももの寂しいこの物語は、ヘッセ自身の実際の幼少期の経験を大いに元としていることが、巻末で解説されている。 彼は果たして何を学んだだろうか。周囲は果たして何を与えただろうか。優秀であり素直でありながら、自分という存在の何たるかに悩まされた孤独なハンスの苦悩を、詳しい情景描写によりありありと読者に想像させる、寂しくも印象深い物語であった。
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ヘッセの代表的自伝小説 ーー作中より 学校と父親や二、三の教師の残酷な名誉心とが、傷つきやすい子どものあどけなく彼らの前にひろげられた魂を、なんのいたわりもなく踏みにじることによって、このもろい美しい少年をここまで連れて来てしまったことを、だれも考えなかった。 疲れきってしまわないようにすることだね。そうでないと、車輪の下じきになるからね。 ーーー 全体的に暗い内容で、精神的にも現実世界においてもだんだん落ちていくハンスになんとも言えない気持ちになる。いくらでもやり直せるタイミングはあったように思ってしまうが、多感な年頃またその繊細さゆえに、自分の力では再び立ち上がることができなかったのかもしれない。周囲に救い上げる大人、神学校を辞めた後、優秀な模範生でなくなった後の彼自身を、その存在だけをそのまま認めてあげる人がいなかったことがとても悲しい。 神学校で出会う親友ハイルナーと主人公ハンスは対照的な人物に思えるが、どちらもヘッセの中の人格であるというあとがきが興味深かった。 ハンスの一面を持ちながらも、彼は85歳まで生き、ノーベル文学賞を受賞する文学者として知られている。 単純な感想として、受験勉強で苦しんでる学生とかは読まないほうがいい気がした。ちょっと病む。
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最近で一番気に入った本。 もともとの文も綺麗だけど、翻訳の高橋さんの腕の良さが際立つ。本当に綺麗な世界観で、ヨーロッパ行きたくなる。 内容は、共感する人、しない人で大きく分かれるんじゃないかな。
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学校や制度、または社会を「車輪」に見立てたヘッセの自伝小説 神学校受験前に水車を壊すシーンが、自然児である自分との決定的な決別の象徴であり、多感な少年にとって残酷な場面であると感じた。 ハンスは、無垢で感受に富む少年たちを均一化する教育(神学校や教師)や社会と自分らしく生きるために戦い、そこで疲弊し上手く立ち回れずに車輪の下敷きになってしまったのだろう。
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あぁハンス…。自分は何かも中途半端だったからあそこまでの虚無感は無かったけどあれは苦しかった。今でも母親にゴミ捨て場の人になりたくなければ勉強しなさいとどやされるがなんかもう何でもいい気がしてきた。
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かわいそうなハンス。さみしいハンス。誰にも慮られることなく冷たくなっていくハンス。ハンスがたどる運命の道はわたしがかつてたどりそうだった道だけに読んでいて同情してしまった。教育というものは大事だけれどそれよりも遊んでこの世の歓びを知ることはもっと大事だということをこの本は教えてく...
かわいそうなハンス。さみしいハンス。誰にも慮られることなく冷たくなっていくハンス。ハンスがたどる運命の道はわたしがかつてたどりそうだった道だけに読んでいて同情してしまった。教育というものは大事だけれどそれよりも遊んでこの世の歓びを知ることはもっと大事だということをこの本は教えてくれる。少年期の心の浮き沈みを書いた本は多いけれど、これほど冷静に振り返っているものは初めて読んだ。 かなり昔の本だし、読むのに苦労するだろうなと思っていたけれど、文語体なのにテンポがいいのか読みやすくてあっさり読了。 (以下、好きなところ抜粋) 彼はきわめて利口であったから、精神的な所有というものはすべて相対的な価値しかないということを忘れなかった。/彼らの中にはには、平等の意識と同時に、独立を望む心が現れた。そこにはじめて、多くの少年の子供らしいまどろみの中から、個性形成の芽ばえが目ざめたのである。筆紙には書けないような愛着としっととのささやかな場面が演ぜられ、それが発展して友情の契りになったり、おおっぴらにいがみあう敵意になったりした。/これを見たおとなの人があったら、このささやかな情景と、はにかんだ友情の表示のぎこちない内気な愛情と、ふたりの少年のまじめな細い顔とに、おそらくひそかな喜びを感じただろう。/ふたりの早熟な少年は友情の中に、初恋の微妙な神秘の一端を、わくわくする恥じらいをもって無自覚ながら、すでに味わっていたのだった。そのうえ、ふたりの結合は成熟する男の苦味のある魅力を持っていた。また同様に苦味のある薬味として、仲間全体に反抗心を持っていた。みんなにとってはハイルナーは親しめない男で、ハンスは不可解な男だった。それに、みんなのあいだの多くの友情は、そのころまだすべての無邪気な少年の戯れにすぎなかった。/先生たちが最も恐れるのは、それでなくても青年の発酵の始まる危険な年齢のころに早熟な少年に現れる異常な現象である。
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読了。ヘルマン・ヘッセの自伝的小説である。どんな外国語文学に共通して言えることと思うが、当時のドイツの情勢やヘッセについて知識があるかないかで小説の理解が異なると思う。小説を読む前に、解説から読むのも1つの方法と思う。 悩みながら成長する微妙な少年の心の弱さ、もろさ。それに対する...
読了。ヘルマン・ヘッセの自伝的小説である。どんな外国語文学に共通して言えることと思うが、当時のドイツの情勢やヘッセについて知識があるかないかで小説の理解が異なると思う。小説を読む前に、解説から読むのも1つの方法と思う。 悩みながら成長する微妙な少年の心の弱さ、もろさ。それに対する大人達の態度が子供を押しつぶしてしまう。 ヘッセの言いたかったことは何だろうか? 読み終わっても何度も自分に問いかける。時を置いて再度読み返したい本。
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親や教師の期待に応えようとする少年が、思わぬ方向にどんどんずれていく話で、個人的にはどこか共感できるところがありました。 暗いけど、深い話でした。 ドイツの美しい自然や街並みの描写が巧みで、そういったところにも味わい深さがあります。
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