私の中の日本軍(上) の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
幹候としてフィリピンで終戦を迎えた著者が戦後数十年を経て綴った本著。たとえば南京大虐殺が実際にあり得たのかどうか、よく分からないまま放っておくことに何の疑念も抱かず無神経に無関心に生きている僕のような人に読んで貰いたい。なぜ戦争が悪いのかは分かる。なぜ戦争は起こるのかということは分からない人が多いのではないだろうか。 本著は”百人斬り競争”や”南京大虐殺”という言葉がよく出てくる。その言葉に対して自分がどう思うのか、なぜそう思うのか、それは自分の意思なのか、考えさせられる点が多い。それは、また戦争が起きるのか、起きないのか、なぜそう思うのかを考えることでもあると思う。 ”戦陣訓”にしても、当事者でもない僕が何の根拠があって偏見を抱けたのか。今は戦中と違うのか、同じなのか。それは昔というほど遠くない。
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上下二巻。この本は、先の戦争に関する「戦後神話」なるものに危機感を抱いた著者が、戦争体験者としての使命感から、自ら将校として直接体験し考察したことを、偽ることなく後世に伝えるために書かれたものである。 特に、昭和12年東京日日新聞の浅海特派員による「野田、向井両少尉による百人斬...
上下二巻。この本は、先の戦争に関する「戦後神話」なるものに危機感を抱いた著者が、戦争体験者としての使命感から、自ら将校として直接体験し考察したことを、偽ることなく後世に伝えるために書かれたものである。 特に、昭和12年東京日日新聞の浅海特派員による「野田、向井両少尉による百人斬り競争」の記事が「戦意高揚のための虚報」だったことを証明することがこの本の中心テーマである。 法螺を吹く戦場の兵士の心理状態や日本刀神話、様々な証言に基づく記事の矛盾などの客観的な考察からは、著者の真実(歴史的事実)に対する真摯な姿勢と、この虚報により戦犯として処刑された野田、向井両少尉に対する鎮魂の思いが伝わってくる。 そして、その思いは翻って、戦後自らの保身のために真実を封印した浅海特派員と、この虚報を根拠に日本軍国主義を批判し中国に贖罪の姿勢を見せる朝日新聞本多勝一氏を厳しく批判している。 戦意高揚記事という虚報で国民を欺いた新聞が、戦後はこの虚報を根拠に中国に懺悔を繰り返すという二重の過ちを繰り返しているというのである。 「われわれの世代には、戦争に従事したという罪責がある。しかし、もし自らの体験をできる限り正確に伝えないならば、それは釈明の余地なき罪責を重ねることになるであろう」という著者の言葉は重い。
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戦時中、フィリピンに派兵された著者の山本七平が、自身の戦争体験に基づいて、朝日新聞の記者・本多勝一の『中国の旅』(朝日文庫)で報告されている「南京百人斬り」の嘘を明らかにした本です。 戦争中、「戦意発揚記事」として発表され、国民を欺いたのと同じ「虚報」が、戦後になって日本帝国主...
戦時中、フィリピンに派兵された著者の山本七平が、自身の戦争体験に基づいて、朝日新聞の記者・本多勝一の『中国の旅』(朝日文庫)で報告されている「南京百人斬り」の嘘を明らかにした本です。 戦争中、「戦意発揚記事」として発表され、国民を欺いたのと同じ「虚報」が、戦後になって日本帝国主義の残虐性の証拠として、またしても国民を欺いていることに、戦中・戦後を通じて変わることのない、日本社会の病弊が浮き彫りにされています。 横井正一のような人が、戦後何十年間もたった一人で戦争を続けることができたのは、『戦陣訓』が骨の髄まで叩き込まれていたからだ、と説明されることがあります。これに対して著者は、ジャングルから出て降伏することがどれほど難しいかという、より形而下的な問題を指摘しています。こうしたこともなかなか戦争体験のない世代には分からないものになってしまっているので、興味深く読みました。
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内容紹介 amazon 自己の軍隊体験を、深刻ぶらず冷静に、鋭い観察眼と抜群の推理力とで分析することにより、あやまれる「戦争伝説」「軍隊伝説」をくつがえし、その実体を解明する
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従軍経験、敗戦後の収容所の経験のある山本七平氏が南京100人切りの主役、向井少尉と野田少尉が架空のでっち上げの話を捏造し、それを毎日新聞の浅海記者が事実として報道する。昭和12年当時の話が真実的に報道されやがて敗戦。生き残った向井少尉は新聞記事が事実として裁判にかけられ死刑となる...
