海と毒薬 の商品レビュー
母なる海、私の中で海とは神に近い存在を示すものだった。しかしこの作品では海は流動し、飲み込む形なき、神なき世界の象徴であった。神の存在を持たない社会、つまり日本は、罪や罰の意識を感じることに麻痺している。自分の日常を振り返っても、一体、悪事を悪事として認識していることがどれ程ある...
母なる海、私の中で海とは神に近い存在を示すものだった。しかしこの作品では海は流動し、飲み込む形なき、神なき世界の象徴であった。神の存在を持たない社会、つまり日本は、罪や罰の意識を感じることに麻痺している。自分の日常を振り返っても、一体、悪事を悪事として認識していることがどれ程あるだろうか。利己的な心が働いていることがほとんどである。己の中にある良心は麻痺していないか。今、神様が見ている、神様が怖くないのか等という日本人がいるか。狂気の沙汰は、過去の話ではなく、むしろ現代であるからこそなお一層、私たちの心の中に潜み、顔を出そうとしているのである。
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教授争い、戦争末期の誰もが死んでもおかしくない状況、そんな最中に起こった生体解剖事件。倫理観、罪の意識と罰、いろんな問題を浮き彫りにする作品。
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結構誤解されてる方いらっしゃいますが、「九医生体解剖事件」は事実ですが本作はテーマのみ当てはまっており中身はフィクションです。 勝呂だったらどうするだろうとずっと考えさせられます。 狂気のある意味独特の空気の中、自分も参加しちゃうのかな?とか…。 おばはんとか若奥様(名前失念。簡...
結構誤解されてる方いらっしゃいますが、「九医生体解剖事件」は事実ですが本作はテーマのみ当てはまっており中身はフィクションです。 勝呂だったらどうするだろうとずっと考えさせられます。 狂気のある意味独特の空気の中、自分も参加しちゃうのかな?とか…。 おばはんとか若奥様(名前失念。簡単な手術なのに部長がミスして死なせてしまった)とかが今でも印象に残ってます。
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戦時中、俺が在籍している大学であった『米軍捕虜生体解剖実験』について描いた作品。 戦争という特異的、極限的な状況下における、日本人、しいてはヒトの良心や理性の動き方をドラマチックに描いちょっておもしろかった。でも、多分みんな戦時中なら理性とか保てないって絶対。だから当時の医者をせ...
戦時中、俺が在籍している大学であった『米軍捕虜生体解剖実験』について描いた作品。 戦争という特異的、極限的な状況下における、日本人、しいてはヒトの良心や理性の動き方をドラマチックに描いちょっておもしろかった。でも、多分みんな戦時中なら理性とか保てないって絶対。だから当時の医者をせめちゃいけんと思うよ。
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考えさせられる本。 何年かしてまた読み返したらどんな感想を持つかと思うととてもじゃないけど捨てられない。
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終戦間近、米軍捕虜の生体解剖事件に加わった者達を綴る小説。高校1年生のときに読んだが、当時はただ「怖いな」くらいの感想だった。約10年経った今読み返すと、大学内の権力闘争や権力者の罪悪感の希薄さが以前よりも理解できる。ただ僕には大きな疑問が残った。人間の善悪の境界は結局どこにある...
終戦間近、米軍捕虜の生体解剖事件に加わった者達を綴る小説。高校1年生のときに読んだが、当時はただ「怖いな」くらいの感想だった。約10年経った今読み返すと、大学内の権力闘争や権力者の罪悪感の希薄さが以前よりも理解できる。ただ僕には大きな疑問が残った。人間の善悪の境界は結局どこにあるのか?作中、戸田医師が言うように、善悪は意識の持ち様で変わるものなのか。確かに、医療のためとはいえ生体解剖を行う事は、殺人という犯罪に他ならない。ならば、安楽死や臓器移植はどう解釈すればいいのか。医学に限らず、似たような問題は身近に山積していると思う。時代や環境、認識によって善悪の基準がコロコロ変わるのならば、何をたよりにすればいいのか。個人の良識にたよるしかないのか。これを考え始めると、人間の生み出した「法律」というものにも疑問が出てくる。とにかく難しい問いかけばかりを盛り込んだ小説。繰り返しやってくる暗い海の波の描写が、解答のない問題ばかりを運んでくるようで、とても憎たらしく感じた。
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主題も題材もタイトルの意味も恐ろしい作品だと思いました 何が恐ろしいかといえば神の存在しない日本人の意識と戦争によって麻痺した医師たちの心と行為なわけですよ だからといって西洋人が正しいとか、日本人が悪いというわけではないのですよね 中盤のふたりの手記には顔を顰めつつも、納得でき...
主題も題材もタイトルの意味も恐ろしい作品だと思いました 何が恐ろしいかといえば神の存在しない日本人の意識と戦争によって麻痺した医師たちの心と行為なわけですよ だからといって西洋人が正しいとか、日本人が悪いというわけではないのですよね 中盤のふたりの手記には顔を顰めつつも、納得できる部分はありましたので 日本人だなぁ…
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戦時下の日本の病院で何が起こったか? 日々、空襲で、病気でバタバタと人が死んでいく…異常な環境で生きていくために人は感覚を麻痺させていくしかなかったのでしょう。 平和な時代に生まれ育った私に彼らを裁く視覚があるのでしょうか?
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日本人とは、戦争という異常時とは、 といろんなカットで何度も読み返してしまう。あまりに衝撃的な事件と静かな町と海とのコントラストが恐ろしくなってくる作品。
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とてもリアルでした。人体実験にされる外国の方・・それを忘れられないお医者様。 読んでいて、見たことのない手術などのシーンがその場に浮かびました
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