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梟の城 の商品レビュー

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159件のお客様レビュー

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2018/05/13

 司馬遼太郎の初期のころの作品。歴史小説ではなくて時代小説、織田信長にやられた伊賀忍者の残党が活躍する小説だが、後々のまじめで固い司馬遼太郎の小説からはあまり想像できないような、娯楽に徹した小説。漫画の感覚というと言い過ぎかもしれないが、楽しく読むことができた。

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2017/11/05

天正伊賀の乱による伊賀国の滅亡。一族を惨殺された葛籠重蔵(つづらじゅうぞう)は秀吉暗殺に忍者としての生涯を賭ける。一方、伊賀の国を裏切り、秀吉配下の前田玄以に仕官した風間五平は、重蔵を捕らえることによって自身の出世を企むが… 忍者が駆けて跳ねる本書は、司馬遼太郎の直木賞受賞作に...

天正伊賀の乱による伊賀国の滅亡。一族を惨殺された葛籠重蔵(つづらじゅうぞう)は秀吉暗殺に忍者としての生涯を賭ける。一方、伊賀の国を裏切り、秀吉配下の前田玄以に仕官した風間五平は、重蔵を捕らえることによって自身の出世を企むが… 忍者が駆けて跳ねる本書は、司馬遼太郎の直木賞受賞作にして、著者を新聞記者から作家にさせる契機となった作品のよう。うん、納得の作品です。 戦乱から太平への過渡期。忍びの意義も失われつつある時勢において、自身の価値を忍びの生き様に求める重蔵。そして、忍びという影の世界を捨て、立身出世に欲望をみせる五平。対照的なふたりですが、どちらにもどちらの正義があるようで、決して甲乙つけられるものではないでしょう。しかし、著者はそのどちらにも冷ややかな目線を送ることを忘れていません。これが司馬遼太郎のおもしろいところだと思うのですが、あらためて重蔵と五平への考えを巡らすと、どうも本書は時代に取り残された忍者の悲嘆を描いたのではないかと、そんな印象が強く残りました。 まず、忍者としての器量が素晴らしい五平。立身出世を求め、忍者を捨てた彼ですが、結局は彼自身より大きな存在の捨て駒にしかなっていません。彼自身が武士になろうと努めようが、周りは使い勝手のいい忍者としか見ていないんですね。これが彼の悲劇に繋がるでしょう。 一方、一族の仇である信長が死に、生きる希望を失っていた重蔵は突如降ってきた秀吉暗殺に自身の忍者としての生涯を求めます。時勢はもはや太平。忍者としての自身の意義に時折揶揄すら零す重蔵は、任務の過程で出会った小萩という女性に恋慕の情を抱き、自身の不甲斐なさに更なる自嘲を加えます。小萩は、忍者を捨て共に生き永らえようと吐露しますが、その思いは届きません。小萩への恋慕を捨て、重蔵が極限まで求めた生き様。その結果があのような形での秀吉との対面、そして失望であったと思うと、本書の結末は、果たしてハッピーエンドなのだろうかと疑問が残ります(もちろん、読後は「ああよかった!」との思いでいっぱいでしたが)。思いを抱く女ですら諦めさせることのできなかった生き様。その生き様を砕いたのは、生き様自身であったという筋書きには、ただ畏れを抱くばかりです。 以上のように、自身の生き様を忍者の内外に求めたふたり。しかし、その結果は、忍者であるが故の悲しい答え。これは時勢に取り残された忍者としての宿命なのかもしれません。そう考えると、歴史作家としての司馬遼太郎の達観が反映されている気がしてなりません。著者の作品を読んでいて時に感じる歴史の残酷さがこの作品には秘められているのです。 司馬遼太郎の作品を読み始めて10年になりますが、あらためて著者の素晴らしさを再確認した一冊でした。

Posted byブクログ

2017/11/05

伊賀忍者二人の相弟子が、対照的な立場・性格で、せめぎあう大作時代小説。 秀吉暗殺をねらう伊賀忍者の正統派・重蔵。 かたや、忍者としての力量は優れながらも、伊賀を売り、重蔵を捕らえ、 武士としての出世を狙う五平。 ふたりの相反する立場以上に、ふたりの性格から来る行動が面白い。 ...

