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奉教人の死 の商品レビュー

3.8

31件のお客様レビュー

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2020/08/07

「蜜柑・尾生の信」で芥川の魅力がわからなかったので、別の短編集「奉教人の死(11編収録)」に挑戦。 芥川の帝国大学での専攻は英文なので、欧米の文学を理解するには聖書の知識は不可欠という流れでキリスト教を題材にした一連の小説を書いたのでしょう。ここでは、解説の小川国夫氏が指摘してい...

「蜜柑・尾生の信」で芥川の魅力がわからなかったので、別の短編集「奉教人の死(11編収録)」に挑戦。 芥川の帝国大学での専攻は英文なので、欧米の文学を理解するには聖書の知識は不可欠という流れでキリスト教を題材にした一連の小説を書いたのでしょう。ここでは、解説の小川国夫氏が指摘していますが、「古文書の創作」がポイントのようで、わざわざ古文書の出典まで説明しながら、その元となる文献自体が芥川の創作というから手が込んでいます。つまり、ノンフィクションを装いながらフィクションを書くことで、より内容に真実味を帯びさせる工夫ですが、残念ながら一般読者には宝の持ち腐れ的な隠し味で終わっています。そして、難解さは「蜜柑」以上です。 立て続けに芥川作品を読んで、面白い発見をしました。 「蜜柑・尾生の信」岩波文庫では竜之介ですが、新潮文庫の本書では龍之介が採用されています。有名作家なのだから、漢字くらいは統一しておいてほしいものです。

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2019/07/17

芥川は殉教者の心情や、東西の異質な文化の接触と融和という課題に興味を覚え、近代日本文学に“切支丹物という新分野を開拓した。文禄・慶長ごろの口語文体にならったスタイルで、若く美しく信仰篤い切支丹奉教人の、哀しいが感動的な終焉を格調高く綴った名作「奉教人の死」、信仰と封建的な道徳心と...

芥川は殉教者の心情や、東西の異質な文化の接触と融和という課題に興味を覚え、近代日本文学に“切支丹物という新分野を開拓した。文禄・慶長ごろの口語文体にならったスタイルで、若く美しく信仰篤い切支丹奉教人の、哀しいが感動的な終焉を格調高く綴った名作「奉教人の死」、信仰と封建的な道徳心との相剋に悩み、身近な人情に従って生きた女を描く「おぎん」など、11編を収録。"

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2019/10/16

煙草と悪魔◆さまよえる猶太人◆奉教人の死◆るしへる◆きりしとほろ上人伝◆黒衣聖母◆神神の微笑◆報恩記◆おぎん◆おしの◆糸女覚え書 著者:芥川龍之介()1892-1927、中央区、小説家) 解説:小川国夫(1927-2008、藤枝市、小説家) 注解:神田由美子(1951-)

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2017/10/01

江戸時代のキリスト教徒にまつわる寓話が収められた作品集。かなり、伝承からの引用が多く、どこまでが芥川の筆によるオリジナルの文章なのかが分かり辛い。個人的には可もなく不可もない童話集といった趣を感じた。

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2017/07/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

奉教人の死は、長崎の教会「さんた・るちあ」に、「ろおれんぞ」という美少年がいた。彼は自身の素性を周囲に問われても、故郷は「はらいそ」(天国)、父は「でうす」(天主)と笑って答えるのみだったが、その信仰の固さは教会の長老も舌を巻くほどだった。ところが、彼をめぐって不義密通の噂が立つ。教会に通う傘屋の娘が、ろおれんぞに想いを寄せて色目を使うのみならず、彼と恋文を交わしているというのである。長老衆は苦々しげにろおれんぞを問い詰めるが、彼は涙声で身の潔白を訴えるばかりだった。 ほどなく、傘屋の娘が妊娠し、父親や長老の前で「腹の子の父親は『ろおれんぞ様』」と宣言する。皆から愛されていたろおれんぞも、姦淫の罪によって破門を宣告され、教会を追い出される。身寄りの無い彼は乞食同然の姿で長崎の町を彷徨うことになったが、その境遇にあっても、他の信者から疎んじられようとも、教会へ足を運んで祈るのだった。一方、傘屋の娘は月満ちて、玉のような女の子を産む。ろおれんぞを憎む傘屋の翁も、さすがに初孫には顔をほころばせるのだった。 そんなある日、長崎の町が大火に見舞われる。傘屋の翁と娘は炎の中を辛くも逃げ出すが、一息ついたところで赤子を燃え上がる家に置きざりにしたことに気がつき、半狂乱となる。そこにろおれんぞが現れて……。 煙草と悪魔は、天文18年(1549年)、フランシスコ・ザビエルはキリスト教を広めるべく日本に渡来した。一方、彼に仕えるイルマン(伊留満、宣教師)に化けた悪魔も日本にやってきた。マルコ・ポーロの東方見聞録にあるジパングの記述とは程遠い日本の景色を見物して歩きながら、日本人をどうやって誘惑してやろうかと一人ほくそ笑む悪魔だったが、そもそもキリシタンが居ないことには誰も誘惑しようがない。そこで悪魔は当座の暇つぶしとして、畑と農具を借り、園芸を始めることにした。ザビエルも、彼が西洋の薬用植物か何かを日本で栽培するのだと思って、「それはとてもいいことですね」と賛同した。 おりしも春たけなわ。遠くの寺の梵鐘の音が聞こえてくる。それがまたのどかで、西洋の教会の甲高い鐘の音に慣れていた悪魔にとって、こののんびりとした梵鐘の音を聞きながら霞でぼんやりとした日の光にあたっていると、不思議と心が緩んできてしまい、悪をする気になれず、かといって善をなす気にもなれない。そんなもやもやとした眠気を払うかのように、大嫌いな労働であるはずの畑仕事に、より一層精を出す悪魔だった。 耕し終えた畑に、悪魔は耳の中に隠し持っていた何かの種をまく。やがて芽吹いて成長し、夏の終わりに至るや、漏斗のような形をした紫色の花が開いた。しかし、その植物の名を知るものは、誰も居ない。ザビエルが尋ねても、悪魔はただ笑うばかりだった。 さて、ザビエルが伝道のために南蛮寺を留守にしたある日のこと。畑の手入れをする悪魔に、一人の牛商人が声を掛けてきた。その花の名前を教えて欲しいという。教えられない、と断る悪魔だったが、牛商人は続ける。 「一つお教え下さいませんか。手前も、近頃はフランシス様の御教化を受けて、この通り御宗旨に帰依しておりますのですから」 彼の胸には、小さな十字架が光っていた。ようやく「誘惑できる日本人」を発見した悪魔はほくそ笑みながら、言葉巧みに日本人を誘い、ついに「御主の名に誓って」契約を結ばせた。 「この植物の名をあなたが3日のうちに答えたら、この畑の植物をすべてあなたにあげましょう。当たらなかったら、あなたの体と魂をもらいましょう」 イルマンの正体が悪魔だと知った牛商人は、激しく後悔した。ザビエルは旅行中で助けを頼むわけにもいかない。このままでは、いずれ自分は地獄の炎に焼かれてしまうだろう。 3日もの間悩みぬいた彼は、ついにある行動に出る。 悪魔が眠っている深夜、飼っている牛を悪魔の畑に入り込ませ、暴れさせたのだ。 熟睡しているところを起こされ、さらに自分の畑を荒らされた悪魔は、怒っていった。 「こんちくしょう、どうして、俺のたばこ畑を荒らすのだ」 牛商人にはこの声が、神の声のように聞こえた。 その後の展開は予想通り、すなわち牛商人はその植物の名を『煙草』と言い当て、悪魔の畑をすべて自分のものにした。 一見すると商人が勝ったような展開だが、煙草はあまねく全国に広がり、悪魔が勝ったようにも見える、という筆者の感想で結ばれている。 等々多数の短編集です。

