胡蝶の夢(二) の商品レビュー
良順による病院開設、…
良順による病院開設、お見事!また、養子となった伊之助の今後の展開に注目!
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松本良順の奔走により…
松本良順の奔走により、庶民にも解放された蘭学の病院が立てられた。幕末の平等思想がこういう所からも湧き上がっていたことを実感させられます。
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長崎の地でポンペに師事した良順はオランダ式の病院を長崎に作ることにした。長崎奉行の岡部の力もあり見事完成し順天堂から学びにきていた舜海や関寛斎らと共に活動する。一方伊之助は一度読み聞きしたものは記憶するという類稀なる能力でポンペの講義を他の塾生に翻訳して伝えたりしていたが、人間関...
長崎の地でポンペに師事した良順はオランダ式の病院を長崎に作ることにした。長崎奉行の岡部の力もあり見事完成し順天堂から学びにきていた舜海や関寛斎らと共に活動する。一方伊之助は一度読み聞きしたものは記憶するという類稀なる能力でポンペの講義を他の塾生に翻訳して伝えたりしていたが、人間関係に興味がなく他の塾生やポンペから毛嫌いされてしまい追い出される形で平戸へと旅立つ。そこで同じ塾生だった岡口等伝の娘と結婚することとなる。 オランダ式の病院を導入することによって日本の封建社会が覆され平等意識が民衆に芽生えるきっかけになったというのは驚きだった。
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幕末。西洋医学を極めようと奮闘する医師を描く。幕藩体制という官僚組織の中で苦闘する松本良順と蘭医ポンペ。
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いつの時代も日本という国は無能なお役人さんに振り回されているんだなーと思ってしまった。全く主題から外れてはいるが。伊之助は今でいう発達障害なのかな。でもお勉強はズバ抜けてできる感じ、この人の様な類の人物も今の医学界にも沢山いるなとも思った。結局時代は変われど、社会は同じように回っ...
いつの時代も日本という国は無能なお役人さんに振り回されているんだなーと思ってしまった。全く主題から外れてはいるが。伊之助は今でいう発達障害なのかな。でもお勉強はズバ抜けてできる感じ、この人の様な類の人物も今の医学界にも沢山いるなとも思った。結局時代は変われど、社会は同じように回っているんだな。違うように見えても。 ポンペさんは、日本の近代医療の礎を築いたお方なのか。シーボルトの方は存じ上げていたが、これは盲点だった。
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司馬遼太郎の小説は不思議な魅力がある。ときどき冗長な記述が延々と続くこともあれば、引き込まれるようにスイスイと読めることもある。この小説で、伊之助に関する記述は後者に属する。天才となんとかは紙一重というが、伊之助はまさにそんな人物だ。味噌汁の中に釣り針を入れられた件、ラシャで作っ...
司馬遼太郎の小説は不思議な魅力がある。ときどき冗長な記述が延々と続くこともあれば、引き込まれるようにスイスイと読めることもある。この小説で、伊之助に関する記述は後者に属する。天才となんとかは紙一重というが、伊之助はまさにそんな人物だ。味噌汁の中に釣り針を入れられた件、ラシャで作った着物が腰までしかなかった件、佳代に私は寝ますと言った件などなど、どれも傑作だった。
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★評価は読了後に。 うーむ、伊之助の話、やっぱりあんまり面白くない。 このキャラクターとしてチョイスして調理できる素地をこの作家は持っていないと思う。良い悪いの話ではなく、この作家にはそういう話は向いていないし、また、誰もそれを求めてはいない。 別の作家が取り上げて描く人物のよう...
★評価は読了後に。 うーむ、伊之助の話、やっぱりあんまり面白くない。 このキャラクターとしてチョイスして調理できる素地をこの作家は持っていないと思う。良い悪いの話ではなく、この作家にはそういう話は向いていないし、また、誰もそれを求めてはいない。 別の作家が取り上げて描く人物のような気がするのは凡民の気のせいか。
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新選組と懇意にし、また幕府の海陸軍軍医総裁となった松本良順の軌跡を読みたいはずなのに、何故か3・4巻は読まなかった。今後読む予定。(2021.9.5) ※2009.7.23購入@ehon 売却済み
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1857年(安政4年)長崎海軍伝習所でポンペは松本良順、伊之助ら14名の学生に医学の講義を始めた。 安政5年咸臨丸で勝海舟を船長格として練習航海のため薩摩を訪れ島津斉彬と会う。 この年コレラが日本国中を震撼させた。良順も罹患するが一命を取り留める。 安政6年長崎海軍伝習所は...
1857年(安政4年)長崎海軍伝習所でポンペは松本良順、伊之助ら14名の学生に医学の講義を始めた。 安政5年咸臨丸で勝海舟を船長格として練習航海のため薩摩を訪れ島津斉彬と会う。 この年コレラが日本国中を震撼させた。良順も罹患するが一命を取り留める。 安政6年長崎海軍伝習所は突如廃止となり海軍教育も医学教育もやめる命令がでたが井伊直弼の機転のより医学教育は廃止を免れる。 コレラ騒動の年からポンペと良順は病院建設に奔走する。「オランダの市民社会から成立した病院は病人を病人として見る。原則として病人の身分の高下や貧富は病院の門を入ればいっさいその優性、劣性の効力を失う。」身分制を基本的に成り立つ江戸体制とは相入れないので病院建設には強い反対があったが紆余曲折をへ文久元年(1861年)養生所は完成した。 一方伊之助は「七新薬」という本を書く過程でポンペに破門され医学伝習所を出て行く。 伊之助が長崎から平戸へ向かう件は司馬さんの「街道を行く」を片手に西彼杵半島を旅する気分で楽しい。ただ伊之助は平戸で婿養子になってこれからどうするのだろう
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「イノサンよ、新薬についてちゃんとした本がないと、蘭方の医者が迷うのではないか」 と、関寛斎が伊之助に話したことから、この両人の関係が密接になった。寛斎は伊之助の実力に敬服していたが、ひとつにはこういうかたちで伊之助を解放しようと思ったのにちがいない。 関寛斎からこの著作につ...
「イノサンよ、新薬についてちゃんとした本がないと、蘭方の医者が迷うのではないか」 と、関寛斎が伊之助に話したことから、この両人の関係が密接になった。寛斎は伊之助の実力に敬服していたが、ひとつにはこういうかたちで伊之助を解放しようと思ったのにちがいない。 関寛斎からこの著作についてすすめられたとき、伊之助はしばらく否とも応ともいわず、斜視の視線を宙に遊ばせていた。 寛斎からみれば、無感動な横っ面がとげをふくんでそこに存在している感じで、なにか不調和なのである。 (考えているのだろう) 寛斎は推量したが、 (これが、ひとに嫌われるもとでもあるのか) とも思い、さらに考えてみた。寛斎の思案では、人間は、人間との接触を好む動物と思うが、接触のときたとえ互いに無口で居ても、なにがしかのリズムを共有することをよろこぶ。相手がまったく違うリズムもしくはリズムを出していない場合、当方は戸惑うか、ひどく不愉快になる。人間は、美的な秩序に快感を持つ動物らしいが、相手との接触が成立した瞬間、微笑しあうだけでも、両者のあいだに一つのリズムもしくは秩序ができあがって快感を分けあうことができるのだが、伊之助は天成その能力を欠いているようであった。寛斎は無類の人間好きであるだけに、存在そのものがひとびとに違和感をあたえる伊之助にむしろ愛嬌を感じた。
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