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「坊っちゃん」の時代(文庫版)(第五部) の商品レビュー

4.5

9件のお客様レビュー

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2021/03/15

明治の文壇史をざっくりと掴んでから読みましたが、登場人物たちを繋ぐ糸の結び方が本当に見事で、ひたすら感心、興奮しながら読みました。 感傷的になり過ぎず、悠大な時の流れの一片という描き方、それでいて登場人物への静かで温かい眼差しが心地よく、架空のテーマ曲さえ聞こえてくるような、素晴...

明治の文壇史をざっくりと掴んでから読みましたが、登場人物たちを繋ぐ糸の結び方が本当に見事で、ひたすら感心、興奮しながら読みました。 感傷的になり過ぎず、悠大な時の流れの一片という描き方、それでいて登場人物への静かで温かい眼差しが心地よく、架空のテーマ曲さえ聞こえてくるような、素晴らしい作品でした。 以前は絵が苦手で手を付けなかったのですが、自分の中でこの作品を味わえるしかるべき時期が来たのだと思います。感謝です。

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2017/08/29

最終巻は漱石で締め=「坊ちゃん」の時代だからね。岩波文庫『漱石日記』を読んだ記憶がよみがえる。しかし、こうして漫画という媒体で修善寺大患を見ると一層迫力が増す。大逆事件の被告は処刑されて死んでゆく。漱石も啄木も死にゆき、明治は終焉を迎えた。養老氏の解説は難しかったが、日本人の軽さ...

最終巻は漱石で締め=「坊ちゃん」の時代だからね。岩波文庫『漱石日記』を読んだ記憶がよみがえる。しかし、こうして漫画という媒体で修善寺大患を見ると一層迫力が増す。大逆事件の被告は処刑されて死んでゆく。漱石も啄木も死にゆき、明治は終焉を迎えた。養老氏の解説は難しかったが、日本人の軽さと書かれていることに、維新から明治(富国強兵)、そして昭和の大戦と敗戦後の復興は、良くも悪くも日本人の「軽さ」に負うところが大きかったのではないかと感じた。

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2014/03/07

もし『坊ちゃん』の時代に生まれていたら、私はどういう生き方をしていたんだろう。そんなことを思いながら、ふと気づく。それは、とりもなおさず、戦後の民主主義と平和の日本(その歴史はとても短い)に生まれたのはほんの偶然にすぎない私が、いま、どう生きたらいいのか、という自問でもあるのだと...

もし『坊ちゃん』の時代に生まれていたら、私はどういう生き方をしていたんだろう。そんなことを思いながら、ふと気づく。それは、とりもなおさず、戦後の民主主義と平和の日本(その歴史はとても短い)に生まれたのはほんの偶然にすぎない私が、いま、どう生きたらいいのか、という自問でもあるのだと。

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2014/01/31

漫画では死の世界を彷徨うのがメインだったけど、本人の手記によると死の間は何も無く意識を失う直前と意識を取り戻す直後が一瞬にして繋がっている。これは死は無であるということを示しているのか、それとも完全に死んでいない以上、夢のように本人がただ忘れているだけなのか。そこが特に気になった...

漫画では死の世界を彷徨うのがメインだったけど、本人の手記によると死の間は何も無く意識を失う直前と意識を取り戻す直後が一瞬にして繋がっている。これは死は無であるということを示しているのか、それとも完全に死んでいない以上、夢のように本人がただ忘れているだけなのか。そこが特に気になった。

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2013/03/19

最終の第5部は、一周回って再び夏目漱石。胃潰瘍を悪化させ、修善寺への転地療養へ向かうところから始まる。ここで、世にいう修善寺の大患が起こるが、この危篤状態の中で漱石はこれまで登場した人々と邂逅する。時も場所も超えた形でのそれは、日本が辿ってきた近代化という道筋の総括であり、明治と...

最終の第5部は、一周回って再び夏目漱石。胃潰瘍を悪化させ、修善寺への転地療養へ向かうところから始まる。ここで、世にいう修善寺の大患が起こるが、この危篤状態の中で漱石はこれまで登場した人々と邂逅する。時も場所も超えた形でのそれは、日本が辿ってきた近代化という道筋の総括であり、明治という時代の終わりを告げるものでもある。 それにしても、こういう作品を描くことができたのは、まさに80年代が最後なんだろうな。まだ週刊紙的なもの、文壇的なものが力を持っていた時代の名残と言うか。見田や大澤あたりがいうところの虚構の時代においてかろうじて生きながらえてきたものの残滓。こういう時代感覚が効力を発揮したのは80年代まででそれ以降は完全に断絶され効力も失効している。例えば70年代に「坊ちゃんの時代」を描いたとしてもそう大きな違いはなかったと思うが、90年代以降に制作されたなら全く違った作品にならざるを得ないだろう。だから、この作品は描かれてすぐに断絶を経験せざるを得なかった、つまり描かれた直後から旧い作品となってしまった。それは作品としては不幸なことであるが、同時に成立の直後から歴史になったとも言える。

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2011/04/22

近代日本の青春、明治は終焉した。果たして明治時代は何だったのか。生死の境を往還する漱石の脳裏に去来するものは。鴎外、啄木、子規、一葉、二葉亭、ハーン、そして猫。

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2010/02/05

漱石の伊豆転地療養、30分の臨死体験で啄木を案内人として前巻までの人物たちが登場 秋水死刑執行 養老猛の解説の、世代による明治を見る目の違いが面白い。

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2010/01/30

-僕は官の世話にはならない 大学の世話にならない 博士号の世話にもならない- 「坊ちゃんの時代」第五巻、最終巻だけに、過去を振り返るシーンが多い。大逆事件が象徴するように、明治末期は、思想・言論の自由に弾圧を加え、帝国主義へと走り始めていた。明治人、漱石は、正面きって政治に口出...

-僕は官の世話にはならない 大学の世話にならない 博士号の世話にもならない- 「坊ちゃんの時代」第五巻、最終巻だけに、過去を振り返るシーンが多い。大逆事件が象徴するように、明治末期は、思想・言論の自由に弾圧を加え、帝国主義へと走り始めていた。明治人、漱石は、正面きって政治に口出しせず、博士号を受け取らないというかたちで、時代が向かう方向に抗った。 「凛列たり近代 なお生彩あり明治人」

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2009/12/15

「多少の縁あるひとを見捨てるは恥です。」 「役立とうと思うは義です。」 舞台は明治(末期)。登場人物は夏目漱石、森鴎外、石川啄木、幸徳秋水、管野須賀子、二葉亭四迷をはじめとした明治の文学者・思想家たち。それぞれの生きる明治の世相が、時に痛快に、時に物悲しく描かれています。 登...

「多少の縁あるひとを見捨てるは恥です。」 「役立とうと思うは義です。」 舞台は明治(末期)。登場人物は夏目漱石、森鴎外、石川啄木、幸徳秋水、管野須賀子、二葉亭四迷をはじめとした明治の文学者・思想家たち。それぞれの生きる明治の世相が、時に痛快に、時に物悲しく描かれています。 登場人物の一言一言が重く深く響く、関川夏央・谷口ジローによる劇画的、というか映画的な超名作です。

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