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2017/07/01

長崎旅行を前に、長崎切支丹を描いた「奉教人の死」と「おぎん」の短編を読むために手に取りました。芥川の切支丹物を集めた短編集です。芥川がキリスト教に対して思う本音が垣間見えて、どの作品も面白く読みました。文体が古い物は難解ですが、諦めずに読んで良かったです。表題の面白さは格別でした...

長崎旅行を前に、長崎切支丹を描いた「奉教人の死」と「おぎん」の短編を読むために手に取りました。芥川の切支丹物を集めた短編集です。芥川がキリスト教に対して思う本音が垣間見えて、どの作品も面白く読みました。文体が古い物は難解ですが、諦めずに読んで良かったです。表題の面白さは格別でしたが、脇の教徒たちの冷酷さ愚かさに「宗教って何だろう」とその意味を熟考したくなります。讃えられることの多い細川ガラシャを、侍女の立場から激しく罵倒し皮肉っている「糸女覚え書」は笑ってしまいました。面白かった。

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2013/08/11

キリスト教ものの短編集。それぞれ面白かったが、マンネリと称されたのにも納得 収録作品:『煙草と悪魔』『さまよえる猶太人』『奉教人の死』『るしへる』『きりしとほろ上人伝』『黒衣聖母』『神神の微笑』『報恩記』『おぎん』『おしの』『糸女覚え書』

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2012/12/14

日本に来た全ての教えは作り変えられてしまう。 キリストを軟弱と非難する武家の女性。 細川ガラシャを皮肉る。

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2012/05/08

芥川龍之介の、キリシタンの話をまとめた本。基本的には信心深い方が出てくるのですが、それ故の大きな葛藤や苦難、献身、棄教など、とてもスケールの大きな話が詰まっています。悪魔なども出てきてファンタジックな所も。実際の資料半分創作半分などを、わざと古語体にして実話の様にしたり、資料を混...

芥川龍之介の、キリシタンの話をまとめた本。基本的には信心深い方が出てくるのですが、それ故の大きな葛藤や苦難、献身、棄教など、とてもスケールの大きな話が詰まっています。悪魔なども出てきてファンタジックな所も。実際の資料半分創作半分などを、わざと古語体にして実話の様にしたり、資料を混ぜ込んできたり、構成も凄く巧みだなぁと感心するばかり。物語調の物も多いので、日本、正義、誠実さ、など、幅広い事に関する寓話もとても深みがあった

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2011/12/03

(1999.08.27読了)(1998.12.01購入) (あ-1-4) 収録作品 ・「煙草と悪魔」 ・「さまよえる猶太人」 ・「奉教人の死」 ・「るしへる」 ・「きりしとほろ上人伝」 ・「黒衣聖母」 ・「神神の微笑」 ・「報恩記」 ・「おぎん」 ・「おしの」 ・「糸女覚え書」 ...

(1999.08.27読了)(1998.12.01購入) (あ-1-4) 収録作品 ・「煙草と悪魔」 ・「さまよえる猶太人」 ・「奉教人の死」 ・「るしへる」 ・「きりしとほろ上人伝」 ・「黒衣聖母」 ・「神神の微笑」 ・「報恩記」 ・「おぎん」 ・「おしの」 ・「糸女覚え書」 「南蛮物」もしくは「切支丹物」といわれる作品。(160頁)

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