伊賀忍者二人の相弟子が、対照的な立場・性格で、せめぎあう大作時代小説。 秀吉暗殺をねらう伊賀忍者の正統派・重蔵。 かたや、忍者としての力量は優れながらも、伊賀を売り、重蔵を捕らえ、 武士としての出世を狙う五平。 ふたりの相反する立場以上に、ふたりの性格から来る行動が面白い。 正統派伊賀忍者でありながら、人間臭く、情に脆く、女性へ優しい重蔵。 かたや、忍者という立場を捨てながらも、忍者として、薄情に徹する五平。 詳しく語られる背景や台詞にぐいぐい惹きこまれる。 そして、いよいよ、秀吉がいる伏見城に忍び込む重蔵と追う五平。 秀吉の寝床に潜入できながらも、殺さずに去る重蔵。 かたや、取り押さえるどころか、曲者と間違われて捕らえられる五平。 そして、偽った名前・石川五右衛門として処刑される。 古文書を読み漁り、そこに独創をおりまぜた著者の世界は、 史実に近いのではないかと思う。 忍者という、影の世界を、いきいきと描いた大作。 第42回直木賞受賞作。

Posted byブクログ

2017/11/04
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忍者ものでおすすめいただいて拝読。 図書館レンタル。 悪くないけど長い。中盤間延び。オチ納得できるけどしょぼい。てか普通。引き伸ばす必要あったんだろうか、という感じ。でだしちょっと難しい。キャラ立ってる。侍勢が誰だかわかんなくなる。心理描写というかアイデンティティが臨場感あっていい。全体的にはなんていうか湿っぽい感じ。手首ふっとばすの好きだね。あと欲求不満おおいね。色気というより欲って感じ。そんなえろくないけど高校生以上向けかな。

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2017/09/01

主人公の伊賀の忍者、葛籠重蔵は格好良いし忍者としての任務や小萩との関係が気になって引き込まれた。 忍者独特の考え方とかになんだか物悲しさが漂うんだけど特に女性の忍者、くノ一が切なかった…。 くノ一という言葉自体の意味とかね。 * 和田竜さんの『忍びの国』読んで面白いと思った方は、...

主人公の伊賀の忍者、葛籠重蔵は格好良いし忍者としての任務や小萩との関係が気になって引き込まれた。 忍者独特の考え方とかになんだか物悲しさが漂うんだけど特に女性の忍者、くノ一が切なかった…。 くノ一という言葉自体の意味とかね。 * 和田竜さんの『忍びの国』読んで面白いと思った方は、こちらも楽しめるかと。 言葉遣いとかちょっと難しいけど。 『梟の城』は映画化してて主人公中井貴一さんなんだね。 ちょっと気になる。

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2017/02/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

安土桃山時代を題材に、伊賀と甲賀の忍者が繰り広げる物語 秀吉暗殺を依頼されるが、数々の壁が立ちふさがる 石川五右衛門の逸話に少し触れている

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2016/10/29

この方の作品は正直あまり好きではありません。理由は上から目線の書きっぷりがすごく鼻につくからです。正反対なのが山本周五郎で、庶民目線で弱きを助け強きをくじく語り口は非常に好感を持てます。あくまで個人的な意見ですが。 本作についても、木さるや小萩に対する書きっぷりにそういった傾向を...

この方の作品は正直あまり好きではありません。理由は上から目線の書きっぷりがすごく鼻につくからです。正反対なのが山本周五郎で、庶民目線で弱きを助け強きをくじく語り口は非常に好感を持てます。あくまで個人的な意見ですが。 本作についても、木さるや小萩に対する書きっぷりにそういった傾向を感じたのですが、最終章が衝撃的というか、意外な着地の仕方が結構面白かったので、まあいっかという感じでこんな星の数になりました。

Posted byブクログ

2020/04/03

伊賀上野に行き、忍者に関心を持つ。 要するに、忍者がどういう暮らしをして、どういう術を持っていたのかは分かったのだが、 なぜ、そんなことをしていたのか分からなかったので。 だいたい分かったので良かったと思う。

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2016/09/05

忍者に焦点を当てた恐らく最初の小説。 変幻自在であるのに荒唐無稽でなく読めるのは作家の筆致だ確かなのだろう。 色褪せない作品は手元に置いておきたくなる。

Posted byブクログ

2016/05/16

途中、主要な登場人物の掛け合いで中だるみはするが、全体的にとても濃密で読み応えがある。 作者の語彙力がすごい。特に人間描写において初めて触れるような言い回しが多くあり、凝り過ぎ感はあるけど全体的に作品の個性の一つとなっている。 忍者の信念、潔い生き方には一種共感できるが到底真似で...

途中、主要な登場人物の掛け合いで中だるみはするが、全体的にとても濃密で読み応えがある。 作者の語彙力がすごい。特に人間描写において初めて触れるような言い回しが多くあり、凝り過ぎ感はあるけど全体的に作品の個性の一つとなっている。 忍者の信念、潔い生き方には一種共感できるが到底真似できない強靭さがあり、自分の感情をコントロールするところなど和尚の目指す方向性と同じとしたところはなるほどと感じた。 終盤で登場する和尚の言葉が実に重い。 五平が実はあの有名人であるかとしれないというサプライズが楽しい。ある程度根拠はあるのだろうけど。 そして意外なハッピーエンドに読了感も清々しい。

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