孤高の人(下) の商品レビュー
加藤文太郎は実在の人物。かつては貴族のものだった登山に、庶民のサラリーマンが単独行で挑んだ。難関とされる冬のアルプス縦走を好み次々と踏破してゆく。夢だったヒマラヤ登頂を成功させていれば登山家として有名になっていたのかもしれない。 小説のなかでは妻子を持ち幸せの絶頂のなか、孤独な登...
加藤文太郎は実在の人物。かつては貴族のものだった登山に、庶民のサラリーマンが単独行で挑んだ。難関とされる冬のアルプス縦走を好み次々と踏破してゆく。夢だったヒマラヤ登頂を成功させていれば登山家として有名になっていたのかもしれない。 小説のなかでは妻子を持ち幸せの絶頂のなか、孤独な登山仲間の巻き添えにあい遭難死してるので無念としかいいようがない…。ヤマケイのノンフィクションも読んでみよう。
Posted by
狂ったように冬山にのめり込んでいた加藤が、紆余曲折のあった結婚を機に、スッカリ人柄が変わったかのような生活を送る。ここの部分は純愛小説とも読める。 また、社会人としての会社での生活はサラリーマン小説としての側面もある。単なる山岳小説ではなく色んな顔のある小説だが、かえって私には...
狂ったように冬山にのめり込んでいた加藤が、紆余曲折のあった結婚を機に、スッカリ人柄が変わったかのような生活を送る。ここの部分は純愛小説とも読める。 また、社会人としての会社での生活はサラリーマン小説としての側面もある。単なる山岳小説ではなく色んな顔のある小説だが、かえって私にはそれが少々煩わしくも感じるところもある。ダイレクトに山岳小説に仕上げても良かったのではないか。しかしそれが物語に深みを与え、人間としての加藤の造形に深みを与えているのも確かだが。 新田の作品には、山での気象の激変がとんでもない悲劇を招く作品がいくつかあるが、その部分の描写は、ある意味気象のプロとしての作者の顔が十分に活かされていて迫力がある。 山に入るにあたっての心理的葛藤。山の中での宮村との確執。そして遭難に向かって突き進んでいく二人の行動。結末が分かっているだけに、この下巻は読み進むのが少々辛い。
Posted by
いかなる場合でも脱出路を計算に入れた周到な計画のもとに単独行動する文太郎が初めてパーティを組んだのは昭和11年の厳冬であった。家庭をもって山行きをやめようとしていた彼は友人の願いを入れるが、無謀な計画にひきずられ、吹雪の北鎌尾根に消息を断つ。日本登山界に不滅の足跡を遺した文太郎の...
いかなる場合でも脱出路を計算に入れた周到な計画のもとに単独行動する文太郎が初めてパーティを組んだのは昭和11年の厳冬であった。家庭をもって山行きをやめようとしていた彼は友人の願いを入れるが、無謀な計画にひきずられ、吹雪の北鎌尾根に消息を断つ。日本登山界に不滅の足跡を遺した文太郎の生涯を通じ“なぜ山に登るのか”の問いに鋭く迫った山岳小説屈指の力作である。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2022年8月16日読了。 下巻の感想。 加藤氏は花子さんと出会って明るい性格になったのに、宮村に付き合ったばかりに、悪い方へと向かった。 宮村との山行の話は、宮村の物語のようだった。 上下巻を読み終えて。 読む前は登山上級者の記録が大部分を占めてているのでは、と読むのを躊躇していた。いざ読み始めると、それは陰鬱な人間関係の話が続き、読むのが少しの間ストップした。これはあくまでも小説なので、どこまで本当なのかはわからないけど。ただ加藤氏の神戸での活動範囲になじみがあり、高取山にも何度か登っていることもあり、再度読み始めると、また物語に入れる、と言う感じだった。 次は『単独行』を読んで、自分なりに加藤文太郎について探ってみたい。
Posted by
結末を知りながら、文太郎が幸せになっていく姿を見るのが悲しかった。 必ずまた読み返したい一書になった。
Posted by
間違いなく面白いのだが、登場人物に全く共感できず読むのが嫌になるような後半だった。本から学ぶ教訓は多くあると思っているが、この遭難については疑問にしか思えなかった。
Posted by
男の友情を狂わすのは女。壊れた宮村に対しても最後まで優しかった加藤。世間から見ればおかしな人、言い方を変えれば孤高であった。
Posted by
登山を一般人のものにした加藤文太郎の最期。実話から脚色された終わり方なので、最後は物語として楽しみました。
Posted by
変わり者?としての彼をうまく丁寧に描いていた。 ラストも実話が元だからこその迫力がある。無理のない登場人物たちが彼を通じて伝わってくる。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
加藤文太郎は感受性が高すぎて、 自他に壁を作っているようだった。 孤高とされるも、その内面は人間臭い。 不器用ゆえに、ひとりになってしまう。 理性は下山を勧める。 しかし、頂に魅了され、登る。 合理性を超えた魅力を、山に感じてしまった男の物語。
Posted by