わたしが・棄てた・女 の商品レビュー
数年前、愛するという…
数年前、愛するという題名で映画化されました.ハンセン氏病かんじやのために生きようとした彼女は…
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他者とのかかわりや、自身の言動が他者に与える影響は不可逆であること。その影響の大小を正しく知る術はないこと。通行人Aにも意思があり、通行人Aの一生があるということ。それらごく当たり前のことを、鈍い音でぶつけてくるような作品だった。 読みやすい本を好んで読んでいる人には、もしかする...
他者とのかかわりや、自身の言動が他者に与える影響は不可逆であること。その影響の大小を正しく知る術はないこと。通行人Aにも意思があり、通行人Aの一生があるということ。それらごく当たり前のことを、鈍い音でぶつけてくるような作品だった。 読みやすい本を好んで読んでいる人には、もしかすると少し読み難い文体かもしれない。
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男性目線で利己的に語られ…色々なことに気付かされ心乱される。というのではなく、徹底して女性側の一人称視点が堅固にある。ミツの生きたかを最後はシスターによって知らされるが、その手紙はミツの人生の何分の一しか書き表してはいない。それでも吉岡さんには十分何かを落としているが、それより読...
男性目線で利己的に語られ…色々なことに気付かされ心乱される。というのではなく、徹底して女性側の一人称視点が堅固にある。ミツの生きたかを最後はシスターによって知らされるが、その手紙はミツの人生の何分の一しか書き表してはいない。それでも吉岡さんには十分何かを落としているが、それより読者にパンチがきく。 解説では愛への希望、とあったが、浅薄な自分は人生の無情さや虚しさが大きく残る。いいことなんてなにもなかった、運命に振り回されたミツ。 初めの苦学生のパートなんかいらなかったんじゃないかと思うくらい、人生とはどうしようもなくどうにもならないものだと感じた。
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決して報われることのないどこにでもありそうな男と女の物語。でも遠藤周作の紡ぐ言葉が読者の心を間違いなく揺さぶる。ただただひたむきで残酷。大好きな作品で定期的に読み返したくなる作品。
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残酷な表題だが、“わたしが”、と棄てた側の主観で物語が進む事で読者の加害性が煽られる。 イエス的博愛が、棄てられた女性を媒体に描写されており、意欲的でありながら完成度の高い一作。
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著者の作品はどれも面白い、是非読んで、とおススメされていたのだけれど重すぎて躊躇していました。 本作は、その中でも軽作品と呼ばれるもので、これなら読めるかもと選定したものです。 実際読みやすい作品ではありましたけど軽、と表現されるような軽い話ではありませんでした。 とはいえ、ミ...
著者の作品はどれも面白い、是非読んで、とおススメされていたのだけれど重すぎて躊躇していました。 本作は、その中でも軽作品と呼ばれるもので、これなら読めるかもと選定したものです。 実際読みやすい作品ではありましたけど軽、と表現されるような軽い話ではありませんでした。 とはいえ、ミツのような生き方をしていては特にこの時代では辛い思いをすることが多く、実際ずっと独りぼっちで寂しさを抱えた境遇だったので、最後に思いやりに溢れた居場所を見つけることが出来た彼女はやっと幸せになれたのではないかと考えました。 それなのに、著者が結局あのような運命にした意味が私には分かりません。 考えさせられる作品・・・
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著者の生涯のテーマでもある「キリスト教的」愛とは何かを感じさせる、読み応えのある一篇。戦後3年当時を舞台にした物語なのに、それから約70年を経た現在に起き替えてもなお、登場人物やその心象の展開が無理なく読者に訴えかけて来る、その汎用性にも唸らされた。
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・この人生で必要なのはお前の悲しみを他人の悲しみに結び合わすことなのだ。そして私の十字架はそのためにある。 ・苦しみの共感、苦しみの連帯感 ・諦めることに子供の頃からミツは慣れていた。彼女には人生の運命とは反抗することではなく、受け入れることだった。 ・人間は他人の人生に傷痕を残...
・この人生で必要なのはお前の悲しみを他人の悲しみに結び合わすことなのだ。そして私の十字架はそのためにある。 ・苦しみの共感、苦しみの連帯感 ・諦めることに子供の頃からミツは慣れていた。彼女には人生の運命とは反抗することではなく、受け入れることだった。 ・人間は他人の人生に傷痕を残さずに交わることなんてできない。 ・苦しいのは・・誰からも愛されないことに耐えること。 ・御殿場のハンセン病院
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「恋愛というのは、いったいどのようにして成り立つのであろうか。」 お互いに好意を持ち、愛情に発展し、その先に肉体関係がある。とほとんどの女性は思いたいのだけれど男性は生理的にそれほど純粋ではない。という普遍的なテーマからこの物語の悲しい面をとりあげていた。 私も甲羅を経ている...
「恋愛というのは、いったいどのようにして成り立つのであろうか。」 お互いに好意を持ち、愛情に発展し、その先に肉体関係がある。とほとんどの女性は思いたいのだけれど男性は生理的にそれほど純粋ではない。という普遍的なテーマからこの物語の悲しい面をとりあげていた。 私も甲羅を経ているので、いまさら吉岡努という男性が使い捨てカイロのように、薄幸の森田ミツを捨てても驚きはしないけれど、遠藤周作の言わんとするところは、その餌食になった女性ミツの苦しみと救いの足跡なのだ。 運命にもてあそばれて、落ちるところまで落ち、ライ病にも罹ったらしい。でも彼女は悩みながらあきらめ逆らわず、流れに身を任せ、自分以外の不幸な人に同情する、見てくれもよくなく、とりえもない平凡な女性の一生。 文章も平明、救いの部分も宗教臭はさらっとしている、濃くない。しかしこんな聖女、現代はいないと思うよ。いないと願うよ。いや、いないということが危機なのか。やっぱり、いるかな、どっちなんだ。
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失恋したとき、 「大切な恋を失ったあなたへ」(仮) 的な本で 傷心を温めるのもストレートな手段かもしれない。 でも、「私、フラれました」体で 書店のキャッシャーやAmazonへ己を晒すのは、 ちょっと嫌。 ならばいっそ、 棄てた側のマインドに触れてみてはどうか? 遠藤先生なら...
失恋したとき、 「大切な恋を失ったあなたへ」(仮) 的な本で 傷心を温めるのもストレートな手段かもしれない。 でも、「私、フラれました」体で 書店のキャッシャーやAmazonへ己を晒すのは、 ちょっと嫌。 ならばいっそ、 棄てた側のマインドに触れてみてはどうか? 遠藤先生なら、 何かしら応えてくれるんじゃないか? 10年ぐらい前でしたか、 血反吐を吐くような失恋をしたときに、 藁にもすがる想いで手にとった1冊です。 前半部。 「先生、もう腹いっぱいです」というぐらい 棄てる側の赤裸々なマインドにえぐられました。 後半部。 遠藤節、炸裂。 難病への周囲の無理解。生きるとは? 献身とは? 棄てられた女が、どんな生き方をしたのか? 知るはずもない「その後」に 触れたときの男の心境は? 寝食を忘れ、塩をなめながら 一気に読破したときは、 手にした理由すら忘れていました。 荒療治ではありますが、 失恋に限らず、何かを失ったとき、 出口が見えないときこそ おすすめしたい1冊です。
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