序の舞 全 の商品レビュー
「序の舞」で有名な画…
「序の舞」で有名な画家・上村松園は、婚外子の母でもありました。気高い女性を描いた松園の生涯に引き込まれます。
文庫OFF
偉人の生涯ものとなれば、駆け足でその一生をただ綴られていくだけのものが見られるけど、この本では時々の心の動きが細かく描かれ、京言葉のうっとりする柔らかさと容赦ない意地悪さがさらに情景を鮮明にしてくれている。 実は私自身20代に一度この本を読んでいて、その時はこの波乱の人生に凄い...
偉人の生涯ものとなれば、駆け足でその一生をただ綴られていくだけのものが見られるけど、この本では時々の心の動きが細かく描かれ、京言葉のうっとりする柔らかさと容赦ない意地悪さがさらに情景を鮮明にしてくれている。 実は私自身20代に一度この本を読んでいて、その時はこの波乱の人生に凄いなあという感想は持ったものの、現在それから40年近くを経て再読して、本の印象がガラリと変わった。 作品を後世に残すほどの人でもまさしく産みの苦しみのほかに、生きることそれ自体の苦しみをいちいち経験し、得られるもの、失うものの中で普通人よりも高いハードルを乗り越えねばならないことが想像できた。 凄い作家だ。
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上村松園の、清潔で格調高く上品な、 この方にしか描けない美の世界を もっと深く知りたくて、手に取った。 決して短くはない小説なのに、一気読み。 女性が活躍することが難しく厳しい時代に ただひたすらに、良いもの、美しいものを 完成させるべく突き進む人生。 一流になるために、あらゆ...
上村松園の、清潔で格調高く上品な、 この方にしか描けない美の世界を もっと深く知りたくて、手に取った。 決して短くはない小説なのに、一気読み。 女性が活躍することが難しく厳しい時代に ただひたすらに、良いもの、美しいものを 完成させるべく突き進む人生。 一流になるために、あらゆる努力をも 惜しまないながらも、恋心に揺れ、 苦しむ姿は生身の人間としても 読みながら心揺さぶられた。 とても良い小説を読んだ読後感に 浸り、上村松園の作品を眺める。 より一層、味わいが深くなった気がする。
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今まで日本画は興味なかったのですが、この本を読んで本物を見たい気持ちになりました。本人もさることながら母も尊敬できる人。子どもをあんなふうに育てられるだろうか。
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女性日本画家上村松園をモデルにした小説。 読んだのはかなり昔ですが波乱の生涯に衝撃を受けた覚えが。 上村松園の美人画を観る時はいつもその人生に思いを馳せています。
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友人に勧められて読みました。京都弁に慣れるまで2日を要しました。つうさんの1回目の妊娠は仕方ないとして、2回目は彼女も悪いです、男に肝心なことは任せてはいけませんね。上村松園が描いた枕絵があるなら見てみたいものです。日本の春画は他国より出来が良いですから。 40ぐらいですべてを捨...
友人に勧められて読みました。京都弁に慣れるまで2日を要しました。つうさんの1回目の妊娠は仕方ないとして、2回目は彼女も悪いです、男に肝心なことは任せてはいけませんね。上村松園が描いた枕絵があるなら見てみたいものです。日本の春画は他国より出来が良いですから。 40ぐらいですべてを捨ててしまいたくなるような恋に落ちるのは、今も昔も割とあることで、女の真理をついています。
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子どもの頃の好奇心、学びたいという熱情が全体を流れる芯の強さにつながっているように思いました。作品を観るときの視点が広がるこのような作品はいつの時代もありがたいです。
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久々の再読。面白かったことは覚えていたのだが、10年ぶりくらいだったので読み返すと細かなところはすっかり忘れており、また新鮮な気持ちで楽しめた。 京都のお茶屋さんで生まれ育った、女性で美人画を描いた日本画家である上村松園をモデルにした小説。主人公を始め、出てくる著名な画家などは...