従軍経験、敗戦後の収容所の経験のある山本七平氏が南京100人切りの主役、向井少尉と野田少尉が架空のでっち上げの話を捏造し、それを毎日新聞の浅海記者が事実として報道する。昭和12年当時の話が真実的に報道されやがて敗戦。生き残った向井少尉は新聞記事が事実として裁判にかけられ死刑となる。浅海記者は彼らから聞いた話として真実を報道したと社、自分を守る。自分が死に繋がる話であれば解る部分もあるが社会的地位、収入を守って、偽報道を正当化するのは許せない。 縦社会の軍部の問題、当時の日本の問題、国民の愚かさを痛切に嘆いている。 頓馬なセンセーショナリズム。
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『だまされない議論力』吉岡友治 の巻末の読書案内に出ていたもの。そのうち読む予定-「「百人斬り」という日本軍の「戦争犯罪」が新聞によるでっち上げであることを検証。冷静なメディアと歴史の批判」
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上下巻です。戦争がリアルに描かれていますが、一個人の視点からみた話なので読みやすいです。こういう思いがいくら本で伝えられても、実際の戦争がなくならないっていう事実がすごく悲しいです。誰もこんな思いは二度としたくないと思うはずなのに。日本人に戦争の記憶が薄れてしまう前に、こういう情...
上下巻です。戦争がリアルに描かれていますが、一個人の視点からみた話なので読みやすいです。こういう思いがいくら本で伝えられても、実際の戦争がなくならないっていう事実がすごく悲しいです。誰もこんな思いは二度としたくないと思うはずなのに。日本人に戦争の記憶が薄れてしまう前に、こういう情景や感情を下の世代にしっかり受け継いでいきたいと、個人的には思います。
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戦争を論ずる時に困難が伴うのは、その規模が大きく、様々な立場からの「見方」が存在するからだと思う。その点、この本は「私の中の」と限定することで現地の所感や考えを詳細に記述していると思う。戦場の死臭や、密林行軍の困難、兵士の心情が現場ならではの描きだされ方をしていて、非常に分かりや...
戦争を論ずる時に困難が伴うのは、その規模が大きく、様々な立場からの「見方」が存在するからだと思う。その点、この本は「私の中の」と限定することで現地の所感や考えを詳細に記述していると思う。戦場の死臭や、密林行軍の困難、兵士の心情が現場ならではの描きだされ方をしていて、非常に分かりやすく興味深い。「私の中の」と断りながらも客観的事実はちゃんと切り分けられて論旨も明確。この本で言いたかったのはなんだろう?と思うと「戦場で戦っていない人達の無責任さがいかに戦場を陰惨なものとして、ボロボロの敗戦へ導いたのか。そして、その現象は何時の時代でも変わらず起こっている事だ」ということじゃないか、と感じた。この本を読むと密林の泥が足に絡みつき、行軍の疲れが肩にのしかかるように思える。だが、著者は屹立として「戦場に行った者でなければ到底分かるものではない」と読者の安易な共感を撥ね付ける。長い歴史から見ると今の時代に日本人として生まれた事は如何に僥倖なことか、そしてそれを安穏として貪っているだけではいけない、と思わせてくれる本。リアルな「重み」と「質感」がズッシリと読み応えに繋がっています。
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?実際の前線の兵士は、移動が最も苦しい作業であった。「気楽な転戦」どころの話ではなかった。ひょっとして実際の戦闘の方がまだ楽だったのだろうか??太平洋戦争の終結前後、前線の兵士同士の接触がどのようにして行われたかがわかった。?日本人が「集団」になると、なぜ陰湿ないじめが発生するの...
?実際の前線の兵士は、移動が最も苦しい作業であった。「気楽な転戦」どころの話ではなかった。ひょっとして実際の戦闘の方がまだ楽だったのだろうか??太平洋戦争の終結前後、前線の兵士同士の接触がどのようにして行われたかがわかった。?日本人が「集団」になると、なぜ陰湿ないじめが発生するのだろうか?「派閥」しかり「学級」しかり「部活」しかり、そして「軍隊」。
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自ら戦争従軍体験を持つ筆者による日本軍の実態を赤裸々に綴った書である。戦場という非日常の世界において、誤解と偏見の目で見られることの多い旧日本軍の実情について、深い理解を得ることが出来る一冊である。 自らの戦場での記憶を詳細に記録し、その非日常さを雄弁に語っている。教師やマスコ...
自ら戦争従軍体験を持つ筆者による日本軍の実態を赤裸々に綴った書である。戦場という非日常の世界において、誤解と偏見の目で見られることの多い旧日本軍の実情について、深い理解を得ることが出来る一冊である。 自らの戦場での記憶を詳細に記録し、その非日常さを雄弁に語っている。教師やマスコミ経由の押し付けの情報ではなく、筆者自身が経験した出来事のみ書かれており、戦場の実情を知る上で貴重な歴史的文献とも言えよう。
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