久々の再読。面白かったことは覚えていたのだが、10年ぶりくらいだったので読み返すと細かなところはすっかり忘れており、また新鮮な気持ちで楽しめた。 京都のお茶屋さんで生まれ育った、女性で美人画を描いた日本画家である上村松園をモデルにした小説。主人公を始め、出てくる著名な画家などはそれぞれに本当の人物がいるから、フィクションというよりも、ノンフィクションのスキマを想像で埋めた作品だと思っている。 本当のことを知ったような読後感がある。 画家のリアルな私生活や感情が細かに描かれている。だからこそ、これを読んでから上村松園の絵を見るとまた、絵の情感がとてもよく伝わってくる。どんな専門家の絵の絶賛や技術的なことを言われても、素人としては、はあ…で終わるけれども、こんなに壮絶な人生で、こんなことがあって、そしてこの絵が描かれたのか、と知ると、真実かどうかはおいておいて、鳥肌が立つ。 京都という土地で生まれ、人の裏表のある京都の粘っこい性質や、姿のうつくしい京都の女性文化の中で育っていく主人公の津也(=上村松園)。 それを絵に写し取っていくのだが、ただのお絵描きではなく、自分の身を切るような恋愛や憎悪といった様々な感情を筆に浸すことになる。宮尾登美子さんがそういう人なのかもしれないが、特に、苦しいところを描くのがうまい。人が苦しみ抜いて、この世の地獄か、死んだ方がましだ、と死と生のうちをフラフラとさまよっている、まさに津也の描いた「焔」の作品のような情感にぐっと惹きつけられる。 生きたっていいし、死んだっていいし、と思った時にちょっとしたことがあって、「ああ、また生き永らえてしまった…」というような(特に女性の)人生の、 なんてことないようなささいな描写をするのがものすごくうまい。そこらへんは、津也の描く絵とも似ているように思った。 上村松園の絵を見たけれど、ちょっとした縁側で人を待ったり、舞妓さんが仕舞支度をしたり、針の穴に糸を通そうとしたり、そういう日常の中にある動きを捉えた絵がばつぐんにすてきだと思った。 品のある絵、という評価はあまりピンとこなかった。自分にその目がないからだと思うけれど。そこにいた人の気配が漂っている情感が、いいなあと思った。 また、図書館で探してみたが、師の、竹内栖鳳の絵は(斑猫とか)あって、ああこれ美術の教科書でみた、と思った。しかし、鈴木松年の絵がないのが、こうして時がたってみると名実津也は師匠を越えたのかと、何かまた鳥肌が立つ気がする。しかしそうなっている松年の、意固地でどうしようもない感じも、たまらなく枯れ木の好きな人間としては胸にくる。やっぱ好きな作品だなあと再実感。ただ、700ページ越えは長くてなかなか読む機会を得るのが難しいのが諸刃の剣。
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※このレビューにはネタバレを含みます
最高でした。主人公は、絵の世界では男に交じり、男性社会と闘っていく強い女性なのに、私生活では不倫したり、若い男をあきらめられず未練たらしく迫っていったり…でもそのどうしようもなさがいとおしくなる。
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厚さがあり、読みごたえは十分だが、上村松園のモデルことつうさんがどうにも合わず。 中盤までの絵に対する執念や描写は楽しく読むことができたが、途中からの男女関係のゴタゴタは読んでいて辛かった。 女として絵の世界で生きることの難しさや、同情的な部分も多々あったのだが、だんだんドロド...
厚さがあり、読みごたえは十分だが、上村松園のモデルことつうさんがどうにも合わず。 中盤までの絵に対する執念や描写は楽しく読むことができたが、途中からの男女関係のゴタゴタは読んでいて辛かった。 女として絵の世界で生きることの難しさや、同情的な部分も多々あったのだが、だんだんドロドロで盲目的になり、何とも言えない恐怖心が。 女性の感情や、綺麗なだけでは生きていけないという陰の部分を読むのは非常に好きなのだか、いかんせん内容が濃くて長かったので気持ち的に負担が大きく感じた。 そんな中で最も魅力を感じたのは津也の母である勢以という女性。 主人公さながらの存在感を放っている。 周囲にどんな嫌味や皮肉を言われようとも津也の道を支え、あるときは厳しく諫め、優しく諭し、あたたかく包みこむように見守ってくれた勢以に所々で感情がこみ上げて涙がこぼれた。 母の愛は海より深し、とは言うが本当に彼女を見ていると母親の大きさを感じずにはいられない。 周りとは違う特殊な道を行く我が子に不安を持ちながらも信じ、恥じることなく真っ直ぐ前を向いて歩いていく勢以の姿にとても励まされた。 そして津也にとっても勢以がそういう存在であったからこそ、険しく聳え立つ自分の道を進むことができたのだと思う。
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